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戦神の娘  作者: 高宮 まどか
第二章
32/66

32 二人の関係

「あの、アデル。ずっと聞けない私もいけませんが、この跡…。全然消えません。これ…。どうやってつけたの?」

ルナティスが夜着の胸の谷間を見ながら、セルトの駒をアデルの陣地の思わぬところに置きながら上目遣いで聞く。アデルはその駒のいく末を睨みながら、「ルナさん。こんな一手を指しながらそんなこと聞かないでくれないかな…。」と呟いた。二人は変わらず寝台でセルトをしている。

「それに、ここ最近、こうやってセルトをしているうちにいつも眠ってしまって聞けなかったから。」

ルナティスはじっとアデルを見つめた。アデルはにっこり笑って言った。

「ルナさんも俺も昼間たくさん仕事をこなしているんだから、しょうがないんじゃないかな?疲れて寝ちゃうのも。」

アデルとルナティスは王都に1ヶ月は滞在しないといけないらしく、夫婦一緒にこなす公務がたてこんでいたのだ。

アデルはルナティスの胸元を指差して続ける

「その印はね。初夜の印の捏造です。ルナさんが寝たときにしょうがなく俺がつけました。そこから先はなにもしてません。」

ルナティスは自分の胸元を見て、無言になる。アデルは、その様子にちょっとむっとして、自分の騎手の駒をルナティスの陣地に投下する。ルナティスはそれを見るとニヤリと笑って、待っていたとばかりに騎手の駒の空いた隙間に弓平隊を置いた。

「あっ…。」

アデルが声にならない声をあげた。

「王手です。アデル。」

ルナティスはニコニコしながら言う。アデルが負けたので、ルナティスにお茶をいれる。最近の2人が就寝前にやっていることだ。ルナティスは紅茶を受けとると、カップの中を見る。

「私に何か薬を飲ませてます?」

「同じお茶のんでて、ルナさんだけ眠くなるの変じゃない?」

アデルはそう切りかえすと、いつものようにルナティスのカップにミルクを足す。

「それに、ルナを先に寝せてわたしになんの得があるの?」

アデルは笑って自分の紅茶をのむ。アデルが紅茶に口をつけたのをみてからルナティスも紅茶に口をつける。

アデルはセルトをルナティスの望みどおり兵糧駒を用意させた。そして、実際にある国境を模したものにしてくれた。今宵はクラレスの北東に国境を接するリズ国とクラレス国の戦いを模したもので、アデルがリズ国を担当した。

嫁いでから毎夜この繰り返しだ。アデルはルナティスを抱くそぶりはなく、毎夜セルトをする。そしていつもルナティスは耐え難い睡魔に襲われてしまう。

もう一戦やろうかとセルトを持とうとすると、また耐え難い睡魔がルナティスを襲う。ルナティスはアデルにもたれ掛かりながら、アデルの両手を掴んだ。


「どうしたの?眠いの?」

ルナティスはアデルの美しい顔を見ながら、また意識を手放した。

寝息をたてるルナティスに上掛けをかけながら、アデルはため息をついた。

「案外勘がいいな。ちょっとやり方考えないとな」

アデルは、ミルクが入らない紅茶を飲み干すと、絹のガウンを脱ぎ捨てて、夜着の上に濃紺の麻のガウンを着る。

そして、ルナティスの頬を触ると、呟く。

「ルナがもっと話してくれないとこまるな。」


そして、寝室から、続き間になっている夫婦の居室に移る。ルナティスに婚礼後も寝てもらっているのには理由がある。1つはルナティスが寝た後にルナティスにはまだ開示できない公務を行っているからと、ルナティスのことを調べつづけているからだ。ルナティスを調べることはつまりロゼリアを調べることとなり、ルナティスと一緒にいる昼間にはできないことだった。


