呪珠つなぎ~神時代~
前回の場面から続きます。
どうして…何で…?」
「剛岩殿が…」
「どうなってんだよ、おい!」
せっかく救った命一つが奪われた事実を周囲、とりわけ礼紗や功妙寺の若者たちは受け止められない。その戸惑いに応えるのは、ぞっとするほど底冷えした声。
「殺されて当然だったんだよ…そいつは」
「アンタ以外は全員、殺してでも止めるつもりだったでしょ?それなのに余計なことしてくれちゃって…」
「人を呪わば穴二つ。警戒すべきは自分じゃなくて、他人からの呪いだったなァ?」
「そいつは、自分の寺をのし上げるなんて理由で、神使さんを呪い殺した。だったら、なぜ私たちが殺してはいけないっていうの?私たちが呪い返さなきゃ、神使さんが浮かばれない!」
剛岩を仇敵と見ていた、仙術振興会。剛岩が力を失い、動きの封じられた肉体に戻った瞬間、狙い撃ちにしたのだ。礼紗によって、呪いを捨てたことなどお構いなしに。
「あの人は、やり直せるはずだったのに…」
礼紗は剛岩の死体を見て、悲しみに暮れる。一方の瑞文は、仙術振興会の見せた力、冷酷な態度に、ある予感を抱く。
「不可抗力の戦闘と、無抵抗の相手を殺したアンタたちと一緒にしないでもらえる。アンタたちは、もうあたしたちの仲間じゃない。怪異の手先になっているんでしょう?」
「ああ、そうさ。呪祖様が、俺たちにチャンスをくれたんだ」
「剛岩は説得されて抵抗をやめ、殺されずに済んでしまうって教えてくれたのよ」
「案の定、俺たちのリーダーを殺した奴だけ生き残ったってわけだ!」
「文句あるならかかってきなさいよ。こんな組織、潰してやってもいいんだから」
仙術振興会は、裁人を殺した剛岩への恨みに付け込まれ、呪祖に取り込まれてしまっている。
「何と愚かな…」
裁人は首を振るが、その声は未熟で霊感の薄い弟子の彼らには届かない。しかし、呪われたのは彼らだけではない。
「どうして殺した…!」
「剛岩殿は殺されなくても償えたはず…!」
「呪い殺したお前らから死ね…!」
剛岩の死に衝撃を受けていて功妙寺の若者たちが、剛岩と同じく炎の“気”を纏い、怨嗟の唸り声をあげている。剛岩を殺された彼らの悲しみにも、呪祖は入り込んだのだ。
「気炎弾!」
「呪い風!」
爆発性の高い気弾が、火ぶくれの呪いを纏った温風が、周囲を巻き込んで吹き荒れる。呪いの力でブーストされているのか、彼らの師である剛岩や裁人に匹敵する威力を発揮している。
「一旦、全員退避!体勢を立て直すわよ!ほら、礼紗も早くしなさい!」
「でも、このままじゃ、また!」
「助けたいのは山々でしょうが、今度は複数が相手。西廟様が先ほど使った手でも、間に合いません!」
呪いに憑かれた者たちが争っているうちに、一旦屋敷に逃げ込む。とはいえ、あれだけの破壊力を持った相手に、屋敷に立てこもる意味はない。屋敷に戻ったのは、その力を借りるため。
「全員配置について。今度の相手は、一人一人のレベルは、剛岩の生霊よりも弱い。あの技で封じ込めるわよ」
瑞文の指示を聞いた霊能力者たちが散らばり、中庭を取り囲むように位置につく。
「どういった方法をとるおつもりで?私の弟子にあまり手荒なことは…」
「呪いの力を消耗するまで動きを封じるのよ。霊閥に集まった様々な霊能力。それを屋敷を媒体にして増幅し、屋敷全体を結界にする」
「そのようなことが可能なのですか?」
「この屋敷は、私のご先祖様が頂遠山を領土として守る代わりに、その御神木で建てた頂遠山のお社みたいな場所。だからここには、頂遠山の神様が宿っている。私はそう聞いてる。その神様からね」
「西廟様がそれほど仰るとは…では私の弟子を、お頼み申し上げますよ」
霊能力者が神木の屋敷に触れ、それぞれの宗派の術式を執り行い、霊山がそれをひとまとめにする。聖霊、御仏、唯一神への祈り、あるいは霊能力、魔術、護符などの技術が折衷し、一つの意思を具現化する。
「宗派協賛・多重結界!!!」
これにより、霊峰の御神木で立てられた屋敷は、内外に怪異を通さない堅牢となる。この結界の中では、呪いの力も弱まり、仙術振興会や功妙寺も動きを封じられる。
「よし!これで神使君の仙術振興会も、剛岩さんの功妙寺もみんな…」
「カッカッカ、無駄なあがきよ。汝らは既に壺中の虫けら」
「その声は…また呪祖!どこ、どこにいるの?」
「我は呪う者の心にいるのだ。だが、良かろう。汝らにとっての現実、我にとっての箱庭、この度はそこに現れん」
抜きんでた霊感を持つ礼紗以外にも、その声が響き、姿が見え始める。
