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転機

転機予報。

教室では俺の全裸事件よりも転校生の可愛さの話でもちきりであった。

良かった……。助かった。みんな忘れたらしい。

「黒加根……くん?」

「ぎくっ……なんだよ」

「本当にあの、その……あの子のぜ、ぜぜ、全裸見た……の?」

忘れていないヤツいたよ。

「まあ、嘘ではないな」

「えぇっ!黒加根君もそ、そういうお年頃だし、女の子の体に興味をもつのは分かるけど、さ、さすがに同級生の女子の裸をみ、み、見るのは……」

「あれは事故だ!俺は悪くないぃぃぃぃ!」

俺は見たくて見たわけじゃないことを「い」の数で必死に伝えた。

頼む月城、わかってくれ。

「そ、そう……だよね。黒加根君が女の子の裸を、見る勇気なんてあるわけないし……うん!そうだよね!黒加根君は悪くない!」

……なんか変な解釈をされたようだが、わかってくれたらしい・

アブネーアブネー。友達をまた一人失うところだった。

下校の時間になると転校生のことすら忘れていた。

今日も一日乗り切ったと自分を褒めたたえ、リュックを背負った。

「黒加根君……一緒にか、帰ろ……帰らない?」

「ああ、いいよ」

お互い友達が少ないので下校時はいつも一緒に帰るのが日課である。

俺らのことをそういう関係なんだろ、とかいうやつもいなければ、ばかにするやつもこの学校にはいない。平和だなぁ。

ち、ちなみにホントに違うからね?仲良いからって勘違いしないでよねっ!

「あの白婿こだまちゃん……だっけ?不思議な子だったよねー」

う、またソイツの話か。

「そういえば今日あの事件が起きたのもあいつが俺の隣に越してきたから……ってことは、あいつと同じアパートに暮らしてんのか俺は?」

「え、えぇ?じゃあそれで今日その子の全裸見たってこと?」

なんで全裸ってワード出しちゃうんだよ。おれ、あえて「あの事件」ってし隠語にしたんだろうが…。ほら、犬の散歩中にばあちゃんがすごいこっちみてるよ。どうすんだよ。

「でも黒加根君!人のうわさも七十五日っていうじゃん!」

噂がなくなるまでがなげーよ!そんだけ余裕あったら俺の黒歴史が更新されちまうだろ!」

「黒加根君の黒歴史がまた更新?!」

「おい、またって言うな、またって。前にもなにかやらかしちゃった人みたいだろ」

「え、なにかやらかしてないの?」

「やらかしてねーよ!」

「んじゃあまた明日ね!絶対、全裸見ちゃだめだよ!」

俺がまた見るような言い方だな……。あと、大声で全裸っていうな。ほら、おじい見てんだろ、おじいが。

そうこうしてるうちに、ガッピン竜宮に到着である。

あいつの部屋の前通るの怖いなー怖いなー。

俺はなるべく忍び足で廊下を歩く。カニサン歩きはもうトラウマ。

それと同時にあいつの部屋のドアが開く。マンガかよ。

なんで?俺の来るタイミング狙ってんの?

制服姿のソイツがすーっと出てくる。

目合いました。

「あ!今日の……」

全裸事件の白婿こだまである。名前覚えちゃったよ。

「黒加根司だ。今日の事件は事故だ。そういうことにしてな、仲良くしようぜ」

[この後に及んであんた何言ってんの?あんたのせいで今日全然学校なじめなかったんだからね!責任とってよ!」

「お前が全校朝会なんかで言うからだろ」

「それで先生と話すのもすごい気まずかったんだから!」

「それは俺もだ」

「あんた……全く反省の色なしじゃない!ホントに悪いと思ってんの?」

「あぁ、思ってるって」

スマンスマンと精いっぱいの思いを込めて合掌する。

「ま、まあいいわ。あたしもそんな小さい女じゃないから!でも!次見たら本っ当に千切りにしてやるんだから!」

罰がこえーよ。なんだよ千切りって。俺はレタスかよ。

そう言い残すと白婿は部屋に戻っていった。いや何で出てきたんだよ。

お、おいそんな力強く扉閉めんな。アパート壊れるだろうが。

「せめて八切りにしろよ。大富豪みたいでいいだろ」

俺の渾身のギャグは冷たい風と共に流れていくのであった。

「なんでよりにもよって部屋が隣なんだよ……」

あいつの部屋は902号室。その隣、901号室が俺の部屋である。

オイラは鍵をあけて自分の部屋にはいる。

今日の事件のせいで体は疲れ切っていたので招かれるように敷いたままの布団へ飛び込む。

テレビをつけると、どっかのアイドルが全員坊主にするとか何とかがニュースで報じられていた。

それを俺は横目で見ていた。

坊主て...もうアイドルじゃないじゃん、男じゃん。

「これからの対応は会社と話し合っていく予定です。ですから、坊主になるかまだ分からないようです。以上ニュースをお送りしました。続いて天気予報です。天気予報士のケンティーさーん?」

日本は平和だな...。

まぶたが、人が近くにいる時の自動ドアみたいに開閉しているのが分かる。

疲れが布団に吸い取られるように抜けていく。

それと同時に俺の脳の下垂体前葉は成長ホルモンの分泌に励んだ。

正確には寝た。最初からそう言えよ。

電話音の音で俺の脳は記憶回路の……もういいよこれ。

電話の音で俺は目を覚ました。今が何時かもわからない。

暗闇の中、音を頼りに電話を探す。

「あれ…違う…」

スマホの画面には通知はなかった。

もう一回寝れると思って枕に頭を乗せようとしたら机に思いっきり頭をぶつけた。なにやってんだ俺。

どうやらこの電話音は隣の部屋のようだ。

電話に出たやつは案の定アイツだった。

「はい、もしもし。白婿です」

薄い壁のせいで聞こえてしまう会話を俺は寝ながら清聴していた。

「ええ、はい、明日のイベントですか。はい、衣装はいつもので……はい、わかりました。明日の七時にメリハリアリーナですね。はい、失礼します」

イベント?衣装?あいつは何をいってるんだ?

衣装…って…、確か今日見たダンボールに…。

ってことは、あいつは一体…?

俺はスマホで明日メリハリアリーナであるイベントについて調べてみた。

「夏のてんこもりアイドルライブ……アイドル?!」

あいつがイドル?いやいやいやいやそんなはずがない。

明日はアルバイトかなんかだろう…。

きっと衣装もコスプレかなんか……。

一応出演者のところも見てみた。

「初出演……高校生アイドル…」

高校生アイドル……だと?まさか……な。

イベントのホームページには入場無料の文字があった。

これは行くしかないッス!

あいつの秘密を何か知れるかもしれない!

壁うすすぎだろ

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