居室では、サラとセルジオがソファーにかけていた。

「待たせたね。」

セルジオとサラにアデルは声をかけた。

「毎夜こんなまわりくどいことをされてるんですか。殿下は。」

サラが冷たい声をだしつつも、アデルに紅茶をいれる。アデルは苦笑しながら紅茶を受けとり、サラに尋ねる。

「サラはどっちがよかったの?」

「どっちと言いますと?」

サラはセルジオには茶をつがず、自分にだけ追加の茶を注ぎながら聞き返した。

「自分が俺に言ったのではないか。ルッティ様に触れていい者は1人だけで、触れたら殺さなくてはならないと…。」

サラは目を反らすと、紅茶をすすりながら尋ねた。

「夫婦が褥を共にしないのを私のせいにされても困ります。」

「簡単に共にできないとわかっていたのではないか?サラは。」

アデルはあくびをしながらサラに言う。セルジオが思わずサラを鋭い目で見て、思わず口にする。

「それはどういう意味ですか?」

サラはセルジオを無視した。代わりにアデルが答える。

「いろいろ儀礼に厳しいサラが褥を共にしてない異例の事態に対して、ケチをつけない。ルナティスや私を急かしもしない。要するに、今の状態が一番いいんだろ?サラ。」

サラはため息をついた。アデルは紅茶をのみながら、続けざまに尋ねる。

「状態がいいのは、サラか?それともロゼリアか?」

「今日はそのことについてのご下問ですか。岳父様にいつものように、手紙でお伺いをたてればよろしいじゃないですか。」

サラは少し悲しげに下を向く。

「聞けるのか?聞くのが正解なわけないだろ。ルナティスが戦神様にそれとも全て報告していたとでも言うのか?」

サラはちらりとセルジオを見た。セルジオがそれを見ておずおずと言う。

「私が邪魔なら下がりますが。」

「いや、それには及ばない。クラレスの情勢が変わってきたから、俺とサラ以外にもルナティスへの理解がある人が必要かな…と。特に兄のこともあるからおまえにはいてもらわないと困る。サラ、セルジオは口が堅いから、その…。話してもらえないだろうか。」

サラは悲しげな瞳をアデルに向け、ため息をまたつく。

「おまえがロゼリアにきたのは、ルナティスを守るためだろう?戦神に言われて。いざとなったら…。」

サラはアデルの問いに被せる。

「あなたが、見込み違いな人でルナティス様が不幸な場合は脱出させろと言われていましたよ。見込み違いかと思っていたのに、違うので、困惑しました。案外忍耐力があると言うか…。」

セルジオが思わずその言い草に、つぶやく。

「あんなに甲斐甲斐しく妃殿下に尽くしているのにひどい言われようだな…。」

サラはセルジオを見つめ首を振る。

「これくらいですんで、まだマシです。戦神様はこれでも道具…。いえアデル殿下のことは買ってます。レイラ殿下がアデリード殿下のことを調べつくそうとしてもモヤをかけて隠しつくしました。あのレイラ殿下相手に、戦神様は道具屋とアデリード殿下を関連づける情報のツテ全てを隠しつくした。骨が折れますね。私たちにも隠していたんだから。」

セルジオは、横を向いてサラに問う。

「ロゼリアの王太子殿下がなぜアデル様と道具屋を執拗に調べることになったのですか?」

ロゼリアの問いも最もだ。アデルが道具屋をしていることは、国王も知りえない。信頼された側近の一部しか知らないことだ。そこにも複雑な理由がある。


サラはアデルを見た。

「あの日、どうして旗をあげさせましたか?」

アデルは額に手を置く。麓から見えたのか?王太子は…。

「ベルクートのクレマチス隊にクラレス軍が来たと誤認させるために。俺もルナも絶対絶命だったからな。」

サラは紅茶に砂糖をいれてくるくる回す。

「並みの方ならそうでしょう。あの日から、ルナティス様は変わられてしまった。それもレイラ殿下を訝しげた。姫は吹っ切れたとでも言いますか…。それまでは戦神とレイラ殿下しか知らない姫だったのに。あの後、ルナティス姫はレイラ殿下に平手打ちされても…。」


アデルがその言葉に眉をしかめ、被せて問う。

「平手打ち?」

サラはその反応に嘲るように言う。

「こんなことぐらいで驚いて、憤っているのでしたら、これから先は話せません。反応次第では逆にルナティス様を傷つけます。ルナティス様は…。」

サラは、何かを堪えるように息を吸い込むと、その息を吐き出すように言った。アデルは目を細め、サラを見つめると無言で頷く。サラは独り言のように呟く。

「ルナティス様があんな嬉しそうに笑うのはひさびさに見ました。あなたとパンを分かち合ったり、苺を取ってもらって本当に嬉しかったのでしょうね。そんなことしたことないですから。」

サラは遠くを見るようにして語る。

「ルナティス姫は、戦神から、そこに存在するだけでいいと言われながらも、何かの成果を必ずださなければ、存在を許されなかった姫です。そして、レイラ殿下もまた成果を求められた王子です。レイラ殿下が唯一愛し心を許した存在はルナティス様で、同時にルナティス様は、レイラ殿下の努力や成果をふいにしてしまう、レイラ殿下の脅威でもありました。」

セルジオは、話が見えないという顔をする。サラはため息をつくと、抽象的ですねと前置きをして語り始めた。

「ルナティス様とレイラ様の話です。」



サラはリズベルク王国の中にあるシズナ領を治める侯爵の娘であった。幼い頃から活発で、女子近衛隊に入っていたが故国が侵攻の憂き目とあい、捕虜として家族と城内に軟禁されていた。戦神は意外にも王家を追放するも、その部下に対しては温情に満ちた処理をする男だった。サラの生家に、18歳の長女のサラを自身の孫娘のルナティス姫に仕えるように命じ、家名を存続を許した。