蝋で出来た頭部に黒い藁人形の体、血塗られた長襦袢を纏った異形の神。蝋燭頭の頭部は二本角のような炎で溶け崩れかけ、顔に当たる前面には、落ちくぼんだ暗い眼窩と、裂けた口のような切れ込みが。そして黒い藁を束ねた手足を長襦袢の中から、うねうねとくねらせている。
「何!?このキモい……タコ人形は?」
「まさか呪いをもたらした怪異の正体…」
「あなたが、人をそそのかしてこんなひどい目に…!」
異形の黒幕に、礼紗もこれまでの怒りをぶつける。誰の目にも明らかにわかる。これは相いれる余地のない邪悪なる怪異。
「我は汝らが“異教の神々”と呼ぶ高次元存在、呪祖である。狭き世界しか知らぬ者どもよ。我は汝らに進化の余地を与えた」
「進化?呪いによる潰し合いじゃない!」
「どうして呪いなんてことを!」
瑞文と礼紗が猛抗議するも、呪祖は意に介した様子がない。
「汝らは蠱毒という呪術を知っておろう」
蠱毒とは、壺にムカデ、ゲジ、蛇、カエルなどの百種類の毒虫を閉じ込めて、その中で食い合わせる。それによって生き残った最も生命力の高い毒虫を呪術の生贄とする、古来からの呪術。
瑞文はその呪術の手順と、この閉ざされた屋敷が符合していることに気づく。
「蠱毒…まさか、その手の専門家である私たちを、生贄にするというんじゃないでしょうね?」
「如何にも。我にとっては、汝らも毒虫に違いない。汝らはここから出ることも、殺戮をとめることもかなわぬ」
「でも結界が張られている今、呪われた人たちは動けない。そしてあらゆる怪異もこの屋敷からは逃げられないはず!」
「自信ありか?霊媒よ。我はこの結界の弱点も知っている。奴らより攻撃能力の高い剛岩相手に、結界が使えなかった理由はこれであろう」
呪祖が頭の炎を大きく揺らめかせると、屋敷が突然発火し始める。
「しまった、屋敷に火を!」
「燃えよ、燃えよ!霊験あらたかな屋敷とやらも、所詮は木々の端くれ。屋敷を壊せば、呪いを阻む結界も消え去る!」
「そんな、私の屋敷が!」
「それ以上はさせません。神風!」
裁人が風で炎を吹き消そうとするも、炎は風で揺らめき、形を変えたかと思うと、更に大きく燃え上がる。
「これは、普通の炎ではありませんね?」
「我の炎は、人の業を吸って勢いを増すのだ。汝も差し出せ、非業の死に対する恨みを」
呪祖の手足を構成する黒い藁が伸び、裁人の亡霊を絡め取り、覆い尽くす。その黒い藁が獲物を飲み込むかのように蠢く。しかも、その藁は屋敷中に伸び、洪水のように人間を絡め取り、飲み込んでいく。
「神使君!来給へ、我が家に宿る番犬、守護霊召喚!」
礼紗が西廟家に代々使える、犬たちの霊を呼び出す。犬の霊たちは、大量のわらに食いつき、引きはがす。数十頭がかりで藁を引きはがすも、その後には、裁人の亡霊の姿はなかった。
「私、またなの…」
「カッカッカ、我は見てのとおり、呪われし者は、霊であろうと食って力に変える。壱功も、剛岩も、我の贄となった。どうだ、我を憎むか?憎ければ、汝も呪うがいい」
「私は━」
「あまり調子に乗るんじゃないわよ、クズ虫が」
礼紗が何か言う前に、瑞文が切れ長の目を氷点下に凍てつかせ、切れる。
「言うに事欠いて、我を蟲呼ばわりか?汝ら人間こそ、狭き世界で這い回り、食い合うあさましき虫けらよ」
「その狭き世界に降りてこなければ、儀式が破たんしていたでしょう?この世界にいるってことは、神だろうとも狭き世界を這いずりまわってるのと同じなのよ。その狭き世界で、呪祖とやらは、あたしたちが倒す。そうなれば、虫けらに倒されたクズ虫ってことになるのよ!」
異教の神々に挑戦状をたたきつけるように、瑞文は勢いよく啖呵を切る。人間を閉じ込めて蠱毒扱いしておきながら、直接介入してくる呪祖は、呪術者としては半端者だというのだ。
「汝、我を倒せると嘯くつもりか?」
「あの、書記ちゃん。勝算もないのに、それって言いすぎじゃ…」
軽くビビった様子で瑞文に話しかける礼紗。しかし、瑞文はそんな不安を吹っ飛ばすような剣幕だ。
「あなたの分まであたしが怒ってるのよ。あなたが呪祖に乗せられちゃ、いつも通りに集中できないでしょ?でも、あたしなら心配しないで。呪いなんて関係なしに、あのクズ虫を捻り潰すから」
「そ、そう…ありがとう」
ドン引きしながらも、何かよく分からない説得力に、納得せざるを得ない礼紗。確かに、瑞文は怖いくらいに怒っていても、呪いとかには頼らないタイプだ。
「蠱毒を生き延びるため、呪いは必要としないか。ならば、死ね!」
呪祖が真っ先に瑞文を殺そうと、藁を差し向ける。しかし、その動きが途中で静止した。
「これは…」
屋敷中に伸ばした藁が何十枚もの護符によって帯封され、それらが大渋滞を起こし、自由に動かせないでいる。
「それだけ体長を伸ばしたら、護符を貼っておく死角も十分。例によって、“頂遠山”の重しがかかってるから、とても動かせないわよ」
