表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

その2ー6

俺の言った言葉が、アカネさんの想像を超えていたのか、斜め上をいったのか、彼女が大きく顔色を変えた。


「本気か?」

「俺の覚悟は本物だ。俺は、あなたの様々な顔を見ていたい。

永遠に。

そのためにここに来た。」

俺の目には、意志が宿っていたはずだ。

真剣な目というものは、覚悟の瞳は、相手に必ず伝わる。


アカネさんが、はぁ・・・と、ため息をついて言った。

「仕方ないな。仰向けになり。

顔、見たいんやろ?」

歓喜で身が震えた。

ついに、長年の夢が叶う。そんな気持ちだった。出会ったのはほんのひと月前だというのに。それほどの喜びだった。


「し・・・・・みがない・・にして・・・れ。」

俺が仰向けになると、アカネさんはなにか呟いたあと、俺の右手を手にとった。

「じゃあ、いただきます。」

引きちぎるでも、削ぎとるでもなく、俺の手を口まで運び、親指の肉を一気に抜き取る。

俺の手は、親指だけ骨のみの状態になっていた。不思議と、痛みはなかった。


普通、そんな光景を目の当たりにすれば、気絶、あるいは錯乱するだろう。だが、俺はそんなことは気に止まらなかった。それよりも、アカネさんの、甘美に満ち溢れた笑顔の方が、俺の興味を引いたからだ。

その美しく、醜く、狂気と愉悦に満ちた表情に、俺は幸せを感じていた。

今、俺の体を貪り、咀嚼しながら、そのにんまりとした笑顔を顔に浮かべる彼女が、どうしようもなく愛おしかった。

よかった。彼女の糧となれて、本当に良かった。


気がつくと、俺の右腕は肩の部分を残して、骨だけになっていた。

体はもう動かない。

まだ右腕しか食べられてはいないはずだったが、体を動かすことはできなかった。

その後も、彼女は味わうように、早く食べ終わるように、急ぎながらもゆっくりと食べすすめていった。

左腕、右足、左足、腰、胸、肩。

ついに頭だけになった俺に、一言だけアカネさんが言った。

「ごめんな・・・ありがとう。」


そして彼女は、俺の頭に齧り付いた。

そこで、俺の意識は途切れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