ロゼリアに向かう別れ際、妹がサラに泣いてすがりついてきたことが昨日のことのように思い出す。こんなことで所領を安堵されるなど、安いものよと伝えても妹は泣くのをやめなかった。サラは、ロゼリアの城の門をくぐる時、仕える姫を妹のかわりに大切にお仕えしようと心に決めた。


戦神の前に連れ出されたサラは、その眼光の鋭さに手が震えた。

「そなたがサラ・ルイントスか。リズベルクの女子近衛隊で一番優秀と聞いている。私がおまえに頼むのは2つ。今日よりルナティスの友人として軍にはいり、ルナティスを守りきれ。そして、レイラ王太子の諜報部にお前を在籍させるので、レイラはお前にルナティスと私を見張るように言うだろう。その動向を私に報告するように。」


サラは、その任務にほっとしていた。サラは軍人で女官ができないこともないが、深窓の姫君の相手が勤まるのか不安でもあった。近衛隊に参加していたサラにとってレイラへの逆スパイや姫君の軍への付き添いのほうが性にあう。


でも、なぜ13歳の姫が軍に入る必要があるのだろうか。そんなことを考えながら、ルナティスの部屋にとおされた。

部屋からクスクスと男の笑い声が聞こえる。

陽当たりのよい部屋の中央のソファーに一組の男女がいた。銀髪の長い髪を左に寄せてゆるく編み込んだ女性のように美しい紫の瞳の王子が、琥珀色の髪の姫を膝枕していた。王子は愛おしそうに姫の目にかかった髪をすくう。姫は膝からゆっくり頭を起こし、ソファーに座った。座りなおして目をこする。そしてぼんやりとサラを見つめた。

サラは思わず、顔が熱くなった。

なにこの子…。本当に妹と同じ年なのかしら。

13歳の少女なのに、サラを見つめる瞳は、引き込まれそうなくらい透き通っていて、唇は赤く扇情的だ。

白い麻のワンピースは彼女の白い腕を存分にみせている。きっとルナティスの陶器のように足を隠すようなデザインだったであろうが、ルナティスがねっころがったせいか、太ももの一部が見えてしまっている。ルナティスはごしごしと目をこすった。

「ルナティス、おじいさまが探していたお友達だよ。」

サラより若い少年と青年の間の…、レイラ王子はルナティスの髪をすくいとりながら、ルナティスの耳元で囁いた。


恋人との物憂い昼寝のあとのような不思議な色気と美しさにサラは声がでなかった。

ルナティスは立ち上がり、衣服を調えるとサラに向かって微笑んだ。

途端に艶かしさは消えて、清純さが宿る。

サラは我に返り、うわずった声をだした。

「初めまして。サラ・ルイントスです。今日からルナティス様の軍の付き添いをさせていただきます。」

話し相手の役目は口にだせなかった。こんな綺麗な姫の話し相手ですなんて、恥ずかしくて言えない。

「よろしくサラ。ルナティスです。」

ルナティスはサラの手を握ると花が綻ぶように笑った。サラはつられて笑うことができなかった。

この姫を、戦場につれていくのは一瞬馬鹿げていると思った。

次の瞬間、姫の手をみた。姫の手には弓をひくもの特有の傷がある。


ルナティスは面白いものをみるような瞳でサラに近づこうとすると、後ろからレイラがルナティスの手をひっぱりもう一度、ルナティスをソファーに無理やり座らせる。

レイラがサラに、祖父と、おなじ瞳の鋭さを感じ息をのむ。レイラは笑うとサラに言う。

「サラ…。よろしくね。と言っても、ルナティスは昼間は家庭教師がきたり、寝ていることが多いから君の手はあまり借りないだろうけど。」

レイラの発言は正しかった。

諜報部の仕事を終えた午後、ルナティスのところにいくと、レイラがいることが多かった。

部屋はの床には本が無数に散らばり、机の上にはセルトと、砂漠の兵法という本が、無造作に置かれていた。二人でセルトをしながら、軍略を考えている。今日は砂漠の国の侵攻を話し合っている。サラは無言でいつもそれを見つめるだけだが、ルナティスはそれでも嬉しいのかニコニコしている。そのうち、ルナティスがうつらうつらしだしたので、レイラがルナティスを抱え寝台に運ぶ。すると、当たり前のようにレイラはルナティスに唇を重ねた。