「すごい、書記ちゃん!そんな仕掛けをしておいたなんて!」
「自信の源はこの仕掛けによるものか。だが、我には呪いの業火がある」
「その護符にはどれも油がたっぷりしみこませてあるから、自分を燃やしたければどうぞ?」
動きを封じた上に、発火能力を使っても自爆。周囲も火が回っているため、動かずとも自爆。自分の業火を浴びせられれば、呪祖と言えど、ただでは済むまい。
「調子に乗って煽ってる間に、もう勝負はついてたのよ」
「カッカッカ……カーッカッカ!!我にこんな小細工など、通用せぬ」
呪祖の体が蠢き、藁の間に隙間が開く。さらに呪祖の体が波打ち、ぴったりと貼り付いていた護符も巻き込まれて、折れ曲がり始める。皺だらけになって護符は粘着力を失い、藁の隙間を滑り落ち、全て床に剥がれ落ちる。
「こいつ…!あの護符を破るなんて!」
「カッカッカ、この世のものによる攻撃など我には通じない。汝らの同胞も、刀や錫杖などで我の体を攻撃してきたが、結果は同じこと」
そう、全ての物理攻撃を自在に受け流されては、他の霊能力者たちも歯が立たない。
「刀が奴をすり抜けてしまう…!」
「錫杖で打ち据えても手ごたえがない!」
礼紗のような霊に任せた攻撃でも、増殖し続ける呪祖の質量には対抗できず、食われてしまう。
「まずい、呼び出した守護霊が全て食われた…。もう…」
そして一方的に霊能力者たちをなぎ倒していく。
「結界を維持する者も、力を集約する屋敷も、既に消耗させた。奴らの拘束も解けてきた」
中庭では、再び呪いの力に憑かれた者たちが、動きを取り戻している。さらに、屋敷は火の手が大きくなり、通気性のいい家屋であっても煙が立ち込めている。礼紗と瑞文も、煙に巻かれて呼吸が苦しくなる。
「さあ、この呪わしき場を生き残るために呪うがいい。人は願いではなく、最後には呪いに縋る、それを成就する神として我は存在する」
「ケホッ、ケホッ!そんなの…違う!」
「何が違うものか、霊媒よ。呪いの力を欲し、仇を道連れとしたい邪念。それが我を呪いの神として目覚めさせたのだ。そのような邪念に満ちた世界など、いくらも存在する。汝ならば、その無念の声は聞こえているだろう」
呪いを内包する宗教は数あるが、真に呪いを求める者たちは、呪いへの畏敬やしきたりなどを嫌う。彼らが望むのは、恨み重なる相手に鉄槌を下す絶対的で暴力的な存在のみ。祈りさえ忘れて呪いの存在だけを望む歪んだ願いが、祈りも戒律も持たない呪いを下すだけの神・呪祖の存在を確たるものにしたのだ。
「違うよ…。私は数えきれないほど、霊の声を聴いてきた。死んだから、誰かを道連れにしたいって霊もいる。でも、それよりも、生きたいって、無念の声が多かった。生きてできることがある、だから、他の誰かには長生きしてほしい…それがきっと人間だって、私はそう思ってる!」
「ゴホン、礼紗の、言うとおりね。殺したい相手もいれば、生きてほしい相手もいるのが人間よ」
人間の本質を信じる礼紗に、何かが降りてくる。
━よくぞ言った、西廟の娘よ━
「この声…?」
━お前は我々の教徒ではないが、我々の声を教徒たちに伝えてくれた。今もその教徒たちがこの屋敷で戦っている。我々はお前たちを救いたい━
「あなたはもしかして…聖霊?」
━そうだ、我々は最後の審判まで、手を下さぬはずだった。しかし、お前に力を貸すことはできる。我々の力、受け入れるか?━
「ええ、ありがたく。聖霊、憑依!地に清めの氾濫を!」
優れた霊能力者は不動尊などの神仏を自らの身に降ろして戦うとされるが、まさに礼紗には名だたる神仏と通じ合う術と器を備えていた。神が地上に遣わしたメシアであるかのように、彼女は神と通じ合う時に、その力を借りることができる。
礼紗の見せた隣人愛に応え、聖霊が降霊した。聖霊が憑依した礼紗が立ち上がり、両掌を掲げると、空が雨雲に覆われ、雨が降り始める。その雨は呪いの業火を打消し、煙で濁った空気を清浄に入れ替える。
「我の炎が消えた?邪魔な雨を…」
それだけではなく、再び放たれた気炎弾や呪い風も、風に清められ、立ち消える。中庭の仙術振興会や、功妙寺も、憑き物が落ちたように呪いの力を失い、瘴気を取り戻したかと思うと、眠るように倒れる。
「この雨…以前教会の神父に見せられた聖水と同じ効果があるのかも。これならあのクズ虫にも…」
「我が雨ごときに負けるなど…汝から焼き尽くしてくれる!」
呪祖は礼紗に火を放つが、吹き込んだ風雨がその炎をかき消す。さらに風雨が呪祖にも浴びせられ、藁と蝋の体を湿らせる。水気を含んだことで、その動きは緩慢になり、柔軟性も低くなっている。
