1 死神の子供たち
八月十五日。
深夜零時。
月の光に照らされた二人の子供。
メノウとヒスイ。
それが彼らの名前だった。
時々聞こえてくる猫と思われる獣の鳴き声以外は、物音一つしない。
メノウとヒスイは、裏野ハイツを見上げた。
彼らは、まだ小学生くらいにしかみえない。暗い色の服を着て、どこか薄暗い雰囲気を持った少年と少女だった。夜の闇に溶けてしまいそうな、暗い気配に包まれていた。
二人の視線の先にある、二階建ての古ぼけたアパート。
住人はたしか……。
ヒスイは住人の数を、頭の中で数えた。
一〇一号室……一〇二号室……一〇三号室……。
八人。
全員で八人だ。
ヒスイは微笑むと身体ごと、隣のメノウへと向ける。ヒスイのスカートが、ふわりと揺れた。
「楽しみね」ヒスイはメノウに言う。
「そうだね」メノウは答えると、ヒスイの長い髪の毛を撫でた。ヒスイは気持ちよさそうに目を細める。まるで猫のようだと、その度にメノウは思う。
メノウとヒスイは二卵生双生児だった。姉のヒスイは、弟のメノウを誰よりも愛していた。二人はお互いを必要にしていた。
自分たちは二人で一人なのだと信じていた。
「じゃあ、行こうか」
メノウが言った。
「ええ、そうしましょ」
ヒスイは答えると、裏野ハイツへと足を踏み出した。
これから、このアパートで惨劇が起こるのだ。
そう考えると、二人は例えようのない昂揚感に包まれた。
「対象をきちんと殺せるかなあ」
ヒスイが少し心配そうに言った。
「大丈夫だよ。殺すのは簡単だもの」
メノウが答える。




