表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
二話 霧が晴れて→私を隠して
16/84

15 出会いというものは偶然であり突然であり必然である/怪盗

 トゥルオーラの過去、シェルトの過去、そしてエルの『謎の力』が爆発する。シェルト様のボディーガードとして、エルの魔法と霧が渦巻き飛び交うフェーセントの街を駆け抜ける第二話。


 ──前提としてひとつ。


 奇跡のような単純な、陳腐な、ただの都合の良い救いなど、この汚れきった世界などで起こることは、絶対に無い。

         隠せ、自分の幸せを

         ── Chapter 2 ──




 ある八月(アウグス)の、お祭りの日の夜のこと……。


「私の裸体、ここで綺麗さっぱり忘れさせてあげるわ! もちろん……」


「だから俺は、不可抗力だって!」


 俺の目の前に、憤怒の形相をした『学園の女王(クイーン)』が俺に怒りを向けていた。


「それに俺は怪我人なんだぞ! お前のせいでな──」


「……レプラコーン……お前の頭を踏んで、肉塊にしてからぐちゃぐちゃにミンチにして。豚の餌にでもさせてから、綺麗さっぱりこの世のこと全てを忘れさせる!」


「だから理不尽だぁー!!!!」


 どうして俺が『学園の女王陛下』様に執着されているのかというと……


 話は遡る。正確に言えば、『ゼルルド・マキア国際体育祭』の前夜祭も終わり、開催を4日前に控えた『あの日』まで遡る。


 その日は、俺の意識が現実世界にある時間が、本当に短い一日だった。


    ☆


「ふんふーん、ふふんふーん♪」


 いい天気、キラッキラな陽射し、すがすがしい朝! そんな日に俺、エルヒスタ・レプラコーンは街に出ていた。


「バイト三日目、休日に高時給でパン屋の手伝い。よかった~。中等学部生雇ってて、しかも売り上げいいから見通しつきやすいし!」


 休みの日だけではあるが、7時から4時までの仕事(学校の日は朝の仕込みと夜の片付けを手伝う)でけっこうの収入が得られるのはデカい。

 ちなみにアストとユノちゃんは別の仕事。アストは重労働向きだし、ユノちゃんは接客業(エッチじゃないやつ!)得意そう。女の子だし可愛いし、それだけが理由。


 というわけで今日は俺一人。そういえば3人で街に出たこと無いなー。まあ来て十日経ったかどうかくらいだし、俺は地図無しでは歩けないし。


「まっそんなのもう関係ないけどな! ……ん?」


 ヒラヒラヒラとなにかが落ちてきた。


「これは……」


 ハンカチ? そうか、どっかから落ちてきたのか……。


 頭上の家に一つ、開いたドアを見つける。


「ここか、届けよう……!」


 そして俺は、窓から渡すために【跳躍陣】を唱える。


「──【跳躍陣】』! よいしょ!」


 蛙もビックリの大跳躍で、開いた窓にジャンプする俺。


「すいませーん。落としました……か?」


 いたのは背中向きの……女性?


『薄々感づいていたんじゃないww』

 セタ・シンノスケのうざったらしい声も、()()を前にしたら全く聞こえなくなった。


 なぜなら……

「……は!? え……うん」


「き、さ、ま……!」

 下着姿、しかし()の方はアレを付けていない女性。深紅の髪に、真っ白な肌。たぶん、同年代。そして背中には……


 顔が赤くなるのを感じる。……うん、これはあれだ。

()()()ってやつだよ、エル君。本当にきみは面白いww』

 俺、怪我するんだ。お約束的に。

「あっ、こっ、こっこっこれを! 渡し──」

「見たな! 問答無用だ、【ダインハギル】!」

 

「ドブガーッ!!!」

 俺は知らんが、たぶん超高威力の魔法を放たれ、空中に吹き飛ばされる。


「……ふん!」

 あっ……やべ、目の前に……っっ!!!!!

「道ろびぎゃりふげろふん!!!」


    ☆


「あーあ、流石エルくん。災難だねぇ」


「おい、なんで俺がまたここにいるんだセタ!」


 あの夜の学校の騒動から少しだけ時間が経ち、俺はセタ・シンノスケとのやりとりを完全に思い出すことに成功した。その時、俺はシンノスケではなくセタと呼んでいた。


 だからなのかは知らないが、自然とセタ呼びに変わっている自分がいた。なんか、こっちのがしっくりくる感じがして、少し不思議だ。


「忘れたの? キミはハンカチを渡すときに少女の肢体を舐めるように鑑賞して、死んだ!」


「死んだ!?」


 死んだの俺!? じゃあの女の子殺人じゃん、犯罪者じゃん!