「小癪な、なれば絞め潰す!」
呪祖が黒い藁を伸ばし、屋敷ごと全てを飲み込み、絡め取ろうとする。
「異教の神よ、この世ならざる魂を我に預け給へ。神霊、憑依!」
礼紗は呪祖の暴虐をとめるために、その魂を強制的に憑依させる。呪祖が他人の意識に入り込める精神的存在であるからこそ、可能な荒業だ。
呪祖はかりそめの実体を失い、礼紗の精神世界に引き込まれる。
「汝の心に我を捕えてどうする。我が汝を呪いの手先とすれば、すぐにでもここから…」
「呪いなんて、私が終わらせる。ここであなたを浄霊してね」
礼紗は屋敷から縁側に出て、雨を降らせる聖霊に祈る。すると雨は収束し、礼紗の頭上へ集中的に降り注ぐ。
「この身震いするような寒気は…汝、自ら聖水の雨に当たり、内にいる我を清めるつもりかァ!」
礼紗が聖霊の集中豪雨を身一つで受け止めることで、その内にいる呪祖も清められ、呪いの力を失っていく。黒い藁の四肢は重く垂れさがり、水を吸った赤い長襦袢は引きずられ、蝋の頭は冷えて固まり、頭部の炎も消えかけている。
「そう、もう呪いなんて必要ない。あなたも、呪いの力に執着しなければ、きっと別の存在に輪廻できるはず。だから…」
呪いで力を得る呪祖を浄化し、他の霊と変わりなく輪廻転生へと送り出そうとする礼紗。
「強大なる我に力を捨てろなどと…思い上がるな虫けらが!汝も道連れだ。汝の死を残された者どもの呪いの種としてくれる…!」
呪祖は黒い藁の手足を四方八方に伸ばし、同時に自らの体を燃え上がらせ、巨大な火種に還る。しかし、既に湿気た藁の体を燃やしているために、炎以上に黒煙が満ちる。
「ケホッ、させない…それなら、私はなおさら死ねない!」
精神世界に満ちる呪祖の炎と黒煙を、耐えきろうとする礼紗。呪祖の捨て身の抵抗により、双方の限界が近づいてきていた。
突如、その精神世界を雷が両断する。礼紗はその光に目がくらんで意識が途絶え、倒れる。一瞬後に目を開くと、彼女の内に呪祖はいなかった。
「今のは一体…呪祖はどこに?」
そこに聞こえる落ち着き払った声。
「人間は無茶をしようと興奮すれば、アドレナリンが分泌されて感覚は鈍ります。そのために、実際は手遅れになっても気づかないこともあります。今のあなたの容体は本当に危険でした、西廟様」
呪祖に一呑みにされたと思った裁人の姿がそこにあった。
「じゃ、さっきの雷は…神使君!無事だったの?心配させないでよ…」
またしても泣き崩れる礼紗。
(ああ、人の死って慣れないな、再開の感激にも、涙が我慢できない)
そんな礼紗の隣に裁人は座り、目線を合わせて慰める。
「心配したのは私の方ですよ。相打ちになど成らなくてよかった。…どちらもここで消えられては、私の手落ちとなります故」
「えっ、どちらもって…」
何か聞き間違えたに違いない。だって、「どちらも」では、裁人が呪祖の心配までしていたような…。
「礼紗から離れなさい!神使君、あなた…死んだはずじゃなかったの?なぜ、今はあたしにも見えているのかしら?」
瑞文が疑いの目を裁人に向けている。裁人は亡霊であり、本来なら霊感ゼロの瑞文には、どこにいるかもわからないはず。つまり、今の裁人は肉体持つ生者として存在するということだ。そういえば、亡霊の状態と装いも違い、純白の詰襟に鳳凰の金刺繍があしらわれた、謙虚な彼らしくない豪奢な衣装になっている。
「ただ今よりご説明申し上げますが、西廟様から離れることはできかねます。この方は私にとって素晴らしい可能性を見せてくださいました。それ故、手荒な真似を加えるつもりもないので、悪しからず」
「それで納得すると思うかしら?あなたと言えど、今は怪異の可能性が高いのよ」
瑞文の後ろに、まだ動ける霊能力者たちが集まって、いつでも攻撃を仕掛けられるように身構える。
「奇跡の復活だというのに歓迎されませんね。もしや気づいておられましたか?私が呪祖様の配下であると」
「そんな!呪祖の被害にあってる神使君が、呪祖とつながってるわけ…」
「呪祖と組んで偽装工作してたとしたら、つじつまが合うのよね。幽霊になってたのも、実は呪祖の力で生霊になっただけで、肉体は無事。だからこうしてピンピンしてるでしょ?」
「肖様も聡明なお方で、説明の手間が省けますね。いつからお気づきに?」
「呪祖がこの屋敷に、勝手に踏み込めた段階でおかしいとは思っていたわ。怪異がこの屋敷に入り込むには、それこそ誰かの手引きがいる。剛岩は動きが派手すぎて囮臭いし…愛愛を提案してあいつに赤っ恥をかかせるようにさりげなく誘導した、アンタが怪しいんじゃないかって睨んだのよ」
