7 影の獣、闇と輝く
「どっからくる……ッ!?」
俺は剣に手をかけ、攻撃を迎え撃つ準備をする。
……。…………、とてつもない緊張感。早くなる鼓動。……。
……、……、……。……
「ガオァッ!!」
「エル! 狙われてんのはお前だ!」
きた!
俺の方へ向かってくる怪物。それに向かって剣を振るう。
「はーっ!!」
ガキンッ!!と大きな音が響く。牙と剣が拮抗して嫌な音が出る。
「エルヒスタ先輩!」「エル!」
「俺は大丈夫っ……だぁっ! だからこいつを! 光のある方へおびき寄せる、準備を!!」
こいつに効果的なのは、多分光だ。こいつは光が苦手なんだ! まだ本当なのかは定かではないが、きっとそうだ。
「くっそ、ふんっ! アスト、【アガラ】だ!」
「分かった! 『起きよ旋風! 一陣の風となっ……無理だ! 俺も加勢する!」
んなっ! 今は魔法で援護してくれよ! でも……仕方ない。昨日の夜、アストの魔法はあまり効いていそうでは無かったからな、仕方ない。じゃあユノちゃんに…
「わっ! 私は先輩たちに神のご加護を! 『天に座する我らが神よ 困難に立ち向かう勇者に──』」
ユノちゃんは攻撃的な魔法では無く、受け身の魔法を俺達に掛けようとしている。
だから! ちょっと違っ……
「う、ガーッ!! ゲホォッ!! う、ゴホッ! ゴホッ!」
俺は攻撃を耐えきれずに後ろに吹き飛ばされる。
「『──打破する力を与えよ【マナリース】』!」
力が湧いてくる……感じがする。ユノちゃんの魔法【マナリース】は……何だっけか。まあとりあえず、『補助魔法』か『回復魔法』だろう。
けっこう楽になった感じがする。
「ウォォ!」
「どりゃぁ!!!」
魔物とアストの剣戟。
「『穿て、【閃光】』!」
すかさず魔法を放つ。援護射撃だ。
「ユノちゃん! こっちだ! プランAだ、アスト!」
「わっ……分かった、です!」
「……! 速めにな! くっ……こん、のぉ!!」
ユノちゃんの手を引いて光の入ってきそうな場所に走る。
とりあえず、アストと話し合ったプランで、何が起こるかを確かめたいからだ。
☆
「作戦はこうだ。まず俺とユノちゃんで、窓のところまで逃げる……」
今日の夕方、俺とアストくんとの部屋で作戦会議のときに出た議題。
「……そして、カーテンをバサッと開けて、光を当てる」
「光を当てる……なぁ? 確かに苦手そうだけど……一回ミスったらヤベぇぞ」
「分かってる。でも、やるしかないと思う。だって
☆
アストの剣裁きは凄まじく、召喚獣とまともにやり合っている。
「──正攻法で勝てる相手じゃ無いから……、かぁ! エル、まだか!?」
「OK! こっちへ!」
「あの『召喚獣』と互角に渡り合ってるの……? あの先輩は!」
ユノちゃんが聞いてきたので、憶測を告げる。
「いや……、押されてる。たぶん勝てない、あいつが俺と同じで何か隠し持ってるなら違うけど……」
「ヤベぇ、怖い、やばいィ!!」
逃げるために走りながら弱音を吐くアストくん。
ちょっと面白い? いやいや、こんなこと言ってる場合では無いな。
「早く! アスト!」
「ウォォォ、オォォ!!」
走ってギリギリまで来た。
「開けるよ! ユノちゃん」
「はい! いきます!」
「「せー、のっ!」」
バサッッ!! と翻ったカーテンの後ろから、明るい月光が差し込んでくる。
「ガッ!!! グガヴッ!!」
ヒット! やっぱり光が苦手だったか!
なら、簡単に……ひるんでるうちに斬り殺す!
「いくぞアスト!」
剣を抜く。そのまま一直線に召喚獣に突っ込む。
「言われなくても!!」
アストくんも一緒に突っ込む。
「かっ……回復は任せて下さい!」
ユノちゃんがいることも心強い。
勝てる。油断はしない。加減もしない。本気だ! 一人なら無理かもしれないけど、二人なら!
「ゴゴガーッ!!」
咆哮による風、怖いけど怯めない。
「『穿て、【閃光】』!」
走りながら魔法を放つ。牽制にはなるだろう。
召喚獣が態勢を立て直す前に早く!!
「おっらぁー!!! セイッ!」
ザクリと肉を斬る感覚。それに一瞬怯む。だけど、
「ふっ! いくぜ!」
アストくんも召喚獣を斬りつける。しかし、
「ガーッッッ!!!!」
「なっ!? どっはぁっ!?!?」
「チッ! グハァ!!」
態勢を整え、走ってきた召喚獣に飛ばされる。
召喚獣はユノちゃんに、光のあるところに向かって行く。
「え……? ……キャーッ!!!」
ユノちゃんの悲鳴が響く。困惑と恐怖の混じり合った悲鳴。どうして、こいつは光が……弱点じゃないのか!?
「ユノ!?!?」
バリバリンッ!! と、大きな音がした。ガラスの割れる音だ。
マズい! ユノちゃんが窓の外に放り出される。
「キャー!!」
「ユノちゃんッ!! くっ、そこには行けねぇんじゃねーのかよぉっ!!!」
俺は窓に向かって走る。
今は召喚獣も気にはできない。走って窓を飛び越す。
「エル!!」
「グガァーッ!!」
窓を飛び越して空中に飛び込む。
「ユノちゃーん!! くうっ!!」
「エルヒスタ先輩!?」
俺は落下するユノちゃんを抱き、そのまま落ちていく。
俺は必死に態勢を整えた。落ちるユノちゃんを庇い、俺の背中から落ちるように。
「がッ!!!!! ゴファッ!!」
「キャッ!」
痛い! 今にも死んでしまうような痛みが、背中から全身に伝わってくる。
動悸が激しくなる。目が見えにくくなってきた……
「大丈夫か! エル!」
「先輩! 先輩!!」
アストくんの声……、それとユノちゃんの……。
やばい、どうしよう。すごい、めっちゃ痛……い──。
一日4話投稿とか……失速怖いです