サラは思わず、はっと息をつく。レイラはサラを振り向くと妖艶に笑った。

「おじいさまに言いつける?サラ?」

無邪気なレイラにサラは首を振って、意を決して尋ねる。

「いいえ…。お二人は、恋人同士なんですか?」

レイラは驚いた顔をして答える。

「いいや。恋人なんかじゃないよ。」

ルナティスを寝台に寝かせ、サラとレイラは寝室をでる。寝室の扉を閉めながら、レイラは言った。

「ルナティスの微妙な立場で私の恋人なんてとてもなれないよ。わかるだろう?サラ。」


その意味はその後すぐに、わかることになる。ルナティスは戦神の宮の隣の離宮に閉じ籠り、王宮にほとんど姿を見せない。また、ルナティスの離宮を訪れる人はいない。サラがルナティスを尋ねる以外にルナティスを尋ねる人はレイラと戦神だけだ。3人とも毎日来れるわけではない。

ルナティスは離宮でずっと一人だった。本当に。サラは諜報部でルナティスの資料を読み、そして王宮の口さがない侍女たちから話を聞く。そして、ルナティスの境遇を目の当たりにするといくぶん胸が傷んだ。

戦神がロゼリアに連れて帰った当初は、ルナティスは戦神としかまともに口をきいてくれる人がおらず、王宮にいた全てがルナティスを避けつづけたらしい。そんなルナティスに隠れてつけられていたあだ名は林檎の精というものと誘惑姫だ。前者は王子達が、後者はレイラの母親がつけたものだと言う。


誘惑姫…。ひどいあだ名だな。


そもそもレイラ王子が勝手にルナティスの宮に来ているのに。サラはルナティスとセルトをしながらルナティスを見つめた。ルナティスは、サラに笑いかけながら、恐ろしいことを言う

「サラは、正攻法が好きですね。」

ルナティスはそう言うと、王手と言ってセルトの駒を置いた。サラのほうが年上なのに、ルナティスより秀でているものはひとつもない。ルナティスはサラがいると嬉しいのか毎回、お菓子を食べようと誘う。サラは姫と同じものを私が供されるわけにはいかないのですと断るとさみしそうに笑った。


サラが諜報部の仕事でレイラの執務室にいた際に、レイラの母キサ妃が尋ねてきた。レイラは執務室での仕事を中断しなかったため、助手のサラも同席することになってしまった。

「今日も誘惑姫のところにいくのですか?」

キサ妃はソファーに勝手に座ると、忌々しげに言った。

「いきますよ。今日はおじいさまとルナティスと三人で夜食事をしますから。」

キサ妃ははぁとため息をついた。

「陛下がいるなら仕方ありませんが、王太子の地位を脅かす者などそばによるのではありません。あなたが誘惑姫に近づくから、ミラレスもアリオンもシザルも誘惑姫との接触したくて、私に許可を求める始末です。これもレイラ王太子殿下、あなたがルナティス姫に近寄るからですよ。」

レイラは一度ペンを走らせる手を止めて腕を組んだ。

「母上、わかってないですね。私がミラレス達と同じようにルナティスを林檎の精とよんで、恋情を抱くと思ってるんですか?」

レイラは冷たい笑みで笑う。キサ妃も驚いたように扇を口元はによせる。

「母上、私は王太子になるべく努力してきたつもりですし、きちんと成果をだしてきました。だから立太子になれたのです。」

キサ妃はそれは頷き、その努力を思い出したのか目ふせる。

「そうです。それはこの母がよく知っています。」

「母上が苛立つのは、戦神様が、ルナティスにしている教育がまるで以前の私にさせていたものと同じだからですよね。しかも、自ら教えている。王太子となるような教育を…。」

侍女が茶の準備をし始める。キサ妃はそれを聞くと頷きレイラを諭した。

「戦神様にかかれば、王位継承権を女子に認めると言いかねません。あなたの父上が病がちという理由であなたに異例の譲位をさせたのと同じように。わざわざ、戦神に直接世継ぎを吟味させる環境にあなたが身を置く必要はないんです。」

妃は扇を口元にあて忌々しそうに言うとレイラは母のその発言に大笑いした。

「なんだ、母上もやはり認めておられるのですね。ルナティスの王位継承するかもしれない可能性を。」

そう言って、席をたはち、キサ妃に近寄ると顔を近づけて囁く。

「ルナティスは確かに優秀です。語学も堪能で、よく勉強し、狩りに連れていけば、馬上からなんなく弓を獲物にあてる。なにより戦神の思想にもついていき、戦神と対等に話もできます。そして、高貴なアウル神皇国の大神官と戦神最愛の娘の子供だ。」

レイラがそこまで言うと、キサ妃は聞きながら、紅茶をテーブルにセットしてされたのをを見届け、侍女を去らせた。そして自らこぽこぽと紅茶をつぐ。つがれる音が部屋に響く。