呪祖は呪いを望む者の心に入り込める特性を持っていたが、呪うかどうかで心が揺れていた剛岩では、足がかりとしては弱いだろうし、確実に手先にできるわけでもない。呪祖は他に配下を忍ばせ、チャンスを探らせていたのだ。
「ねえ、神使君…あなたはそんな人じゃないよね?」
礼紗は震え声で尋ねるも、裁人は瑞文の推理を歓迎するかのように拍手する。
「お見事、大筋はその通りです。剛岩さんを囮とするために、長老たちに寺の譲渡を唆し、その後に長老たちの裏切りをリークして、この場を作り上げました。ですが、詳しい経過などを私の方から捕捉させていただきましょう。まずは決定的な証拠で納得していただければ、と」
裁人は自分の袖の下から、黒い藁人形を取り出す。その藁人形に息づく邪悪な気配、呪祖のものだ。
「西廟様が起こした神の軌跡にも等しい力で、呪祖様も消えるのではないかと危惧していましたが…雷のショックで西廟様の意識を一瞬だけ飛ばし、分離した呪祖様の精神をこちらに緊急避難させました。私の呪いの念が、呪祖様を引き留めたということです」
「呪い…そいつと同様、邪魔なあたしたちへの逆恨みってところかしら?」
「いいえ、私が呪うは有象無象が跋扈するこの世界。それを創り直すために、私は異教の神々に下ったのです。異教の神々を目覚めさせ、新たな髪の時代、“神時代“をもたらすために」
裁人は呪いの人形を恭しく掲げながら、クツクツと笑った。今までのさわやかさと打って変わって、狂気が陰にこもったような不気味な忍び笑いだ。
「神使君…私達、仲間じゃなかったの?どれなら、世界を呪うなんてことは、しないはずだよね、ねえ!」
礼紗は必死に呼びかけるも、裁人の返答は彼女の希望を打ちのめすものだった。
「ええ、西廟様は私が会った中でも、才気と高尚な人格に優れておられます。…だからこそ、あなたのように力のある人間が埋もれなくてはならない、そんな世界こそ呪わしいとは思いませんか?」
「何言ってるの…わからないよ…」
「西廟様、例えばあなたは霊に聞いた正しい歴史を人に伝えても、それに納得せず争いが起きたことを憂いていらっしゃった。混乱を恐れて、正しいはずのあなたは慎重な発言を要される。人間がより正しくあれば、あなたが悲しむ必要もなかったはずです。落ち度のないあなたに呪いを抱いた人間たちもそう。そんな人間は必要ございません」
礼紗を慮る物腰は、相談に乗ったあの夜と同じもの。霊媒として宗教の正しい歴史を告げた礼紗が正しく、周囲の無理解、それによって起こった宗教戦争が間違っているとする論旨。
裁人が礼紗を仲間とみていたのは真実だったが、彼は礼紗のように、全ての人々を救おうなどと考えていない。理想に沿う者を生かすため、それ以外を排除する、そのために、世界を改変しうる異教の神々に共鳴している。
「それならあなたが教えてきた仙術振興会、彼らはどうなのかしら?呪いに囚われた挙句に、あそこで気絶しているけど、見捨てる気?」
瑞文の言うとおり、最早裁人は弟子である仙術振興会を介抱しようとする素振りもない。
「私は彼らを含めて多くの人材を見繕ってきたのですが、私が教える仙術の高みまで来ないまま、勝手に慢心してしまう人ばかりでしてね。仙術の神髄はアンチエイジングなどではなく、不老不死なのですが、それには気づきもしない方ばかり」
仙人は不老不死という古くからの伝説があることは、その場の全員が思い当った。
「不老不死?あなたまさか、そんな…伝説にしかないような仙術を身に着けたっていうの?」
「仙人とは、神にも通じる力を得て、死を克服した者のこと。それ故に、体を潰されようと大自然の力を借りれば、再生することも可能なのです」
裁人は体ごと剛岩に潰された際、地中に自らの細胞を残した。そして地中で自らの体を再生させ、体が復活した今、生霊の状態から元の体へと舞い戻ったのだ。
「死んだふりもトリックではなく、自分の肉体を投げ打って演じてたってことね…」
「今回の計画のためならば、惜しくもありませんでしたよ?一度や二度の死など」
「なんで…死が惜しくないなんて言えるの!?見てるだけしかできなかった私は、こんなに悲しいっていうのに…」
裁人には死さえも計画の内だったそうだが、礼紗は痛ましい死にざまを思い出して、涙ながらに訴える。
「人々に遠慮して何もしなければ、残虐な者たちに世界は荒らされるのみ。それが世の歴史です。人の愚かさですべてが破滅する前に、止めなくてはなりません。私と、あなたの力で」
彼が言うのは、恐らく礼紗を自責の念に追いやった宗教戦争だけではない。侵略戦争、紛争、犯罪、差別etc…敵とみなすものを全て滅ぼさずにはいられず、そのためには周囲さえも巻き込む人類の好戦的な血塗られた歴史全てを、愚かな自滅と断じている。
