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ovaのような最終回

最後やで。たのしみな。

「私たちの健闘とこれからの抱負もかねてかんぱーーい!!」

「いや、反省会やるってのは聞いたけどよ…なんで右京までいんの?」

時はアイドル甲子園から三日たった日曜日。あのファミレスである。

乾杯するやいなや右京はさっそく注文する。

「すいませぇーーーん!!」

「ほんと、よく食うなあの、デブは…」

「みーんな、いっぱい食べなさい!今日はマネージャーのおごりよ!」

「いや俺のおごりなのかよ!!」

隣にいる白婿が妙に俺にちかづく。おい、やめろ強い微笑みスンナ。惚れるだろ。

「いゃ-、まさかこのファミレスが黒加根の知り合いの店だったなんてね、知らなかったすよ」

「前も言ってくれれば貸し切りにできたみたいだよ」

「わりぃ、俺も言おうと思っていたんだがな…」

前方に座る無花果と月城もショートカットに私服で、いつもより三倍増しで可愛い。

ショートカットの女子に囲まれ、本当に俺のバイブスも上がる。でも俺の左のデブは俺の二倍ブスだけどなっ!!へっ!!あ、これどっかで言ったな。

「いやー、まさか俺のあのときのトイレが勝敗を分けていたなんてねーびっくりっすよ、はっははっは」

「今、食事中だからトイレの話はやめろ、あと食べながら喋んなビデ」

あの事件から俺はこいつをビデと呼ぶことにした。

「んで、おねぇさんたちは優勝したんすか?へへ」

「ほんと、おまえなんも聞いてねえんだな」

「さっき反省会って言ったわよね…?」

おお、そんなに起こりなさんな白婿さん。箸折れるよ、はーし。

あの一件から、そのことに触れることは俺の中ではタブーだと思い、あまり話題にはしてなった。しかし、白婿たちの反応から、どうやら気にしていないみたいことは分かった。

「負けたけど、あんなの勝ったも同然よ!ねぇ?」

「そ、そうだよ!あんなのほぼ勝ってるんだから、見逃してくれてもいいのにねぇ?」

「マジほんとっすそれ」

珍しく月城も怒ってる。

「でも、黒加根君のあれはすごい感動したな。すごいマネージャーって感じがした」

「うん、たしかに情熱は伝わってきたっすよ」

「まさかあんたがあんなにしゃべるとはね…」

「いや、ども、あざっす…」

おれもいきなり褒められるからなんて言えばいいのかわからん。あかん、いま赤面や。赤面ディー。

「あと、このショートカットだっけ?ネットですごい評価されてたっしょ?うわ、この肉うっま」

「お前は食うのか喋るのかどっちかにしろ」

「ほんとにともみも、この髪形にしてよかったな、って思った」

「うちも最初はどうかなー、って思ったけど意外といいよねこの髪形」

「よっ!マネージャー!」

「おい、おまえら、やめろよ…」

「んじゃ、黒加根、俺も、ショートカットにすればいいのか?」

「「「おまえは喋んな!デブ!」」」

女方一斉に怒鳴り声が響いた。

なんでこいつ呼んだんだよ…。






夜も更けて、右京はバイトで帰った。

どうやら、右京がここのファミレスのクーポン券をアホみたいに持ってたから呼ばれたらしい。あいつ、ここにどんだけ通ってんだ。

机には食べ散らかした食器と輪ゴムで縛られた右京のクーポン券が乱雑していた。

知り合いも店をはなれ、戸締りは俺に任された。

つまり、ここには俺とトリプルリターンお三方だけ、というわけである。

そんなお三方たちは爆睡中である。

「おまえら、どんだけ食ったんだよ…」

気が付けば互いに寄りかかっている無花果と月城の寝顔を見つめていた。

最高かよ…。

こう見ても、高校生アイドルなんだよな…とか思いながらじーと見ていたらこんと肩に何かあたった。

「ぐぅ…」

どうやら月城が寝返りをうって俺の方に頭をぶつけたようだ。

まったくこいつは…。

もうなんで女の子の寝顔こんなにかわいいんだよぉぉおおおっ!!

白婿の寝顔を見てると口が動いている。

「デブ…ビデ…ビデブ…」

相当根に持ってんなこいつ…。

そういえば、今日は白婿の誕生日だった。ちゃんと覚えてるよマネージャーだもん。

「そうだ、誕生日プレゼント…」

特注で頼んだホワイトリターンの文字が背中にプリントされたパーカーを白婿にそっとかけた。

「ハーッピーバースデイホワイトリターン…」

カタカン多すぎたな…失敗した…と一人でにやけているとなんか匂う…。

白婿からだ…。ん?香水じゃねぇな…?

「さ、酒くさい?」

そう悟った瞬間、白婿が起きた。

「…ん、むにゃ…お、マネージャー…よっ!今日もあっこいいじゃーん、うぇーい」

普段めったにしないハイタッチを余裕でかましてくる。

しかもなんだこの体制は!!!