「些か、私は分が悪いですね。母上。」

「よくおわかりね。」

キサ妃はレイラを肯定すると、レイラは母に注がれた紅茶のカップを無理やり飲み干すと冷たく言いはなった。

「でも、少々わたしを見くびりすぎですよ。」

サラは書類を書きながら、耳をそばだてた。

ルナティスの片面の、立場を理解できた。ただ、レイラの言う、恋情がないという言葉は信じられない思いだった。二人は若い恋人同士にしかみえなかったからだ。

その答えは、レイラの口から直接聞くことになった。レイラは紅茶のカップを下ろし、言う。

「ルナティスは、王位に継ぐには圧倒的に孤独で幼い。その孤独につけこんで、私以外信用しないよう懐柔しているんです。すごくうまくいっている。あれでは私を押し退けて王位を望むような姫にはなりえません。だから、邪魔をしないでください。」

サラはなぜか傷ついたようにその言葉を聞く。自分が言われたわけでもないのに。キサ妃はそれを聞くと扇を広げ仰ぐと満足したのか優雅に笑った。

「そうでしたか。さすがはレイラ殿下…。心配は無用ですね。」

「お分かりいただき嬉しいです。ルナティスは孤独のほうが都合がいいので、ミラレス達には変わらず、接触はお許しになりませんように…。」

レイラはそう言うと、自らの席に戻って腰かけた。キサ妃は満足したように頷いて、部屋を退出しようとするが、一度振替る。

「レイラ殿下。」

「はい。」

「ミイラ取りがミイラになりませんようにね。」

キサ妃は美しく微笑むと部屋を今度こそ退出していった。


レイラはため息をつくとサラを見て微笑んだ。サラは視線を合わさないでいると、レイラは伸びをしながら言った。

「うるさい女だね。騒ぐことしかいつもできなくて、嫌になるよ。」

レイラは独り言のように自分の母親の悪口を言った。そして、サラに声をかける。

「母親から戦神に許可を取ってもらわないとルナティスに会えない意気地無しで自分で何もできない弟たちに、ルナティスを会わせるわけないじゃないか。」

サラは珍しく苦言を続けるレイラをみる。レイラは誰にでも人当たりよく王宮でも人気者だ。

「あれは、きちんと戦神と交渉し、私が勝ち取ったものだ。全く身の程知らずな人達だよ。」

サラは、思わず思っていた疑念を口だす。

「レイラ殿下、あの、ルナティス様の恋人でないと前はおっしゃいましたが…。」

思わぬサラの反応に、レイラは仕上がった書類を渡しながらサラを見下ろし言った。

「恋人ではなくて、ルナティスは遅れてきた私の可愛い対抗馬なんだよ。対抗馬はまだ幼い、いまのうちに私の後ろをつくように教えて、私の愛馬に変えてしまわないとね。」

レイラはにっこり笑うと急に冷めた瞳でサラに告げる。

「とは言え、今後戦場に行ったらルナティスを隠し続けるのは無理だろうから…。サラ、いいか戦神と私以外の男がルナティスに触れようとしたら、誰であっても殺せ。いいな。」

サラは困惑した表情をレイラに向ける。レイラは笑って言う。

「あれに立場を脅かされながらも、こう思うんだから、とっくの昔にミイラになってしまったのかもしれないな…。」

レイラは窓の外を見て、ぽつりと呟いた。




ルナティスとサラはその後軍に入り、ルッティとして、レイラ王子と戦神の軍の連合軍の参謀本部に配属になった。そこは、大勢の敵を頭脳で屠るも、直接はあまり人を殺さない部署だ。ルナティスはドレスではなく、刺繍が美しい濃紺の軍服に身を包み、いつも地図と地形図とにらめっこしながら奇抜、非情とも言える策を考え、活躍していた。軍師見習いとして戦神に習いながら、着実に成果をあげているが、参謀本部はどこか浮わついた雰囲気がただよっていた。皆がつい、ルナティスに話しかけてしまう。その筆頭が青紫の瞳の第2王子のミラレス王子だ。ルナティスが休憩してると、隣の部署から飛んできてここぞとばかりにルナティスに話しかけた。ルナティスはレイラ以外の王子の顔を覚えていないから、ミラレス王子を親切な男の人だと思っているようではある。

サラは念のためレイラと戦神にミラレス王子のことを報告をした。



「報告したことを、私は後悔しているのです。」

サラは左目から涙をこぼして、アデルに囁いた。アデルは、

「なぜ?」と問う。

「結果、ルナティス様は初めてそこで人を殺しました。軍として、兵士としていつかは経験させなくては戦神が気を揉んでいるのをよそに、あっけなく。ただ、それはルナティス様に深い傷を残したことを、戦神も…、いえ男性は一生理解できないと私は思います。」