「そのために異教の神々の力で、大部分をリセットするというの?それも今の世界の破滅にならないかしら?」
「愚かさによって何も生み出さぬ無計画な自滅よりは、愚かさを切り捨てる取捨選択の方が、世界にとっては有益というものです。愚か者は過ちを正すこともせず自滅するのは、御覧の通り。であれば、過ちに気づく者が生き残るしか、リセットの道はありません」
破滅を憂いているからこそ、脆さを持つ人間は滅ぼそうというのだろうか。裁人は改めて礼紗に語り始める。
「私は異教の神々の“神官”として認められる神通力を持っていますが、それは貴女にも言えます。貴女は異教の神々を取り込み、さらに他の神の力を十全に発揮して奇跡を起こすこともできるお方です。純粋で他者を受け入れようとするあなたの器量あってこその御力。貴女ならば、異教の神々を取り込み、更なる力を引き出す“巫女”にもなり得ます」
裁人は異教の神々を直接サポートする“神官”というポジションにいるらしいが、礼紗もそれと同等の待遇で引き込むつもりらしい。異教の神々をも受け入れる器量があるとして。
「神使君は、私を…そんな風に見ていたの?」
裁人は苦笑して首を振る。
「いえいえ、私は貴女を、対等の才と切実な理想を持つ同志として考えているのです。戦いの中で、その器を見極めたいと思っていたのですが……今ならば、貴女の想いに答えられます。礼紗様とならば、新世界を創っていける。そう、かけがえのない…パートナーです」
裁人はここに来て、礼紗の恋心に応え、告白の言葉を甘く囁く。しかし、それは同時に異教の神々の陣営への誘いでもある。
「…ずるいよ、神使君。ここで、告白だなんて……」
礼紗は悲しいような嬉しいような涙を流し、恥ずかしがっているような怒っているような赤面を見せた。
複雑な感情が入り混じる礼紗に対し、明確な敵意をあらわにしたのは瑞文。
「騙されないで!要するに気に入った礼紗だけいただいて、あたしたちには敵対するってことでいいのよね?」
瑞文が護符を構えると同時に、周囲の霊能力者も錫杖や刀などの武器を構える。
「戦闘態勢を取られれば、私も敵対せざるを得ないでしょうね。神雷!!」
裁人の発した雷が空の雨雲に届き、何条もの雷に増幅して降り注ぐ。その雷が武器を掲げた霊能力者たちに直撃する。
「ぎゃばばばば!」
「みんな!神使君、やめて!」
「…そうよ、礼紗は少なくともここにいる人間を傷つけるアンタの、仲間になんてならないわね…」
持っていたのが護符だったので、どうにか直撃をまぬかれた瑞文が、礼紗の抗議を援護する。
「…なるほど。まだ貴女には、自らの組織への愛着がおありのようです。ですが、これからの戦いでその気持ちが裏切られた時、またお迎えに上がりましょう。人の罪には、神の裁きを下そうではありませんか」
思わせぶりに言うと、裁人は空中を踏むように空を駆け上がり、あっという間に雨雲の彼方へと消え去った。中庭には、再び雨が降り注ぐ。
「あいつはもう去ったわ。ひとまず屋敷に戻りましょう?焼け焦げたけど、崩れてはいないようだから」
礼紗は黒髪が顔の輪郭にまとわりつき、かなり暗い表情に見える。小袖や紺袴も濡れて体の稜線に張り付き、胸元や腰回りの形状を浮き彫りにしていたが、それを恥じる気力もないらしい。
代わりに瑞文が礼紗に肩を貸して立たせ、連れて行く。瑞文も普段のチャイナドレスが体にぴったりしていたが、自分のことを気にする余裕はない。
「このまま雨に打たれてたら、風邪ひくでしょうに」
「私…寒くない……」
「我がまま言ってないで、さっさと風呂に入って、頭切り替えるのよ」
「でも、神使君が活きてたのに、またどこかに…うっ…グスッ、うっ…うううう…」
泣き崩れそうなところを支えられながら、屋敷に還る二人。他に倒れた者たちは、目の覚めた仙術振興会と巧妙寺の若者が、自主的に介抱し始める。無理して動き出す者たちに、涙雨は降り続ける。
どこかの誰も知らない古戦場。数千人の戦死者の呪いを鎮めるための石灯籠に、裁人は呪祖の人形を安置する。続いて、手中から取り出したのは、小さな内臓のような形状と、血のような赤色を持つ医師。その石を握ると、透明な水があふれ出し、呪祖の人形にかかり、その損傷を癒していく。
「これで消耗した力は回復したはずです、私がお役に立つと理解していただければ、次の計画もお任せください」
「汝は我から見れば、偶然壺の外に出て粋がる羽虫程度かと思っていたが…認めざるを得まい。次に霊閥を攻撃するときは…」
「次は暫しお待ちになった方がよろしいかと。呪祖様と言えど、力を蓄えなくては、目障りな敵から潰すのは難しいと思われます」
「我は今すぐにでも、あの霊媒を呪いに落としたいのだ」
