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俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
二話 霧が晴れて→私を隠して
25/84

24 怪盗“デルシャ”と才能の魔女

2019 7/26 殴って気絶させる所を【パライズバインド】に変更しました

 霧に包まれた俺とシェルト、ユノちゃんとテルオは、一人襲ってきた凶人を殴って退けたものの、未だ霧の中にいる状態だ。ユノちゃんとテルオの気配はすでに、全く感知できなくなってしまった。まるで、どこか場所を移動したような……。


「周りが見えないな……シェルトさん。いますか?」


 咄嗟に手は繋いだものの、これが本当にシェルト・マーキュリアルその人のものとは、確信がつかない。


「大丈夫だレプラコーン。それより……前に、人が」


 霧が晴れる。そこは、今までとは雰囲気が違う大通り。


(なあセタ……ここって)


『さっきのいた場所とは違うね。テルオくんもユノちゃんもいない』


 ザザッ、ジザザザジッ。そんな、何かを引きずる音がしてから彼女は現れた。


「サモネとリヴスはしっかりやってるかナー☆ ………あっ、来たーッ★」


 所々が霞がかっている大きな亀のような生物に、一人の女性が乗って座っていた。


「怪盗のお出ましってことね。レプラコーン、やるわよ」


 その女性はシェルトよりは小柄だか、

『エッチな衣服だねぇ……』


(おいちょっとは節操持って集中しろやエロセタ!)


 その子は、豊満な胸を隠しきれないほど布面積の小さい……下着? 下着なのか、いや……多分水着……そうだ、水着の上に、マントを羽織っている。


 そして、薄青色の髪が跳ねた。


「どうモ☆ 怪盗『デルシャ』でス、よろしくネ!」


 そこにいた怪盗は、予告状を出したサモネではなく。デルシャという女性であった。


「サモネじゃ……無いの?」


 シェルトを、『魔女』を狙っている人はこの街にまだまだたくさんいるのか?


 そんな疑問など知らないデルシャが、にこりと笑ってマントを翻す。


「じゃあ召喚獣ちゃン★ 女の方は殺さない程度にいたぶっテ。そして男は……そうだナー☆ 殺しても良いのかナ?」


「召、喚獣! やっぱりかっ!」


 召喚獣の上の少女から発せられる魔力が……向きを変えた。魔法が発動するときに、魔力はその向きを一方向に整えられる……そう俺は感じる。俺は、巨大な魔力の移動を、感知した。そして、召喚獣の……巨大なもやの塊が、俺の目の前に──。


「レプラコーン! 避けろ!」


 俺への攻撃が始まる前に、魔力を感知していたシェルトが俺への攻撃を見切って言う。


 俺はジャンプをしてその塊を躱す。


「くっ! あっ……ぶねぇ。ありがとう、シェルトさん!」


『感謝している余裕はないね、エル君。反撃反撃』


 そうだ。でも、どうする。こいつを……デルシャを、どうする? 殺すか? いや、女の子を殴ることができないほど俺は紳士な訳ではないが、そういえば、対人間の戦闘は、殺し合いは初めてだ。加減は……考えない方がよさそうか。


 着地する前に魔法を唱える。


「『穿て、【閃光】』」


 俺の手から放たれた光の一撃は、召喚獣に当たったものの……


「きい、てない!」


 全くの無反応。それどころか、ウォーミングアップをしているようだった。


「あっはハ☆ よーっワ★」


 蔑む表情で罵ってくるデルシャ。


『あぁ~。その表情そそるわ~☆』


(おいそんなこと言って☆出してる場合じゃ無いよセタ。手伝ってくれ)


 そんなデルシャに悶えていたセタを、ナビゲーターとして戦場へ駆り出す。


(質問。この召喚獣とどう戦えば良いんだ?)


 そう、セタに聞くが、


『知らないよ、そんなの。こっちの世界の知識は、神様って詐欺師に教えて貰ったほんの少しだからな』


(いや、違うんだよ、聞いていることが。お前のファンタジー感で考えて、お約束を教えてくれ)


 そのようなメタ的な発言をしたあと、セタがボソッと呟いた。


『そうだねぇ、簡単なもの、考えられる最高に楽なのは、こいつの弱点属性で攻撃をすること。夜の学校の召喚獣は、多分だけど光を浴びたから消滅した。だから、この亀も……』


 わかった。そう心に響かせて、俺はシェルトに聞く。


「亀って弱点あるか?」


「……弱点? さあ。でも、……うーん」


 シェルト考えながら唸っていても、召喚獣と怪盗には関係ない。攻撃をしない意味にはならない。


「ガラ空キ☆ そウ?」


 後ろから、人の気配がした。俺は咄嗟にシェルトを突き飛ばす。


 やっぱり、そうだよな。この召喚獣は霧を吸い込みすぎた人をあやつることができるのか。

 シェルトを庇い、腹に頭突きを喰らわされる。


 やっと、分かった気がする。この……霧の召喚獣は、霧を吸い込みすぎた人を、操る特殊能力がある。学校のときの『影の召喚獣っ、てのはどう?』そうか、それでいこう。


 影の召喚獣は、その名の通り影に隠れることができる特殊能力を持っていた。


 そして霧の召喚獣は、人を操る能力のある霧を散布する能力がある。そう考えた理由は、凶人……操られている人の口元から何か、靄のようなものを吐き出しているはずだ。

 口元から、召喚獣が発している魔力を感じた。しかし、操られていると考えるにはまだかも知れない。それは、凶人から殺意と困惑、そして耐えの感情をほぼ均等に感じるからだ。

