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初ライブ

ひねくれ

よく信号のこと青信号っていうやついるけど、なめてんのか。

今の時代LEDで世界が回ってんだ。みりゃ分かんだろうがよ、緑だぞ、緑。

あれは緑信号っていうんだ、わかったか。

ということを、隣の小学生に目で教えてやった。小学生は気づきもしなかった。くすん。

俺は白いところだけを踏んで横断歩道を横断した。

それはそうと、俺がなぜ小学生と同じような時間帯にこの横断歩道をわたっているのかというと昨日の電話の件があったからである。

盗み聞きじゃないからね、たまたま小耳にはさんだだけだからねっ。小耳ってマジなに。大耳もあんのか。

電話の内容を要約すると今日、アソコのアリーナであいつが歌うかもしれないのである。

まだ歌うとは限らないが仮定として歌うということにしといた。

昨日みたイベントの概要によると、九時にライブが始まるらしい。

現在八時五十分。

やべーよ、遅刻寸前だよ。

急いでイベント会場に来たわけだが、すごい人の量だなおい!

もう座るところないんじゃいかってくらいの満席っぷりだよ。

近くの席にちょうど一人分隙間があったから座った。

隣のおじさんがこっちみてきたから「うっす」とか言っといた。

っていうか、おじさんまで見に来てんのかよ年齢層広すぎだろこのライブ。

それにしても、白婿が本当にアイドルだったら、どうすればいいのだ?どういう顔してみればいいの?でも、しかし、仮に、まだアルバイトっていう可能性も十分にある。

でも、このイベントに関与しているのは確定なのであ~る。昨日電話で聞いちゃったもん。

とにかくこのイベントをどうにかして楽しまなければならない。チケット代2160円もしたんだぞ、2160!おいおい、高すぎだろ、入場無料じゃねぇのかよ。

そんなことを考えていると、まぶしいライトで照らされ、爆音の音楽が流れ始めた。

どうやらライブが始まったらしい。

となりのおじさんがペンライトもって発狂してるから俺もそれに合わせて、「うぇーい」とか「ばっちこーい」とか言っておいた。

「本日は皆さま、ライブにお越しいただきありがとうございまぁあす!思いっきり楽しんでいきましょー!」

透き通った女の子の声だ。

白婿かと思ったけど全く違う声じゃないか。

「どすこーい」でなんとかごまかす。

「それでは!アイドル紹介にまいりましょー!」

司会の声を合図に克明にスクリーンがスポットライトで照らされた。

スクリーンにはでかでかとホワイトリターンの文字。

「初登場!!高校生アイドルー!!」

さっそくかよ。

そう思いつつ俺の心臓はバクバクしていた。

もし本当にあいつが登場してきたら……。俺はアイドルの全裸を見たのか?

「犯罪じゃねぇか!!」

普通の女の子ならまだしも、アイドルの全裸かァ…。

ステージの中央に誰かが出てきたけれど逆光シルエットでよくわからない。

シルエットでは、長い髪が少しだけ確認できた。嫌な予感。

ゴリッゴリにフラグは立ちまくっていた。

同時にコールが鳴り響く。

「こーだーま!こーだーま!」

うわ、もう絶対あいつじゃん。

スポットライトで照らされた少女は案の定アイツだった。

真っ白いドレスのように着ている服からは大きめのスカートがフリフリしていて、髪はアイドルらしくくるくる渦を巻いていた。どうやってあの髪つくってんだよ。

「うわ、マジでアイツじゃん」

マジで白婿デシタ。

あいつがアイドルなら俺の隣の部屋がアイドルの部屋で……ってちょっと待てよ。

やっぱり俺が昨日見た全裸は、アイドルの全裸ということで……いかんいかん。

驚きと不安とうれしさとで脳がパニックパニックになっておる。うれしさて。

「みーんなー!今日は私の歌で精いっぱい楽しんでいってねー!」

ステージの上の白婿は昨日の口悪いゲス女とは全く違って、別人の風貌であった。

おぉ…よく見りゃへそ出しの衣装じゃねぇか…。寒くねぇのか…?

「結構人気あるんだなあいつ」

曲が流れ始めるとともにこだまコールが聞こえ始める。

なんか、ずっと「こだま」って聞いてるとだんだん「はだか」に……。まずい、全裸が頭から離れない…。

白婿が歌う曲はというと、今流行りのリズミカルなテンポの良い曲だった。

歌もそこそこ上手くて、踊りもまぁ、それなりに…できている。

「あ、なーたの、ハートに…」

自然に俺も口ずさんでいた。男が普通歌わない歌なのに…ハズカシイ!!

…俺は一体何をしているのだろうか…。

なにこれ、マジのアイドルじゃん!

すっかり最後には立ち上がってペンライトまで降っちゃったよ、ハズカシイ!!

曲が終わっても歓声は鳴りやまない。

そして、司会のアイドル紹介がはじまる。

「えー、ホワイトリターンのこだまさんは現役高校生の一人アイドル!」

「えへへ、どーも」

ステージにいる白婿は頭をかいて頭をかいて照れてる。

「アイドル一年目にして白の鼓動でデビューを飾り、今や、音楽業界から一目置かれる存在なのでーす!」

ええっそうなの?全然知らんよ、ハツミミだよ。。

「いやいやそんなことないですってー!」

アイドルらしく満面の笑みで対応する白婿。

こうやってみると可愛いんだけどなぁ。昨日口喧嘩したやつには到底思えない。

「本当に今日はみなさんありがとうございましたー!サブホールでグッズ販売をしておりますのでぜひそちらのほうにも足をお運びください!」

完璧な締めくくりだ。

サブホールか…。後で行ってみるか…。


へそだし?悪くないねぇ

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