サラは左目から、涙をこぼし続けた。アデルはルナティスが震えだした時の恐怖を色濃く映した瞳を思い出す。


「ミラレス王子は紫水晶の瞳ではない青紫の瞳の優しい、凡庸な王子です。レイラ王子は、何度も忠告しましたが、ミラレス王子は業務そっちのけで、それはそれは甲斐甲斐しくルナティス様に優しくしました。戦神とレイラ様としか優しくされないルナティス様にとって、それはとても嬉しかったではないでしょうか。あなたが、パンをルナティス様に与えたときと同じように。」


あんなことも、親切になるのか…。


アデルは一方的な親切は居心地が悪いと言ったルナティスの顔をなぜだか思い出した。ルナティスの体のこわばりとともに。


「レイラ王子の静かな怒りは、ミラレス王子だけでなく、ルナティス様にも向けられました。ルナティス様がミラレス王子に笑いかけたことがもはや我慢ならなかった…と言ったところでしょうか。戦場のテントでレイラ王子とミラレス王子とワインを飲んで歓談した夜、ミラレス王子はレイラ王子に言いました。ー兄上はルナティスを勝手に独り占めにしていたわりに、大切にしていない。こんなところに連れてきてルナティスが可愛そうだーと。そして、ールナティス姫を愛している。ルナティスは自分に笑いかけてくれる。求婚して、王都に連れて帰るーと。レイラ王子は、ミラレス王子に笑いかけながら、薬をいれたワインを勧め、ルナティス姫のテントの場所を教えました。

その薬が、なんなのか…私も最初わからなかった。テントから辞するミラレス王子を見送る私に、レイラ王子は囁きました。

ルナティス様が自分で殺せず、純潔を奪われそうになったら、私が殺すように命じました。これが、ルナティス様の人を殺すいい機会だと。ミラレス王子は戦で命を落としたことにするから、安心するようにと。」


セルジオは話のあまりの展開に息をのんだ。アデルをちらりと見ると、アデルはまっすぐにサラを見ている。サラは自嘲してアデルに問う。


「私をお手うちになさいますか?殿下?」

アデルは首を振った。

「いや…。おまえにそれが止められたとは思えない。おまえはすぐにルナティスのもとに駆けつけたのではないか?」

ルナは首を振った。

「いえ…。私は、動転して事態の把握がうまくいきませんでした。弟王子を殺すことをルナティス様や私が担うことの不可思議さをレイラ様に問いました。仮にもレイラ様の弟です。すぐには何をレイラ王子がミラレス王子に仕向けたのか頭に入らなかった。私も。」

サラは唇を噛み締めた。

「それはそうですね…。」

セルジオがしみじみ同意する。アデルは言葉を失い、崖をイメージする。その崖の先の深淵を覗いてもみたのはいいとして、見たあとに戻れるのだろうか。

サラは続ける。

「レイラ様は、あれは紫水晶ではない。王位継承とは関係ない弟だから、気にしなくていい。そんな身分でありながら自分が何に手をだしているのか自覚していないが悪いと言われました。わたしはレイラ王子が恐ろしくなり、ルナティス様のテントへ走りました。私が駆けつけた時すでに、ルナティス様は…自らの身を自分で守った後でした。ルナティス様は服を破かれて、体中にうっ血した跡をつけられ、血まみれで…震えていらした。」

セルジオは思わず口に手を当てる。あたりは静まり返っていた。アデルは自らの唇を触った。ルナティスの白い肌に跡をつけた時の感覚が甦ると同時に、簡単に血まみれのルナティスを思い描くことができてしまった自分に嫌悪感をもつ。

「短刀で首を切られたミラレス王子はルナティス様の隣でうずくまるように息絶えてました。ルナティス様はレイラ王子を呼んで泣いていました。私のことなど目に入っていません。ルナティス様がこの世で頼れる男性はレイラ王子だけです…。少しして、駆けつけたレイラ王子は、ルナティス様が血まみれなので触れない。微笑んだルナティス様がいけなかったとルナティス様を窘めました。私はルナティス様の別テントへ移し、体を大量の水で清め着替えました。ルナティス様は大声で子供のように泣いてました。私はルナティス様にそんな感情があったのだとなぜか冷えた頭で思いました。落ち着かれた頃にレイラ王子がルナティス様のところにやってきて優しく添い寝してあげてました。自分以外の人をもう信じてはいけないと刷り込みながら。」