「呪祖様は強大な存在故、これまでは敵知らずにございました。しかしながら、今は呪祖様自身に呪いの感情が芽生えた。それを糧にすれば、更なる力を手に復讐できるはずです」
「カッカッカ、それもよかろう。我が目覚めた以上、全ての呪いが自然と我に力をもたらしてくれる。汝はその間にどうするか?」
「私は次なる異教の神々の元へ。その覚醒を手助けに参ります」
(礼紗様も次元連続者、いずれまたお会いできるでしょう。そして、神官たる私が、貴女と異教の神々を橋渡し、今までにない異教の神を作り出してみせましょう)
「であれば、我が異次元への道を開こう。全ての世界を高次元に導くためにな…」
さびれた古戦場に呪祖を残し、裁人は新たな世界へ旅立つ。新たな異教の神の神官となるために。
礼紗は風呂から上がると、瑞文から治療を受けていた。風呂に入ってみると、礼紗の肌に、炎症のような火傷が多く残っているのが分かったのだ。これでは雨で寒い所ではない。
「こんな火傷を我慢して、剛岩や呪祖を憑依させてたっていうの?怖がりのくせに無茶し過ぎ」
礼紗の日に晒されていない白い肌に火傷が痛々しい。瑞文は火傷跡に、“火病祓”と書かれた護符を貼りつける。火傷の治癒だけでなく、火傷で熱した心を冷ます作用もあるらしい。
「戦いの中で分かったんだ。私はやっぱり…人を傷つけたくないって…。そのためなら、その苦しみを私が背負うこともしなくちゃならない。でも、神使君にはどうしたらいいか…」
「あいつは、礼紗を引き込もうとしてるのよ?こっちがスタンスをはっきりさせないと、思う壺よ」
礼紗の背中を押すように、手のひらで護符をペタッと貼りつける瑞文。
「そっか、それなら…私も神使君を霊閥側に引き込む。異教の神々から取り返す!」
「ちょっと、そんなことできる?あいつはこの世界の大半の人間を嫌ってるのよ?」
「でも、私のことは好きだって言ってた。あの人、寂しいんじゃないかって思う。だから私も孤独で寂しい仲間にしたい…そう思えないかな?」
「あなたが好きなのも、あいつに都合がいいからじゃないの?」
「でも、私に理解してくれるように求めていた。私の過去の話を、聞いてくれたみたいに」
礼紗は裁人が自分に共感、同情してくれた時の物憂げな表情は、嘘ではないと思っていた。仙術振興会や霊閥など多くの仲間を裏切った末に、仕えているのは人外の神。そして、真に仲間と認められる人間も少ない。
彼もまた、人間に対して距離を置いているんじゃないか、礼紗にはそれがさびしく見えた。
「それで、あなたにはあいつが救えるというの?」
「神使君から突き放されない限り、可能性はある…と思う。だって……私の方から、初恋を諦めたくないから」
礼紗は裁人への想いをかなえるため、あるいは裁人を想うからこそ、彼の心にアタックする気のようだ。“失いたくない”ではなく、“取り戻したい”という、彼女自身から出た決意を胸に。
「ふふっ、涙もろい子のくせに、言うようになったわね。その純粋さを逆手に取られなければいいけど」
瑞文は礼紗を後ろからぎゅっと抱きしめる。まだ頼りなくも見えるその背中を覆うかのように。
「ま、礼紗の背中は私が守ってあげるから、当たって砕けなさい」
「ありがと、書記ちゃん。書記ちゃんがデレてくれるなら、もう安心かな」
「誰がデレたですって?危なくて見てられないからよ」
「照れなくっていいのに~。この間、他の派閥からヘッドハンティングたけど断ったんでしょ?なんだかんだ言っても、書記ちゃんは私のこと…」
「ったく、わがままなのは、この着痩せボディだけにしなさい!こんなに生意気に育っちゃって…」
「あっ!書記ちゃん、ちょっと、そこ恥ずかしい…」
瑞文は礼紗の胸や腰回りの肉感を、触って確かめて見せる。礼紗はスレンダー高身長の瑞文にスタイルチェックされて、くすぐったがりながら身じろぎする。
「ま、男の目を集めるくらいにはスタイルいいから、自信持って。あの時だって、神使の奴も…」
「えっ、見られてた!?」
「袖で目元隠してたけど」
「ちょっ、からかわないでよ!」
「分からないわよ、実は隙間から覗いてたかも。男はそういう者よ」
よく気が利き、スラッとしたスタイルゆえに交際経験は豊富な瑞文だった。なお、性格のキツさから、長続きはしない。
しかし、今回ばかりは礼紗に発破をかけているようだ。
そこに、霊閥の次元連続者からのテレパシーが入る。呪祖を倒したばかりだというのに、何事か。
(何かしら?今取り込み中なんだけど。礼紗様は治療中だし…)
(ですが、取り急ぎお伝えしなくてはならない非常事態です!霊閥管理下の各次元で突然、呪いによる被害が多発しています!)
