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俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
七話 冰→熱い炎が僕らを巡る
82/84

80 触れば溶ける脆いやつ

 side エルヒスタ



「お゛ね゛か゛い゛泊゛め゛て゛! 今日だけでいいからさぁあああ! テルオおぉおおお!!」


「超絶的に嫌だね。どうして、オレがお前を……てかテルオって呼ぶな余計に泊める気失せるわ!」


 俺は泣き顔で、奴の足にこびりついた。


「なっ、クソ離せ! おいユノ! ギル! こいつなんとかしやがれ! どかないと魔法でぶっ飛ばすぞ!」


「やーだー! わかってるけど! 無理なお願いってわかってるけど! でもおーねーがーいーしーまーす!!」


 彼はトゥルオーラ・リンドルード。愛称はテルオ。チェリスカに屋敷を立てギルカと、そして最近はユノも一緒に住んでいる。テルオ、ギルカといつもの3人のあと1人。ソウイチロウ・ロンダーはここにはいない。最近下宿先の『呉服屋 ハナミチ』じゃなくてこっちの屋敷に居候してるってあいつが言ってたのに。


 閑話休題。今こうやって、俺が恥を晒しながらもテルオに懇願しているのにはわけがある。


    ☆


 寮母さんからなんとか1日外泊許可を得たものの。俺は行く()()も何もなかった。ていうか友達が基本寮だ。

 えっと、リッキーでしょ? あいつは俺の部屋の隣だし……レッフィー! も俺の隣ってか、リッキーと同室だし。


 あとは、ア────あいつは……さっき絶交したしな。



 えっと、まて。本気で誰も居ないんだが? 流石にハルマル亭はまずいし、かと言ってシェルトに頼むのもなぁ。


 と、ブツブツと呟きながら下を向いて歩いていると、俺は何かとぶつかった。


「ひゃん!」


「いってぇ……あっ、ごめんなさい。大丈夫です、か? ああ!」

 俺とぶつかって転んでしまった人に手を出した。その時気づいたんだ。目の前の子が、ユノ・ワロキアであることに。


「エル先輩? どうしてこんな所に……?」

 首を傾げるユノちゃんもかわいいなぁまったくもう。


『気持ち悪いよ、エルくん』


 お前に言われたくないわい。


「ごめんね、ちょっと考え事してて」


「考え事、ですか? それって、ホールズと何か関係あります?」


「ないよ。ホールズにはたっくさんお世話になったさ。違うんだ。────俺、家出したんだ」


 俺はユノに、アストと喧嘩したこと。寮を飛び出したこと。そして行くあてもなく彷徨っていることを話した。


「それなら、うちに来るといいですよ? お屋敷なので、きっと大丈夫です!」


「へっ? ユユユ、ユノちゃんのお家に!? 行くよ、行く!」


『だからエルくん、なんでユノちゃんのことになるとこうかなぁ』


 正直ビビった。確かユノちゃんは寮暮らし。そして家はD級の零細貴族。

 屋敷なんてとてもじゃないが建てられないだろ? えっと、待って? 俺はしゃいでるのおかしい人なの?


「はい! では行きましょう! リンドルードくんのお屋敷へ!」


「ちょまって、テルオの家!?」


「はい。家の関係でちょっと……一緒に住めと言われてまして」


 シェルトから聞いた話だが、テルオとユノは許嫁の関係にあるという。B級貴族であるリンドルード家に取り付くためにも、娘であるユノを使うことはわかるが、あの邪智暴虐のテルオに渡すかね?



 で、今に至るのだ。


    ☆



「だってアストと喧嘩したんだ! くっそあいつ言うだけ言ってさあもう! たしかに相談とかしなかった俺も悪いけどさ! あの言い分はないよあの言い分は!」

 俺も悪かったし、謝るべきは俺だなってのはまあわかる。でもあいつの取り乱し方も尋常じゃなかった。……何か、きっと深いわけがあるはずだ。多分。



「ったくるっせえなエルヒスタは。おーいギル、ユノ。こいつ外放りだせ」


「かっ、かわいそうだよ! エル先輩、今日はどこで寝ればいいの! もう!」


「さあな。どっかあんだろ」


 ユノちゃんのかわいーいフォローも虚しく、俺はギルカに首を摘まれ外門まで引っ張られていった。






「ちょ、ギルカ! おいてめぇ! あのー、こっそりここに居てもいいか? こんなでかい屋敷なら俺1人くらい──」


「家主のテルオがダメだって言ってるんだ。そりゃ俺様も、ほっとけねぇってのはまあガチだ。だがな、ダメなもんはダメなんだよ。ったく、ほらシッシ!」


 駄々をこねるも何も解決しない。いやぁほんとに嫌だね。テルオが憎ったらしくなってくるね。


「ちょっとまってくださいー! リンドルードくんからの伝言です!」

 俺が地団駄を踏んで泣いていると、ユノちゃんが駆け寄ってきた。テルオからの伝言? どうせイヤミだろ貴様ッ!


