浸透圧
残酷とは、真実の伝え方にある。
残忍とは、伝え方を知り抜いて最悪を選ぶことにある。
漆黒の愛と純白の憎悪は、月がけして見せない背中のように、
青いタトゥに似た翼を持っている。
フラミンゴの燃える色に似たその目の中の情念は、
遠い星の光のように、幾億光年も旅をしなければならないだろう。
事実として、分からなかった事は、
現実的に起こらなかった事に等しい。
しかし、現実として起こった事は、
事実として知られなくても、それ自体は隠れて存在する。
雨の中で、心がもういいと言うまで見続ける情景は、
浸透圧を失った感情の抜け殻みたいな透明な過去になっていく。
壊れた、飛び出す絵本。
大がかりな仕掛けが、土色になって残る。
せめてもう少し雨がふれば、土色も洗い流せるだろうに。