「うーそ。生きてるよ。あのキャワイイ年齢にしてはナイスバディーなガールも犯罪者じゃない」


「うっ、嘘だぁ!? セタの嘘つき! 泥棒! 犯罪者! 最低野郎!」


「まあキミにとって、やっかいなことが起こったのは確かだ。だってエル君は、もう3日も目を覚ましてない」


 うーわ、まじですかい。


「3日も!? お母さんとかお父さんや、アストとユノちゃんは、そのこと知ってるの?」


「承知済み。だけど起きても近くにはいないね。しかも、起きたら周りの風景にビックリ仰天なはず。まっ、せいぜい楽しんで来なよ!」


 そう言って俺は、精神世界(マインドルーム)から放り出された。


    ☆


「カッ!!」


 目を覚ます。お決まりのように、見知らぬ天井が視界に入った。様式美が過ぎているとは思うけど、これがファンタジーだとしたら、これってなかなかのものじゃ無いのか?


「ここは……」


 辺りを見回す。……、誰かいる。脚ほどにまで伸びた赤毛に白肌が美しい……、


「さっきのハンカチの人ですか?」


 俺は思いきって聞いてみる。するとその人は振り返ってこう言った。


「あ? 起きたの、ね。よかった……」


 よかった~。心配されてるみた──


「よかった……これで心置きなく()()()わね……」


 ──みたいじゃないですね、はい~終わり。てか目の前の子ガチで魔法唱えようとしてるし


「【ダインハギル】!」


「明らかにやばそうな魔法やめてー! 誤解誤解ィ!!!」


 これか、セタの言っていた『ビックリ仰天』かぁ。


 仰天にもほどがあるよ! コレじゃ俺昇天しちゃうよ!!


    ☆


「すいませーした」


 けだるそうな若い男の声が響く、とあるぼろ家。いや、ひとえにぼろ家と言っても、内装は整えられている。


「サモネか……失敗、したんだな」


 だんちょー……団長と呼ばれた男は、大きな椅子に座り、少しいらだちながら“サモネ”に言った。


「召喚魔法書を一つ、無駄にしたんだ。本来は『責任』でもとらせるつもりであったが……」


「えー、それだけは許してよー。また盗りに行くからさー。それに殺しも付け加えてくれたら嬉しーなぁ」


 サモネ……彼は懐から本を、魔法書を取り出して、団長に差し出した。


「サブクエスト的なのはやってきたよー。ほいこれ」


 団長と呼ばれた男は、その魔法書を見ながらこういう。


「また、おつかいを頼もう。マキアとゼルルドの国境付近にある、少し大きな街でひらかれる……」


「『ゼルルド・マキア国際体育祭』ってやつすか? そこに行って、何を殺してくればいいんすか?」


 サモネは別の本を取り出して、


「こいつで召喚獣を暴れさせて、混乱を……」


 団長と呼ばれた男は、言葉一つ一つを噛みしめるように言った。

「……お前は極力大きなことは起こすな。それは、『怪盗』の美学に反するよ。なに、ことが終わればの話だ。これの依頼者もまあ笑うだろうさ」


「依頼者……ねぇ、まーいーか。分かりゃーした。で、怪盗ってことは……そこで何を盗むんですか? それとも殺し? 俺、強い奴か優しい奴しか殺せないよー? 特に生意気で生きよーと、頑張ってもがいてる奴好きになるかも知れんけど」


 サモネの問いに、団長と呼ばれた『怪盗』は、こう言った。それはサモネに不思議と、とても不可思議を残して。


「まあだんちょーの頼みなら美しく殺してきますけど──」


「盗むのでは無い、殺しもしない。今回のは殺してはいけないし、何かを盗んでこいとも言えない。簡単に言うなら……(かど)わかすんだ」


「──へ、誘拐? こりゃ珍しい……で、誰を?」


 『怪盗』は、笑みを浮かべて、こう言った。


「──魔女さ……。魔女。かつての大魔術師、その心を」


 その声に、二人の男女が笑った。一人はきひきひと。一人はため息をつきながら。


 魔女を狙って、街が混沌に霧がかる。

 章初めのポエム、趣味なので入れさせて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