サラは深呼吸すると、目をこすり、紅茶をのみほし、サラに語り続けた。



泣くルナティスに添い寝をするレイラに上掛けを手渡したとき、レイラがルナティスを見て微笑していたことに気づき震撼した。


このとき歪んだ喜びをレイラは覚えてしまったのだ。涙ながらにすがりつくルナティス様にレイラは安心するのだとサラは確信した。確信を裏付けるように似たようなことが何度も続く。さすがのルナティスももう誰にも微笑まないのに。ルナティスは警戒心からか、浅くしか夜営地ではねむらず、昼の敵を屠るように忍びこむ男達を殺していくようになった。もう涙も見せなかった。

そのうち、ルナティスの瞳に何かが渦巻くような暗い影のようなものが宿るようになると、ルナティスは殺した男を見たあとサラを見た。サラはその視線を知っていた。色こそ違うが、戦神の鋭い眼差しと同じだ。

「どうして?」

ルナティスはそれだけ呟くと押し黙った。


心の片隅にあった疑念、レイラがこの事を仕組んでいることに気づいたのか?

ルナティスはある日血まみれのまま、戦神の軍専属の前線への異動、つまり王太子軍からの直下からの離脱を願いでた。


そこからルナティスはを戦神と最前線をまわりながら、目の前の敵を屠る担当として活躍していく。

ルナティスはレイラになにも問わず、離宮に帰還しても二人は以前と変わらなかった。


サラはその不可思議な友情でも恋情でもない関係を目撃し続けた。



セルジオはアデルをちらちら見ながら口ごもりながら言った。

「ふたりはその、恋人だったのですが?」

サラは首を振る。

「身体の関係はありませんよ。レイラ殿下はルナティス様を大切にしてましたから。」

セルジオは思わず、声を荒げた。

「大切って…。理解に苦しみます。なぜ、そんなことがありながらふたりは近くにいるのですか…。」

最後は息を押し出すように一気に話し出した。

「そうせざる得ないのです。レイラ殿下もルナティス様以上に心を許した人がいなかったのかもしれません。あの国でお二人には、お互いの代わりになりえる人はいないのですから。まだ聞かれますか?アデル殿下。」


アデルは首を振った。そして立ち上がると、頭を押さえてゴブレットを3つ、テーブルに置くと見張りの兵士にワイン瓶をもってこさせた。そして自らどくどくとついでいく。

「殿下、私がしますから…。」セルジオが言うのを遮り、アデルは呟いた。

「サラ…。おまえはレイラ殿下をどう思うのか?」

サラは押し黙る。

「セルジオ、おまえはどうだ?」

セルジオはゴブレットをサラに渡しながら口ごもりつつ答える。

「いや、お話だけ聞くと、私には理解ができないですね。妃殿下がアデル様のところに嫁いでらして、心底ほっとしてしまいます。」

アデルはくすりと笑ってワインを口にする。

「俺が、ルナティスに優しいからか?」

セルジオは要領を得ない顔をして答える。

「まあ、見たかぎりですと。」

アデルはゴブレットを持ちながらサラに問う。

「サラ…。レイラ王太子も…優しいのではないか?出来事だけを話すとあれだが…。」

サラは頷く。

「えぇ。その通りです。ルナティス様の後見は戦神様ですが、ルナティス様の軍での最初の配置にも心を砕いてましたし、ルナティス様の軍略の描き方をよく理解し、女性だからと否定したりしたことはありません。それに、独占したくなったからと言って、ルナティス様を離宮に閉じ込めなおすこともなさいません。」

セルジオは少し声を荒げて言い返す。

「そんな嫌な思いをさせるくらいなら、離宮にもどして愛して、守ってあげることが妃殿下のためではないのか?」

アデルは手でセルジオを制する。

「いつだってルナティスに選ばせている…そうゆうことか。」

アデルは思いつきを口にするが、サラは頷く。

「選択肢が困難なものしか毎回ないですし 、ルナティス様のことを傷つけていないともいいません。ですが、不思議なことにルナティス様はレイラ様の難題に片方の傷は治らないまま毎回対峙し、傷と別のところはひどく強くなっていくのです。そうゆうルナティス様をレイラ様は愛しているのです。歪んでいるとは思いますけど、離宮に閉じ込めて守りぬくのが歪んでいないと言いきれる方もいないと思います。」

アデルはゴブレットに口をつける。サラはアデルをちらちら見てためらいがちに言った。


「ただ、アウル神皇国戦後からなのか、あなたとあの湖に落ちてからなのかルナティス様は変わってしまった。何でも知っていると信じていた片割れは実は鍛えていくうちに違うものに成り変わってしまったというところでしょうか。レイラ様がルナティス様をあわてて妃にしたいと言い出して、ルナティス様はそれを拒否なさった。拒否するためにレイラ王子をカデフに追いやり、その間にクラレスに嫁ぐことを決めてしまった。」