 もし──

「考えすぎ、レプラコーン! またくる!」


「あっ……ああ、分かった!」


 少し考えすぎてしまった。まあ、俺は馬鹿だから、だからなんだって感じだけど。


 召喚獣から放たれる気弾、数を増してきた凶人。……本格的にマズい。防戦一方になってしまっている。


「【ダインハギル】!」


 シェルトは、絶対に人達を傷つけないルートで、召喚獣に魔法を飛ばす。だが、コントロールに魔力を裂いているので、たいしたパワーを出し切れていない。


「くっ……、打開案は、ないの……か!」


『ああ、思い出した。僕が愛していたファンタジーのゲームにいた亀は、炎属性の攻撃で倒したときしか焼いた甲羅がドロップしなかったんだよね~』


 とりあえず、それだ。今1番、最良の方法だ……と思う。


「シェルトさん! 炎系の魔法、使える?」


 そうだよ。俺が共に戦ってるのはゼルルド国一の魔法使いなんだ。そのぐらい使えて当ぜ──。


「私、【ダインハギル】! これしか使えない。と、言うか……。他の魔法の使い方が分からない? まあ、別にこの魔法強いからいいわよね? 基本、速度では負けないし」


 ──他の魔法の使い方が分からない? とんだ才能野郎だぜ。ったく。ゼルルド国一の魔法使いは、1つを極めて最強らしい。なんだよそれって思うけど、それだけ【ダインハギル】は強力無比な魔法だ。


「……凶人の数が減ってきた! 死んでないから大丈夫だ、けど。全員怪我させちゃってごめんシェルトさん。んっ!」


 謝りながら召喚獣の攻撃を避ける。そのあとに、シェルトの声は、「ごめん」と言った俺に対するレスポンスは、全く来なかった。そのかわりに……


「……シェルトさん? ……ふぃ、ムグフッ?!!」


「はあ……はあ」


 自分のしていることが信じられないとばかりに、シェルトが俺に拳を突き出していた。咄嗟の攻撃に、それも予想外で痛みよりも。


「……!! レ、プラ、コーン。違う。私じゃないこれは……これは、()()()()()()()()()!」


 容赦なく拳で殴りかかってくるシェルト。その動きは、さっきまで戦っていた凶人よりも、極めて強い。その実力は、アストと同じくらいかそれ以上。


「はっ……霧! 霧の攻撃を受けたのか!? シェルトさん! 聞こえる!?」


「おあっ、あ……ぎっ、だ、ぃじょ……」


 耐えるように、何かに耐えるように。その何かを具体的に説明するなら、それは自分。欲望を抑えるなどという言葉で、この状態を表すことはできない。

 シェルトは、まるで()()()()に苦しむ人だ。殺意の感情がどこからともなく現れ、その淵に耐えの感情と困惑が約4:1の比率で心の中を渦巻いている。


「こっちも忘れないでネ☆ 男の方が早く死んでくれなきゃ最悪、魔女、死なせちゃうかモ★」


 召喚獣の咆哮と共に、大きな気弾が形成され飛んでくる。


「くっ……そ! ごめん、シェルトさん!」


 俺は腕でシェルトさんの腹を抱え、横っ飛びをして気弾をかわす。


「な、いが、ぎぎっ、んで!」


 耐えて耐えて、シェルトは辛そうだった。だから、俺は。


 辛いなら一度、寝て忘れて貰おう。そう思って、でも、殴って気絶させるなんてできなかった。でも、仕方ないんだって、割り切る。


「ごめん、シェルトさん。辛い顔を、見せないで……俺が、終わらしてくるから。『走る電気は力を除き その行動をきりとめる 痺れて捕まえろ【パライズバインド】』!」


 【パライズバインド】。対象の動きをほぼ阻害する魔法。スタンガンよりは対象を傷つけない……と思う。


「……げがふっ!!! ──ありがとう……っ」


 仕方ない、仕方ないんだ。……唇をかむ。これしか、俺には出せなかった。ここでセタのことを思い出すが、そんなの、セタに聞いたって同じって自分に言い聞かせる。

 そのあとに、セタが『僕も同じことをしていたし、エル君の頭が危なくなるなるんだったら、こうやってシェルトちゃんを無害化させていたよ。当然の判断をしたんだ、エル君は……』、と言ってくれた。


 そうだ。シェルトを俺が傷つけて良いなんて、怪盗がダメで、召喚獣がダメで、凶人がダメなのに。そんなことは、俺が傷つけて良い、ダメだ。覚悟だ、俺。

 俺が、ここで終わらせて、後で楽しく、シェルトと一緒に、アストもユノちゃんもテルオも、ソウイチだって、あとギルカも、みんなで祭を楽しむんだ! だから、その前に。


 俺は目の前の怪盗と召喚獣に向けて、


「……勝負だ、怪盗。俺は、絶対に勝つ」


「あハ☆ やれるもんならやってみろ、殺してみろヨ★ さあ、パーティーの始まりネ☆」


 召喚獣が頭を上げて咆える。体の周りに空気の弾が生成され、その気弾が俺に向かってくる。


「セタ、サポート頼む」


『ああ。そのまま直線に走れば気弾に当たらない。本気で、やろう……』


 剣を引き抜きながら、気弾が飛ぶ道を突っ走っていく。


 怪盗との殺し合いが、始まった。

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