表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
一話 夜の始まり→ファンタジーの続き
8/84

7 影の獣、闇と輝く

「どっからくる……ッ!?」

 俺は剣に手をかけ、攻撃を迎え撃つ準備をする。


 ……。…………、とてつもない緊張感。早くなる鼓動。……。


 ……、……、……。……

「ガオァッ!!」

「エル! 狙われてんのはお前だ!」

 きた! 


 俺の方へ向かってくる怪物。それに向かって剣を振るう。

「はーっ!!」

 ガキンッ!!と大きな音が響く。牙と剣が拮抗して嫌な音が出る。

「エルヒスタ先輩!」「エル!」

「俺は大丈夫っ……だぁっ! だからこいつを! 光のある方へおびき寄せる、準備を!!」


 こいつに効果的なのは、多分光だ。こいつは光が苦手なんだ! まだ本当なのかは定かではないが、きっとそうだ。

「くっそ、ふんっ! アスト、【アガラ】だ!」

「分かった! 『起きよ旋風(つむじかぜ)! 一陣の風となっ……無理だ! 俺も加勢する!」

 んなっ! 今は魔法で援護してくれよ! でも……仕方ない。昨日の夜、アストの魔法はあまり効いていそうでは無かったからな、仕方ない。じゃあユノちゃんに…


「わっ! 私は先輩たちに神のご加護を! 『天に座する我らが神よ 困難に立ち向かう勇者に──』」

 ユノちゃんは攻撃的な魔法では無く、受け身の魔法を俺達に掛けようとしている。


 だから! ちょっと違っ……

「う、ガーッ!! ゲホォッ!! う、ゴホッ! ゴホッ!」

 俺は攻撃を耐えきれずに後ろに吹き飛ばされる。

「『──打破する力を与えよ【マナリース】』!」


 力が湧いてくる……感じがする。ユノちゃんの魔法【マナリース】は……何だっけか。まあとりあえず、『補助魔法』か『回復魔法』だろう。


 けっこう楽になった感じがする。

「ウォォ!」

「どりゃぁ!!!」

 魔物とアストの剣戟。

「『穿て、【閃光】』!」

 すかさず魔法を放つ。援護射撃だ。


「ユノちゃん! こっちだ! プランAだ、アスト!」

「わっ……分かった、です!」

「……! 速めにな! くっ……こん、のぉ!!」

 ユノちゃんの手を引いて光の入ってきそうな場所に走る。


 とりあえず、アストと話し合ったプランで、何が起こるかを確かめたいからだ。


    ☆


「作戦はこうだ。まず俺とユノちゃんで、窓のところまで逃げる……」

 今日の夕方、俺とアストくんとの部屋で作戦会議のときに出た議題。

「……そして、カーテンをバサッと開けて、光を当てる」

「光を当てる……なぁ? 確かに苦手そうだけど……一回ミスったらヤベぇぞ」

「分かってる。でも、やるしかないと思う。だって


    ☆


 アストの剣裁きは凄まじく、召喚獣とまともにやり合っている。

「──正攻法で勝てる相手じゃ無いから……、かぁ! エル、まだか!?」

「OK! こっちへ!」

「あの『召喚獣』と互角に渡り合ってるの……? あの先輩は!」

 ユノちゃんが聞いてきたので、憶測を告げる。

「いや……、押されてる。たぶん勝てない、あいつが俺と同じで何か隠し持ってるなら違うけど……」

「ヤベぇ、怖い、やばいィ!!」

 逃げるために走りながら弱音を吐くアストくん。


 ちょっと面白い? いやいや、こんなこと言ってる場合では無いな。


「早く! アスト!」

「ウォォォ、オォォ!!」

 走ってギリギリまで来た。

「開けるよ! ユノちゃん」

「はい! いきます!」


「「せー、のっ!」」


 バサッッ!! と翻ったカーテンの後ろから、明るい月光が差し込んでくる。

「ガッ!!! グガヴッ!!」

 ヒット! やっぱり光が苦手だったか!


 なら、簡単に……ひるんでるうちに斬り殺す!

「いくぞアスト!」

 剣を抜く。そのまま一直線に召喚獣に突っ込む。

「言われなくても!!」

 アストくんも一緒に突っ込む。

「かっ……回復は任せて下さい!」

 ユノちゃんがいることも心強い。


 勝てる。油断はしない。加減もしない。本気だ! 一人なら無理かもしれないけど、二人なら!

「ゴゴガーッ!!」

 咆哮による風、怖いけど怯めない。

「『穿て、【閃光】』!」

 走りながら魔法を放つ。牽制にはなるだろう。


 召喚獣が態勢を立て直す前に早く!!

「おっらぁー!!! セイッ!」

 ザクリと肉を斬る感覚。それに一瞬怯む。だけど、

「ふっ! いくぜ!」

 アストくんも召喚獣を斬りつける。しかし、

「ガーッッッ!!!!」


「なっ!? どっはぁっ!?!?」

「チッ! グハァ!!」

 態勢を整え、走ってきた召喚獣に飛ばされる。

 召喚獣はユノちゃんに、光のあるところに向かって行く。

「え……? ……キャーッ!!!」

 ユノちゃんの悲鳴が響く。困惑と恐怖の混じり合った悲鳴。どうして、こいつは光が……弱点じゃないのか!?

「ユノ!?!?」


 バリバリンッ!! と、大きな音がした。ガラスの割れる音だ。


 マズい! ユノちゃんが窓の外に放り出される。

「キャー!!」

「ユノちゃんッ!! くっ、そこには行けねぇんじゃねーのかよぉっ!!!」

 俺は窓に向かって走る。


 今は召喚獣も気にはできない。走って窓を飛び越す。

「エル!!」

「グガァーッ!!」


 窓を飛び越して空中に飛び込む。

「ユノちゃーん!! くうっ!!」

「エルヒスタ先輩!?」

 俺は落下するユノちゃんを抱き、そのまま落ちていく。


 俺は必死に態勢を整えた。落ちるユノちゃんを庇い、俺の背中から落ちるように。


「がッ!!!!! ゴファッ!!」

「キャッ!」

 痛い! 今にも死んでしまうような痛みが、背中から全身に伝わってくる。


 動悸が激しくなる。目が見えにくくなってきた……

「大丈夫か! エル!」

「先輩! 先輩!!」

 アストくんの声……、それとユノちゃんの……。


 やばい、どうしよう。すごい、めっちゃ痛……い──。

一日4話投稿とか……失速怖いです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