サラはゴブレットを取らないで胸元から1通の手紙をだしてアデルに渡す。アデルは受け取りながらサラに言う。


「レイラ王太子はさぞ怒っているのか?」

サラは頷き、そして、初めてゴブレットに口をつける。

「サラはなぜ朝食に反対だったか…。私の考えが至らずにすまない。嫌な役回りをさせた。」

「いえ、ただの杞憂でしたから。実際ルナティス様は嬉しそうでしたから、いいんです。」

手紙をほどきながら、アデルはサラを見つめる。

サラは褥をともにしてもしなくても、ルナティスが朝食を男性に囲まれて取ったことがなかったから心配していたのだ。ルナティスが取り乱さないかどうか。


「あなた様が、王子と知りませんでしたので、正直ルナティス様がいつものように閨で王子を殺してしまわないかとも心配してました。」

サラは真顔で言う。アデルは苦笑して手紙を一読する。内容自体は大したことない戦神からの商談依頼だ。

ただ筆跡がいつもと違う。サラはもう1枚の手紙を差し出した。同じ筆跡の手紙だ。


「これは…。」

「私の主はルナティス様と戦神様ですが、変わらずレイラ様に逆スパイをしています。アデル殿下。どう私はレイラ様にお返事しましょうか。」

アデルはゴブレットを遠ざけ、もう一度紅茶に砂糖をいれてを一気に飲み干す。


「サラ…。」

アデルは文面をみながらサラに問う。

「はい。」

「最後に二つ聞いてもいいか?」

サラは眉をひそめた。

「1つでなくてですか?」

アデルは頷く。

「なぜ、クラレスだったのだ?ほかにも嫁ぎ先があったであろうに。」

「国内にレイラ様の影響をうけない殿方はおりません。それで国外になりました。クラレスとの結婚は、妃殿下が戦神に交渉して勝ち取ったのです。ただ、ここから先は妃殿下に直接聞いてください。あなたの妃殿下は…戦神の姫です。そこのところを踏まえて考えられますと自ずと答えがでます。ただ別の鳥籠に移りたいなんて甘えたことを通すような甘い王では戦神はありません。」

サラは優しく微笑んだ。

「う~ん。いまは考えつくのは1つだけなんだが、それだとあまりに恐ろしくてこの先もルナティスを抱ける予感がしないよ。」

アデルは笑いながら言うと、セルジオはまったくわからないと呟いた。

「さて、もうひとつは?」

「私とレイラ王子が仮に戦火を交えたら、私が勝つことはあり得るか?」

サラは思わず今度は声にだして笑う。

「早速、同盟破棄前提の話ですか。その際にルナティス様は含めますか?」

「どちらにも、含めない。」

アデルは手紙を読みながらあっさり言う。

「100回やって、アデル殿下が一回勝てばいいくらいですかね。」

サラがあっさり言うと、セルジオが珍しく気色ばんだ。

「人質に妃殿下を差し出すロゼリアとそんなに差がありますか?」

セルジオの言葉を無視して被せて質問する。

「ルナティスが仮に私の肩を持ったら?」

サラは間髪いれずにこたえる。

「20回中一回勝てたらですかね。」

アデルはくくくと笑った。

「セルジオ、ルナティスは人質じゃないってことだよ。全くこまった妃殿下だね。そうだろう?サラ。」

アデルは婚礼の宴でクラレス王家の面々を見ながら何かを瞳に滾らせていたのを思い出す。

「飲み込みが早くて助かります。ただ、ルナティス様は…。」

「優秀だけど、生身の人間で、弱冠18才の私の妃だ。例えどんな話を聞いたとしても、結婚の契約に署名したのだから、大切にするよ。例えどんな結果になっても。サラ、おまえに誓う。」

アデルはサラをじっと見る。サラは無言で頷く。アデルはそれをみて大きく伸びをした。

「さて、一度戦神にはひっかけられたのだ。今回も騙されたふりをしてレイラ王子にお会いしよう。ただ、まだ道具屋が俺だとバレるのは面白くないから同一人物でなかったと報告してほしいが、いいだろうか。」

サラは頷き了承した。


セルジオがゴブレットに口をつけておずおずと尋ねた。

「あの、なぜ妃殿下は人質でないならなんなんですか?」


アデルはセルジオを見て笑った。

「ルナティスは人質じゃない。ロゼリアの渾身の矢だ。私たちはロゼリアに攻めるのを猶予しているどころか、ロゼリアから弓の照準を合わせられていたのだ。私にできることはせいぜい照準をずらしてもらうぐらいだよ。」

アデルは笑って、ルナティスの待つ寝室にもどるべく、立ち上がった。


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