表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
七話 冰→熱い炎が僕らを巡る
84/84

82 魔女の力のせいで

「初めてアストゥーロと会った時、ひどく困惑したのを覚えているわ。ゼルルド国A級貴族22席、その中でも最大の勢力、アジリード家。実質的に軍部を従えている、まさにこの国の『力』を司る名家。たとえ生まれが分家であっても、あそこまで地味で静かな人だなんて想像できなかった」 


 彼女から見たアストの第一印象は、“ひ弱な男”だった。


「そんな彼をいつも引っ張っていたのが、セキュー・マグリューネだった。マグリューネは商家の出だったかしら? 少なくともC級以上の貴族ではないはずよ」


「引っ張る側と引っ張られる側が、そんなに離れているなんてね」

 今でこそ貴族至上主義とはいかないがA級は別格だ。言ってみれば彼らが国の頭なのだから。


「快活で、明るい。まあ今のアストゥーロを考えてみればわかりやすいかもね。悪い意味でも」


「悪い意味?」


 さっきまで静かだったソウイチが口を挟んできた。

「どっちかっていうと、特定の人としか交流しなかったタイプかな? 俺らとも話す機会があったわけでもないし……なんか、今のアジリードみたいに交友関係とか狭い方だと思う。学園内での話だから、外では分からないけどね?」


 アストも──まあ彼は少し周りから距離を置かれているというのもあるが──セキューさんみたいに特定の人としか話さないタイプだったんだな。


「今でこそ、セキューの話をこうしてできるけど……私、あの人は好きじゃなかった」


「好きじゃなかったって……」


「今でこそ、こうやって話をできるけどね、“1番になりたかった”私にとって、目の上のたんこぶだったのよ」


 目の上のたんこぶって……


「アストゥーロ、セキュー、元1-Aの学年2トップだった。私が勝てないくらいのね」


「アストが学年トップ? ありえんでしょ、あのバカ筆頭のアストだぜ?」

 たしかに実技系は今もトップクラスだけど、筆記は赤点常習犯だぞ? 一回あいつの勉強見てやったこともあるけど、マジでバカだぞあいつは。





「でも、ある時セキューが死んで、アストゥーロは“おかしく”なった」


 それが昨年、十月(ルクマ)の三日以降の話。


「人が変わったようだった。昨日まで話したこともないあいつが、私の前で土下座までしてこう言った。『死んだ人を生き返らせる方法はあるか』ってな」


「そんなことが」


「もちろん、あるわけない、と突っぱねたけどね。そこからだよ、気弱で臆病そうなアストゥーロが、セキューみたいに明るく快活に振る舞うようになったのは」


 その頃からずっと友達なんてものは作らなかったんじゃないかと。


「みんな、今も結構避けてるし……エルだけだよ、友達」


「そう、だよな……」


「仲直りした方がいいんじゃない?」

 ソウイチがそう笑う。


「……そうだな、そうするか」

 腰を上げて外を見るがもう真っ暗。



「もう夜も遅いし、寝ましょう。部屋も用意させてもらったから」

 シェルトは執事に部屋を案内させた。



 大きな部屋で俺は一人、眠気に身を委ねた。


    ☆


 シェルトは書斎に籠っていた。


「必ず、完成させてみせる」

 そうやって、彼女は『新たな無詠唱魔法』の研究を続ける。


 あの日、シェルトは確実にエルに置いていかれた。


 自分が守られる側であったと理解していた。


 だからこそ、それが許せなかった。プライドだった。




 あれから何度か、私の心の魔女『アスチルベ』が話かけてきたことがあった。私のこの気持ちを、彼女が形作ることの手助けをしてくれた。


 そのためにも、私は、この魔法を、完成させる。

よろしければブックマーク、評価などよろしくお願いします。

あなたのその一タップで、私の今後の創作活動の励みになります。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