白婿と雨
一応いくつか伏線あっるよー
あれから数日。俺は家でヨーグルトを食べていた。
このビフィズス菌が町内に染み渡る感じを堪能するのが一日の楽しみである。
無花果の曲はいい出来だった。曲に別に詳しいわけではないが俺の好みに合うものであった。
白婿もそれなりにアイドル活動順調かと思えば何の進展もなかった。……いや気になって調べただけだよ?あいつのことは全然気にしてないんだからねっ!
学校には顔を出す白婿だったが、こころなしか元気がなさそうで俺にも全く話しかけてこない。白婿が住んでいる隣の部屋は電気がついているものの物音一つしない。
俺は何か嫌な予感がした。
外、雨だし。
「なんかやだなー」
ふと追加のヨーグルト購入のミッションを思い出した。外に出るのは心底嫌だが、明日ヨーグルト食えないほうがもっと嫌だ。
ということで傘をもち財布をもち、俺は外へ出た。
「うわ、すごい雨だな……」
傘を差した途端、ビールの向こうに見覚えのある人影が滲んで見えた。
「……白婿?」
白婿は雨に濡れたまま道路で一人立っていた。
びしょびしょの制服で表情は見えない。
「おい、おまえ何してんだよ」
「あたしアイドルむいていないみたい」
「なっ…どうしたんだよ急に」
白婿は続ける。
「かなめちゃんが作った曲はよかった」
「ああ、それは同感だ」
「事務所の人たちもみんな私のために……」
白婿はきゅっと何かをかみしめるように唇をかんだ。
「それなのに……」
ああ。俺は知っている。白婿と検索するだけで出てくるアンチの数々。
ましてや新曲発表のあとのアンチの猛攻は激しくなった。
『曲をカバーできない無能アイドル』
『新曲を生かし切れていない』
『作曲者がかわいそう』
知人とは言えどこれらの批判にはさすがの俺にもチクリと来るものがあった。
本人である白婿など相当なものであろう。
「それなのに……それなのに私は……」
体を俺のほうに向けた白婿はうつむいたまま動かない。
「……」
長い沈黙。雨がさらに強くなっていることさえ気づかずにいた。
「……な、なあ白婿」
口を開くと白婿は俺の胸に飛び込んでくる。
傘の落ちる音だけが痛く響く。
「私……どうすればいいの……」
それは初めて俺に見せる白婿の助けと願いと頼りだった。
ぎゅっと俺の裾を握りしめる白婿の力は何かを物語っているようにさえ思えた。
「……風邪ひくぞ」
こういうカッコいいシーンやってみたかったんです