「エル先輩。今日の寝床、リンドルードくんが取り付けてくれました」


 おっ、いいじゃん。どっか宿でも取ってくれたのか? なかなか気がきく人ではないか。手のひら返してやる。


「それで、どこの宿に行けばいいのかな?」


「いえ、宿じゃないです」


 ふーん。じゃあどこに行けばいいんだよ。何? 橋か? 橋の下にでも居ろってか?


「シェルトさん。シェルト・マーキュリアル嬢の屋敷です」


 ふーん、たしかにシェルトの屋敷なら入れ──ちょっと待て。俺が一番最初に候補から外してたとこだぞ? おいおい嘘だろ?


 流石にそれはダメだって俺心そう言ってるけど大丈夫なの?


「ユノちゃん、疑うわけじゃないんだけどさ。テルオ、本気でそう言ってたの? アポは取ったの?」


「大丈夫です。リンドルードくんは手を打っているはずです!」

 何その自信。てか、自信じゃなくて信頼か。どっから湧いて出てくるんだか。君を目の敵にしながら、こうやって許嫁を守っている行動理念ブレブレの男だぞ? 本当に大丈夫か?


「そういうわけだ。じゃあな、エルヒスタ。せいぜいがんばれ」


 ギギギと、正門が閉まった。


「それじゃあ! エル先輩!」


「じゃあな」


「えぇ……。まあ、仕方ないよなぁ」

 俺はトボトボと、シェルトの住む屋敷に向かった。辺りはもうすっかり陽が落ちていた。



    ☆


「やっぱりいつ見ても大きいよなぁ、この家は。テルオのとは比べ物にならないくらいだよ」

 屋敷の門を開け、庭園を抜け、そして屋敷のでかい門の前にいた。


 ノックは2回。獅子のあしらわれたそれを2回ゴンゴンだ。


「ようこそいらっしゃいました、エルヒスタ・レプラコーン様」

 執事さんがお出迎えだ。どうやら俺が来ることは連絡がいっていたみたいだ。一体誰が……。




「はぁい。もう何? こんな時間に…………っっ!! エっ、エル!? ちょっと、どうして!? 爺や! 聞いてないわよ!」


「書斎へ連絡を致しましたよ。『はい』と返事をくれたではないですか」


 モコモコの寝巻き姿だった。こんなに無防備なシェルトは初めて見た。


「やあ、シェルト。えっと、テルオ……トゥルオーラから聞いてない?」


「聞いてないわよ、このバカ! もう最低!」


 何もそこまで不機嫌にならなくても……。


「じゃあね」


「ちょっとまってシェルト、俺これからどうすれば──」


「着替えてくるの! お風呂にでも入って待ってなさい! いいわね爺や、二階には上がらせないこと! いいわね!」


 爺やさんはうなづいた。というかこの爺やさん、フェーセントの街にいた執事さんではないですか! お久しぶりですね!



 シェルトは超特急で二階に消えていった。


「お久しぶりですね、レプラコーンさん」


「ええ、フェーセント以来ですね。こちらに来たんですか?」


「そうですね。あの子の精神の変化。我々フェーセントの使用人はそれを間近で感じました。ヴォラート様は私に、シェルト様を見守っていてほしいとおっしゃってくれたのです。不肖この私、精一杯、支えさせていただきたい所存です」


 流石だ。プロの執事だ。

『当たり前だけどね』

 そういうことじゃないんだよセタ。でも、こんな人に支えてもらって、シェルトは幸せ者だね。



「さあ、浴場はすぐそばでございます。洋服はこちらで用意いたしますので、ぜひごゆっくり」


 では、お言葉に甘えさせていただきますか!


 お待ちかねの、お風呂タイムだ!


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