のけぞる俺に覆いかぶさるように俺のひざ元でむにゃむにゃとわけのわからんことをぼやく白婿の姿。それをみて何か勘付く俺の構図。

なにかおかしい…ぜったいおかしい…。

「むにゃ…えへへ…」

寝ている白婿を起こさないようにそーっと注文票に手を伸ばす。

「よし、届いた」

ざーっと項目をみていったらまぁびっくり。

「甘酒…ワインいりデザート…シャンパン…」

なぜこんなにも飲み散らかしていたのを俺は見逃していたのだろうか。

まずいぞ…。ここにいるのは俺も含めみんな未成年だ…。

さっさとこの白婿をどうにかしないと警察沙汰では「すまない!!Yahoo!ニュースに乗っちゃう。ツイッターでトレンドになっちゃう。

そう思って、一回白婿から離れようと、俺がもぞもぞした瞬間、誤って注文票を床に落とした。

「あっ…」

かつぅん。

白婿はいまだ起きない。かわいい寝顔のままだ」。

「ふぅ…あぶないあぶない」

起こしたらとてもじゃないが構いきれない。今は安らかに眠っておいてくれ。

「あぁ…あれ?」

思いがけない方向から声が聞こえる。

「そっちが起きたか…」

声のした方に顔を向けると案の定、二人開眼いたしておる。

二人の顔を見るとさっきよりも頬が赤い…。こころなしか目もうつろに…。

「おおぉ~二人ともラブラブじゃぁーん」

「白婿ちゃんだけぇずぅるぅいぃ~」

すっかり酒を飲んだのは白婿だけだと思い込んでいたが、まさかの全員飲酒でした。

ふたりは見合ってうふふと笑いあったり、髪を耳にかけるしぐさを繰り返すように行う。

このまま、三人とも起きてしまっては面倒くさいことになってまう。

どうにか白婿を起こさないように、人差し指を口に当ててよくあるアレをやる。

「しーっ!!しーっ!!」

俺は必死に静かにするよう呼びかけたがまるで応じない。

「ねぇねえ、はい、あーん」

「こっちもあぁ~ん」

二人ともさっきまで自分たちが使っていた箸を使って、食べ残しの肉やら野菜やらあーんさせる戦闘態勢に入っていた。

「いや、ちょっとお前ら目を覚ませ…」

「あぁーん!!あぁーん!」

「はやくぅーー!!」

このまま白婿を起こさにためにもここは当たって砕けろだ!これってくだけるんですかね。

ぱく。ぱく。

「はぁい、よくできましたぁー!!」

「ぱちぱちぱちぃー!!」

俺は今の一瞬で二人の女の子と間接キスをしたのか…。よし、味覚えとこ。

「んん~」

俺のひざ元でうごめく白婿。

「おぉ。おはよぉまねぇじゃぁ」

きっとこいつが一番飲んだのだろう。ろれつがひどい。

三人起きたこの現場で俺にはどうすることもできないと察した俺はすぐさま立ち上がり、トイレに向かってダッシュした。

もちろんまてぇーと笑いながら追いかけてくる飲酒アイドル。

だがベロベロに酔った彼女たちには俺の俊足には到底追いつくことはできない。

「よし、これでトイレに入って…あいつらが目を覚ますまでなんとか待てば…なにっ?!?!?!?!?!?」

前方、トイレ目の前にして無花果が現れる。

「そぉはさせないよぉ~」

通せんぼをするようにしてトイレの前に立ちはだかる。

くっ…俊足より頭脳が勝るんか…。

どうやら無花果は先を見越して回り道をしていたらしい。

後ろからは二人の声。

俺は机をまたいで反対側のフィールドへと移った。

「まてぇ~」

三人とも獲物を捕まえる獣のような目で机に乗り始める。

本当だったら、このまま永遠にショートカット飲酒アイドルと遊んでいたいところだが時間も時間。今は夜の9時20分。このファミレスは道路沿いに建設されているため車通りも多い。

もちろん歩行者だっている。

外から見たら、何をやっているのだろうと、いつ通報されてもおかしくない。

ましてやこの明るさだ…ん?明るさ?それだ!!

「ふっふ…電気を消せば外からは見えない!すなわち、ニュースにでない!!ユーチューブの急上昇にものらない!!よし、これだ!!」

俺は三人の隙をうかがって、しゅばっと照明のスイッチに向かってはしりだす。

絶えず聞こえるアイドルの声!!

「どこいくんじゃぁ~」

「まてぇ~」

「まってよぉ~」

回り道できない道で走ったため、無花果も前にはいない。

「よし!!」

照明のスイッチに手を伸ばして、力強く押した。

ぱち。

次々に電気は消え、すぐに闇の中へと変わった。

「ふぅ…これで朝まで過ごせば…わっぶ?!?!」

そさどさどさと覆いかぶさるヤツラ。嫌な予感。

「つかまえたぞぉ~」

「おしおきだぁおしおきぃ!」

「えへへへへへへ…」

「わっ?ちょっば?!」

あちこち引っ張られている感覚が「する。なんせ暗闇だからだれがどこにいるのかもさだかではない。

「おいばか!!服引っ張るな!!」

三人の動乱は終わる気配もなくただただ俺の叫び声が店内に響き渡るだけだった。

「ショートカットはもうこりごりだぁぁあああ!!!!」

ほんま、こりごりやな。

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