6 くすりの作り方 そして村娘>初心者さん
「倉止め病の薬なら龍活草くらい必要か……」
「へ? クラドメ?」
なんで戸惑うのか……ってああ。
あくまで正式名称は「クライッシュ・ドメッシュナー病」だからか。
通名はゲーム内では出てこないからな。
だが、ステータスでの簡易表示での倉止め病の表示は「倉」だぞ。
ちなみに、毒だったら「毒」、麻痺だと「痺」、盲目だと「目」となるが、どう考えても倉止め病は、正式名称だけはかっこいいが、本来の意味はこの通称のほうだろう。
「となると、希少級の龍活草だけでなんとかなるわけじゃないだろうし」
「あ、他の調合材料はあるの。ランクは低いものだけどその分安かったし。でも他が安いものにした分どうしても薬草のレベルを高くしないと……ね」
その生産方法は……、やっぱり『ふりーわ』なのかここは?
『ふりーわ』では他のゲームにおける生産においても、材料のランクと言うか状態と言うか質と言うかそういうものは問われる。
むしろ最重要。
例えば、有名どころの体力回復でおなじみのポーションだが。
薬草と水で簡単お手軽なのだが、これが問題。
そこらへんの薬草と水で作っても出来るのだが……効果が低い。多分10%くらいの回復かな?
ましてや、これがしなびた薬草とか、お腹にやさしくない水なんてので作ろうとするなら……。
いや、できるのはできるんだよ?
ただ、ポーション(回復1%+毒)とかになるんだこれが!
誰だよこんなシステムにしたの!? と言いたいが、それだけに止まらないのが『ふりーわ』。
この上位であるハイポーションの作り方だと、薬草が上薬草にかわるのだが。
実は薬草でも作ることは可能なのだ!
ただし、薬草でもかなり品質がよくないといけない! という問題があるのだが。
つまり、『ふりーわ』では作成したいものが先にあり。
そのための材料は、1つに限らないというシステムなのだ。
上位互換下位互換なんでもござれ! という素晴らしすぎて「レシピ」とはただの参考でしかない、というのも『ふりーわ』だけにしかない。
さて、というわけでお気づきだろうか。
希少級の龍活草。ジャンルは薬草なのだ。
そして僕の道具袋には「神薬草」。伝説級の薬草だ。
「なら、ここに何故か神薬草がある」
「嘘っ? ちょっと本物? ……本物、ね。間違いなく」
ひったくられる様にとられた。レベル高い村娘さんだ。
少なくとも僕よりはレベルは高いはず。
『なんでも識別団』がなくても名前とかランクぐらいはわかるのだ。
そこからさらに深い知識をくれるのが識別団のすごいところだが。
そんなことはおいといて。これで僕はようやく目標を達成できる、かもしれない!
「取引しようじゃないか」
悪人の言い方かもしれないが、目的のためには手段を選んではいられない。
「……むむぅ。そりゃあ私だってエリンにも負けないと思うけど、でもいきなり体の関係って」
誰だよエリン。それ以上に誰が体を要求しているのか。
「何、僕ってどう見られてるんだろう? 普通に靴が欲しいだけなんだけど」
「くつ? くつって履く靴?」
「うん。それ。ってそれ以外って……」
「あ、え、っと。いやもしかして靴を舐めさせて奴隷みたいに、とか」
うん。実に恐ろしい村娘さんだ。
そういう方面のレベルはずば抜けて高いに違いない。
18歳以上お断り系とかも大好きなんだろうねきっと。
とりあえず慈愛の目だな。
心の距離を遠めにして、見守ることにしよう。そうしよう。
「コホン。そういえば自己紹介がまだだったね! 私はクリスレイン。この近くにあるレイン村の村長の娘よ! えーとオサム、でよかったわね? 初心者さん……でいいのよね?」
「ステータスに偽装は出来ないと思うけど。えーと、クリスレインさん?」
「クリスでいいわ、ちなみに私のステータスはこんな感じ」
名前:クリスレイン
職業:村長補佐見習い
レベル:50
ステータスの表示を見た途端、何て言えばいいんだろうか。目から汗が。
レベルの差が50って、初心者さん<村娘ってことかなあ。
職業は村長補佐見習いだけど、実際村娘だよね?
いやいや、ステータスの値だよね問題は! ほら村娘さんと、いくら初心者さんでもプレイヤーだよ?
プレイヤーのほうがある程度優遇されてると思うんだよ僕は!
「……よければ攻撃力とか見せてもらっても?」
「いいけど、あくまで私、村の魔法系ではかなり強いからびっくりするわよ?」
HP(体力):5050
MP(魔力):8000
攻撃力:180
守備力:220
魔力:400
精神力:500
敏捷力:545
僕のステータスの10倍は軽くあるね。
多分この森での要求されるステータスはこれくらいなのだろう。
魔法系云々ではなく、僕のステータスの低さにびっくりだよ。
やばい、僕のレベルとかステータスの低さ……、低すぎ?
いや、でもこの森ではなんともなかったし、偶然か?
あ、運か。
こんなところにでも発揮されるのか、運。
「あー、うん。クリス。びっくりした」
「……びっくりと言うよりも、この世の絶望を見たって感じの、そんな悲壮な顔しないでよ。まあ、オサムのレベルの低さからステータスも低いんだろうけど、よくこの森無傷で来れたわね」
もしかして、その武器のおかげかしら? と言われたが。
ズボンのベルトに引っ掛けてある、ひのきの棒を見る目が、怯えを見せている気がするのは、多分、見た目のせいだろう。
「言っておくけど、呪いの武器じゃないからね」
「え? そんな色で? 冗談でしょ? 呪い以外の何者でもないようながするけど」
伝説の勇者も、これを装備していたときは周りからそう思われてたんだと思う。
場合によっては、倒した魔物や、魔王たちからも。