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俺にファンタジー世界は早すぎたみたいだ  作者: ノエル・L・ファント
一話 夜の始まり→ファンタジーの続き
12/84

11 決着の刻

「『穿て【閃光】』! 2本撃ちだぁ!!」


 2つ現れる魔方陣。俺が両手を召喚獣に向け、手のひらから【閃光】が放たれる。


「うぉぉッ!!」


 その2つの光の内側を、アストが走る。そしてそのまま!


「ガギャッッ!!!」


「せいっ!! ユノ!」


「はっ……はい! 『天に座する我らが神よ 困難に立ち向かう勇者に 勝利を目指す力を 大敵を打破する力を与えよ 【マナリース】』!」


 ユノちゃんの声。勇気が湧いてくる、気がする。──いや勇気が爆発してもうバンバンだ!


 耐える、好機が来るまで耐えるんだ!


「アスト先輩! エル先輩! 『補強魔法』です!」


 ユノちゃんは全てを賭けるように、僕たちに『勝利のカギ』を与えている。こたえなきゃ!!


「……【閃光】』! 『穿て【閃光】』!」


 召喚獣が影に隠れそうになった瞬間、牽制として【閃光】を放つ。


「サンキュ! ……サンキューだぜ、エルッ!!」


 召喚獣に剣で斬りまくり、攻撃も受けるアスト。影に隠れそうになったときに【閃光】を放つ俺。そして、


「『回復魔法』! いきます!」


 回復を絶やさないユノちゃん。


 陣形を崩さず、時間を待つ。


「悪い! 召喚獣に隠れられた!」


「警戒! エルはユノから離れるな!」


「わわわっ!!」


 ユノちゃんを守るように引きとめる。


 俺は召喚獣の気配を感じた、すぐ近くに。……、穿つ!

「……そこか! 『穿て、【閃光】』ッ!!」


「エル先輩、後ろです!」


「んなっ!? がッ!!」


 召喚獣のツメをもろに喰らい、倒れ込む。


「んっ……くーっ! ハァッ……!」


 体勢を立て直そうとするが、立てない。俺は、召喚獣を睨む。


「ガヴルルルル……、ガギヴガッ!!!」



 アストとユノちゃんが、俺の前に立つ。


「準備だ。エル、ユノ」


「大丈夫です! 私が肩を貸しますから!」


「ありがとう、二人とも」


 もう少し、……もう少しだ!


「へぇ、やるか? ────そこだ!」


 アストが剣を振る。まるで召喚獣の来る方向を予測するように。


「エル! こいつ、見てから反応できる……ッぞ!」


 またもヒット。でもなぁ、


「そんなことできんのはアストだけだろ」


 つい口に出す。思い出したわ、こいつアジリード家の男だった、血も環境も戦いに特化してる家だ、それぐらいする。


    ☆


 そして、(とき)は来た。対峙する三人と一匹。アストが前に立ち、立つのもままならない俺がユノちゃんに体重を預けている。


 始まりの合図である、アストの詠唱が始まる。


「いくぜエル、ユノ。そして召喚獣! 『起きよ旋風(つむじかぜ) 一陣の風となって吹き荒れろ──!』」


「ゴガャーッ!!!!」


 召喚獣はアストにダイブをして、殺しにかかる。


 だけどアストは笑っていた。


「ふふ……。そりゃ1番の『悪手(あくしゅ)』だぜ、召喚獣! ふーっ………【アガラ】ーッ!!!!」


 だけどアストが放った【アガラ】は召喚獣に当たらずに、カーテンを揺らす。


 祭りの喧騒と、星明かりだけが召喚獣を照らす。その程度の光では、召喚獣を無力化させることはできない。


 だから、だから!


 ドカーンッ!!!! バチバチバチンッ!


「ヴギガガッーッ!!!」


 『花火』。俺らが求めた、お祭りの定番、風物詩。そのもの凄い光量に、頼った。


 そして、ふたりで。俺は最後の力を振り絞って。


「いくよ、ッ……! ユノ、ちゃん!」


「はい! 先輩!」



 ありったけの力で、思いで、撃ち放つ。


「「『穿て、【閃光】』!!」」


「ヴガッ────────ッ!!」


 閃光、直撃。

 二人の、いや三人の魔法を受けて、召喚獣は──。


「消えた……?」


 いや、はっきり言うと、そこにあった気配全てが消えた。


「ににに、逃げられちゃったんですか!?」


 ユノちゃんが慌てているが、違うだろう。


「倒した……んだと思う。たぶん」


 止まない花火、終わらない緊張感。俺は思いきって、召喚獣が最後にいた場所まで歩く。ギリギリで。


「これ……、! 倒したってこと、だよな?」


 光を吸わないほどの漆黒の宝石があった。爪よりは大きいけど、握るには小さいくらいの大きさの宝石だった。


「……そうか! 倒したのか! 俺達が!」


「ややややりました! やりましたよ!」


 ……遭遇してから三日、長かった。倒したんだ、俺達は。

「やった……やったぞー!」


 うれしさと共に、どっと疲労が体に表れる。


「げぶふぅ!?」


「エル先輩!?」

「エル!」


 自分の力じゃ歩けない。


「俺がおぶるから……よいしょ!」


「ありがと、それじゃあ」


 誰かの声、つまり俺達三人以外の声。


「そこに、誰か居るのかい!?」


 マズい、先生だ!


「ジャーンプ!!」


「うぉぉぉ!?!?」


「わぁー!?!」


 ()()()()()ガラスから飛び降りる。今度はちゃんと、アストとユノちゃんの【跳躍陣】で事故を回避した。


「割っ……割れてる! 他の先生を呼ばなければ!」


 上でそんな声が聞こえた。あれ? 俺たちバレてないよね?


    ☆


 学校の、敷地の外。俺達はベンチに座っていた。


「それじゃ……帰るか」


「あああっ……ありがとうございました!」


 ユノちゃんが頭を下げる。


「おう! 俺達も楽しかったぜ!」


「大丈夫、だけど……」



 俺は思いきってアストに言う。

「アスト! 楽しかっただぁ? 痛えよ! 今俺の身体の全部が痛ぇよ!! 骨とか折れたんじゃねーの!?」


「はっ、別にいいじゃねーか。お前も楽しかっただろ?」


「そんなことねぇ! まぁ……少しはそうだけど、いやいやいや! こっちは動けなくなるまでになってんだぞ! 窓ガラスも割っちゃったし! 請求されたらアストにツケてやる!」


「なにをー! エルがやったことだろー。自分でけり付けろやー!」


()()()()、じゃろがー!」


「ふふっ、ははは! あははは!!」


 ユノちゃんがお腹を抱えて笑う。


「何か面白かったか?」


「いっ、いえ……!」


 ユノちゃんは泣き笑いの顔で、


「とっても不思議な人たちだな……って!」


 本格的な花火が打ちあがる。それはまるで、召喚獣に勝った俺達を、祝福しているような……。



 花火の音に紛れて、何人かの人が近づいてきた。


「あー! アジリード! お前……!!!!」


「やべ!? お祭りの人! 逃げるぞ! じゃあなー!」


「逃がすな!!」

「捕まえろ!!」


 たくさんの人がアストを追う。かわいそうに……!


 最終的にベンチに残ったのは、俺とユノちゃんの二人。

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