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俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
一話 夜の始まり→ファンタジーの続き
6/84

5 奴ら3人の事情と俺とユノちゃん

追記 2019 7/12 不良組3人の不良度と根幹に関わってくることを追加……しないと物語に整合性がとれなくなってしまいました。最低のミスですごめんなさい

 蹴るのが収まった瞬間、土下座の姿勢からでんぐり返し。体を動かして足を浮かす。そしてそのまま──。


「ゴブフゥ!!」


 ドロップキックゥ! ギルカのお腹に直撃!


「ふぅ……。そういえば、あなた方の名前を聞いていませんでしたね」


 両手で制服をはたきながら、俺はわざと、邪悪そうな笑い方をして聞く。


「この……蹴りを喰らわせるとは……ああ!」


「ああ、オレの名はトゥルオーラ・リンドルードです。うちのギルカ……えっと、ギルカ・ヴェスタがごめんね……あと少し、少し付き合って?」


 話す人を遮って話す人を遮って、俺が話す。あー。分かりにくい! あとしっかり名乗るのなあんたたち!


「私の名前はエルヒスタ・レプラコーン。以後、お見知りおきを」


 華麗にお辞儀をする。自分で華麗って言うの、少し恥ずいな。


 まあ、こんなことは言いたくないが……ヴェスタ家だったらもっとこう……優しそうな雰囲気なんだが。


 俺の知らない間に変わったのか?


「このっ、野郎!」


「チッ!」


 ギルカに殴られる。かなりの威力だ。単純に骨折れるくらい痛い、折ったことはないけど。


 もちろん、全力で殴り返す。力は人並みくらいにはあるけど……喧嘩慣れ? とか全然ないから、人殴るの難しい。それになんか感触が嫌だ。


「くっ! このっ! 小癪なっ!!」


「……ふっ!」


 一撃。まあドロップキックもあったし、普通はここまでだろう。むしろ、実力と態度が大幅に違う訳ではないようだし。強い方だ。


「グワッ!!」


 違う机にたたきつけられる。近くに居た、たぶんじゃじゃ馬だろう。それに当たる。悲鳴も上がる。野次馬もどんどんヒートアップしている。


 本気で怒ったのは次だった。


「やめてっ」


 ユノちゃんの可愛らしい声。いやいや、可愛らしいとか言ってる暇はないか。


「っこ、! こいつがどうなっても良いのかっ!」


 今度は大衆の悲鳴。彼、キャハキャハ笑ってたやつが、ユノちゃんの首に短剣……いや食堂で使う小さなナイフを当てていた。


「ほらほらぁ! どうした!? だっ……ダメだぞ! 少しはギルカに……!!!」


 チッ……! 卑怯なまねを。


「じゃあワロキア……ハァ、ッッッッッ!」


「や、……やめて!」


 そしてユノちゃんは、か細い声でたぶん、こう言った。


 「たすけて」と。


 ……、……。ドスンッ!!!!


「ゴブゥ!! バッハーッ!!」


 奴のいる、机の、反対側に移動して、蹴った。


 もの凄い勢いで吹き飛ばされたやつは、なんかもう関節大丈夫かって感じに倒れ、気絶していた。


 俺はあと一人を睨む。


「超恐いねぇ……。オレはもうこーさんですよ、()()。意味は分かってるでしょ、エルヒスタくん」


 両腕を上げながら近寄ってくる。なので俺はユノちゃんを背に守りながら戦闘態勢になる。


「あー。2人を……回収? は言い過ぎか……ああ、そうそう撤収するんですよ」


 リンドルードは関節外れちゃったやつを左に抱えて近寄ってきた。


「……何のつもりだ、リンドルード」


「いやいや……ちょっと言いたくてね」


 リンドルードは俺の耳の真横に来て、こう言った。顔は見えなかった。


「その紺青の髪に、異様に光る金色の眼。キミ、超面白そうだからさ、オレのこと覚えておいてよ。オレもしっかり、覚えておくから……さッ!」


「ごぶッ!! くっ!! はぁ……!」


 もの凄い勢いで殴られた。俺は思わずうずくまる。


「ギルカくん。帰るよ。撤収ー」


「っ、覚えてろよエルヒスタ! 次会ったときはぶん殴ってやる!」


 俺は怒りが抑えられなかった。リンドルードを睨んで腕を突き出し、今できる最大級の魔法を放つために──。


「『雷一閃、稲妻よ……!」


「だめです!」


 ユノちゃんに抑えられてハッとなった。


 そうだ。ここでぶっ放したら駄目だ。気持ちを落ち着かせなきゃ……


「あああっ、あの……」


 ユノちゃんが呟く。


「場所……変えませんか?」


「ヒュー!」

「かっけー!」

「どうしよ、先生呼ぶか?」


 ……。ちょっと顔が赤くなってくるのを感じ、ユノちゃんの手を引き、顔を見せないように歩く。


「場所変えよう……どこ?」


「じゃ、じゃあ! ……あの、昨日の講義室に、お願いします!」


「分かった」


 俺は早歩きで3階、第5魔法講義室まで向かった。ユノちゃんの手を、ずっと握ったまま。


    ☆


 チェリスカ魔法学園中等学部の、南館屋上。第1食堂室でエルヒスタに()()した彼ら3人、ギルカ・ヴェスタ、トゥルオーラ・リンドルード、ソウイチロウ・ロンダーの3人が、日陰で寝ていた。


「トゥル、ソウイチ。俺様の敗因、なんだと思う? ってか、踏んだのがいけなかったか? ……でもなぁ、アレすんごく気持ちいいんだぜ?」


 トゥルオーラが腰を上げて言う。


「なに、ギルカ? お前がそんなことで気に病むなんて……ワロキアじゃなくてあの、エルヒスタってやつのこと好きになっちゃったの?」


「違ーよ。そもそもワロキアはテルオの……いや、お前に聞いても(らち)が明らん。ソウイチ、お前はどうだ?」


 ソウイチロウ、そう呼ばれた気弱そうな男がぼそっと言う。


「なんか……ハイになってたよなボク。ギルのこと『ギルカ様ァ~!!』とか言って。正直キモい。俺とか言って、キモい……。ボクキモい……キモすぎる。ナイフとか当てちゃったりして……。女の子の顔に傷つけるなんて最低男だよね……いやもう男として生きられない……ちょん切っちゃおうかな……」


 自分で自分を傷つけている。言葉で自傷してる。


「あー、もういいや! 何も考えないッ!!!」


 ギルカの咆哮。それは昼間の空に消えていった。


「ジャンケンしようぜ、負けた奴が飯買いに行くやつ。さっき食えなかったし、ちょうど良いだろ?」


 長い沈黙の後、ギルカが言った。彼らはいわゆる不良。素行の悪い最低の人間たち。


 でも、()()()()()彼らを表す言葉ではない。


「その前に、今日の夜。学校に行くぞ」


 トゥルオーラが言った。それを聞いて二人も耳を傾ける。


「召喚獣が現れた。それもあのクソが呼んだ奴だ、呪い含めて最悪度が超絶に違いすぎる。……とりあえず、やるぞ」


「めんどくさ、パス。ってか俺のことなんも考えてないよな、テルオも」


 ギルカはぶっきらぼうに提案を断って、そしてこう言った。


「今日は俺の()()()()()()に付き合え。校内なら基本、なんとかなるだろうしな」

ヤンキー3人、まだ出番あります

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