(呪いですって!いったいどういうこと?)
(各地で効果もなく形骸化していた非霊能力者による呪いの民間信仰、これらがなぜか効果を発揮し始めています!現地ではその対策に霊閥を総動員していますが、数が多すぎてとても間に合いません!)
呪いの儀式は一般にも良く知られているが、大多数の人は本気にしていないだろう。一般に流布している道具、儀式、場所などでは、とても本物の呪いなど再現できないからだ。別次元には、本式な悪魔の儀式を現代に再現した例も存在するが…あれも膨大な資料を精査する情報処理能力があった結果である。
つまりは玄人にしか扱える代物ではなく、そういう玄人は霊閥が監視している。素人には呪いの正道など知るべくもない。それが常識であったのに、素人の呪いが効果を示し始めるとはどういうことか。
(呪祖の仕業…それしか考えられない!奴はここを去る時はかなり弱っていたけど…人間を手先にするくらいはやってのけるはず!もう虫の息まで追いつめてるっていうのに…厄介なクズ虫ね!)
瑞文が思い出すは、呪祖の「呪いを求める心が、我を目覚めさせた」という言葉。呪われた魂を犠牲として集めるために、各地の呪いを本物に変えているのだろう。
(だとすると、呪いの民間信仰があるすべての次元で、呪いが現実化していることに…。このままでは、呪いの信奉者どころか、世間一般にも呪いが乱用され、大パニックに陥ります!どうしましょう!?)
(あたしたちがパニックになってどうするのよ。礼紗様なら、各次元を回って呪いを解呪できるはず。それまでの間は、“怪異が呪いをばらまいている”と公表して、絶対に“誰でも呪いがかけられるようになった”と漏洩しないように。いいわね?)
(りょ、了解しました…できれば早くしていただかないと、私など、“アマチュア”の呪い信奉者を何十人捕えたことか…。)
瑞文はテレパシーを打ち切ってから、考える。霊閥はまだ呪術へ対処するノウハウがあるが、他の次元連続者が管轄する世界には、対抗できる霊能力者など少ない。全ての派閥に警告はするが、情報の性質上、一般の人員を動員するのも困難だろう。各次元を管轄する次元連続者の計画的な対応が求められる。こちらも他の派閥に出張している余裕がない以上、どう対処するかは各々の判断にゆだねられる。
つくづく忌まわしい置き土産だ。
(ここを乗り越えるのが、異教の神々との最初の総力戦になるわね)
ふと静かになった礼紗の方を見やると、火傷の痛みも和らぎ、疲れが出たのか眠ってしまっている。瑞文がテレパシーに応えて会話を中断した辺りから、寝入ってしまったのかもしれない。瑞文は毛布を掛けながら、励ます。
(早速決意を見せてもらうわよ。これいじょうあなたの救いたい人に、罪を犯させないためにもね)
各次元で現実のものとなる“呪い”。呪祖の仕掛けた蠱毒から、次元連続者たちは抜け出せるのか。
今回で、5つの派閥の大体の紹介が終わりましたので、次回は各派閥が呪いに対抗する総決算。
第6次元で予言されたのがやっと回収。呪いの襲来、すなわち今まで呪いが有名無実化していた世界でも、本物になってしまったということです。
神使裁人は名前でばれていたかもしれませんが、異教の神々たちを補助しながら次元を渡る最強の副官と言った役割。礼紗のライバルに当たりますが、他の次元にもちょっかいを賭けてきます。最強のライバルは最強クラス。




