世界二大美女と不運と踊っちまった少女の話
ガールズラブとは言ってもそんな生々しくはないです!
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白百合学園。
超がつくお嬢様が数多く通う格式高い学園である。
そんな学園でも異彩を放つ次元の違うお嬢様が二人存在した。
お茶やお花、剣道に柔術、ひよこ鑑定士に一級土木施工管理技士、あらゆる技術を高いレベルで会得し、その容姿のあまりの綺麗さから世界は世界『三』大美女の時代を終わらせ、世界『二』大美女の時代へと突入させた。
ちらりとテレビの画面端に映ったために世界の半分の女性が百合に目覚め、もう半分の女性がレズに走ってしまった。これが少子化の直接的な原因であり、放送禁止映像に指定されてしまったのだ。それ程までに彼女たちは美しい。
生写真は一億のレートを超えることなどザラであり、二人を追う番記者が数千人規模で存在するという。もっともその数千人の番記者は全員、金のために彼女たちを追っている訳ではないのだ。
「分かったわ。その写真をくれるのなら世界の半分を上げるわ!」
少女が興奮したように声を荒げ、写真へと手を伸ばす。
写真には世界で一番美しい少女が机の上にヨダレを垂らして眠っている光景が写っていた。
もはやそれだけで国宝を超える世界の宝となることは確定的に明らかだろう。
写真を持つ少女が写真を取り上げ、勝ち誇る。
「は? 宇宙を丸ごと貰ってもこの写真は譲らないに決まってるでしょ?」
そんな事は分かっていた。
二人にとって宇宙よりも価値のある物がこの写真なのであった。
「でしょうね……。分かったわ。今ここでアンタを殺してでも奪い取る……!」
空気が押し潰されたような音を吐き出した。人間には到底到達できない速度で少女へと迫る。
アッパーを繰り出し、少女の顎を的確に狙う。瞬間、少女がハンターのように笑った。
「美優話があるって何ー?」
白百合学園の誰も来ないスポットナンバー・ワンの屋上に黄金の鐘の音のような綺麗な声が響く。
アッパーを咄嗟にキャンセル。グーからパーへと手の形を変え、少女の肩に手をかけた。
「美優って本当にいい人だよねー。(流石は腹黒美優さん、後で殺すから)」
今来た少女からは見えないように肩を思い切り抓る。
「優美だってそうじゃない。ね?(ポンコツに私が殺される訳ないじゃない? 面白い冗談だわ)」
優美も肩に手をやり思い切り抓る。と、集中力をそちらに注力しすぎてからか風に写真を攫われた。ふわりと浮いた写真。顔面蒼白の二人。写真に向かって思い切り跳んだ。空気を切り裂き速度を増す写真。地面に向かって顔面ダイブを決めた世界二大美女。写真が今さっき来た少女の手元に渡った。
そこにはふっつーの……否、むしろ普通以下の容姿をした少女が幸せそうに寝こけている写真があった。
少女がふっと笑って写真を縦に引き裂いた。
「あのさ……。二人とも私を盗撮するの止めてって言ったよね!?」
『世界の宝があああああああああああああああッッッ!!!!!???』
そう、これは世界二大美女の物語ではない。
世界二大美女の愛され過ぎて色々と困っている普通の女の子の物語である!
世界二大美女。
そこに居るだけで世界を書き換えてしまった恐るべき生物兵器である。
恐らく二人が本気を出せば世界を傾かせることすら可能であろうと風見通子は睨んでいる。
何せ大昔の中国には傾国の美女と呼ばれる存在が居たのだから。
通子は家から白百合学園まで通っている。何故なら寮は凄く値段が高いから……というのは建前。本音は世界二大美女に付け狙われており、貞操の危機を感じているからだ。
パシャリとシャッター音が切られた。
「また優美? 美優?」
キョロキョロと辺りを見渡すと一人の男が逃げ出していくのが見えた。
「ふう……」
通子は早速ケータイを取り出してグループ通話をかける。
『はい、もしもし! 通子!?』
「今男に写真撮られたんだけど」
通子が事実を告げた瞬間、ケータイ越しからでも分かるほど場が冷えきった。
「は? 誰それ……殺す」
優美が憎しみの篭った声を発した。白だ、と通子は判断する。
「……ゆ、許せないわねっ!?」
上擦った声を上げた美優。完璧黒だった。
「オッケー、分かった。犯人は美優ね? ……後でチョークスリーパーの刑だから」
通子は死刑を言い渡す裁判官のように重々しく言った。
「しょうがないわね……。その刑、受け入れるわ」
シュンとして言う美優に少し可哀想かなと思った瞬間、優美が叫んだ。
「え!? そんなのご褒美じゃない!?」
「な、何を言ってるのかしら!? ご褒美な訳ないじゃない! わ、私にとっては刑よ! ホント、あなたみたいな変態と比べないで欲しいわね!」
「はあ!? 昨日電話で通子とヤリたいこと百選っつって目隠し勉強プレイの次に――」
ブチリ。通話を切った。
何かもう狂っていた。ヤリたいこと百選って何だよ。目隠し勉強プレイって何だよ、もう概念からして意味分かんない。
「私は普通な優しい男の子と結婚して子どもを産んで生涯幸せに暮らしたいのに……」
通子は肌寒いものを感じながら歩いて行くと後から殺気を感じた。
後ろには超可愛い美少女が虚ろで危なげな目をして立っている。嫌な予感がした。
「今のお声は……美優様と優美様ではなくて? あのお二人の声なんて家を売り払って買ったこの音声データでしか聞いたことがないのに……。あなたみたいなブスが……。うふふふふふ……。そのケータイ……私に寄越しなさい!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」
通子は叫んで逃げ出した。
そう、彼女は世界二大美女から愛されているが故、可哀想なことに世界からは疎まれているのだった。
昼食時は戦争だ。
疾風迅雷を具現化したような二人の超絶美少女が学内を走り回る。
壁を走り、中空二段蹴りで相手を退け、風見通子が居る2-Cまで到達する。
「あの……わ、わた、私と……はあはあ……私とご飯でもどうかしら?」
と、美優。
「お弁当作ってきたわ! 私とどう?」
タワーのようなお弁当を突き出して言う優美。
「じゃあ皆で食べよ」
通子のセリフに二人はムッとしたようにお互いを見るが、特に反論はないのか口は開かない。通子が二人の元へ走る。
教室中に漂う「あんな普通な子がなぜ……!」という凄まじい嫉妬と殺意の感情に晒されている通子は二人の背を押して屋上へと上がるのだった。
タワー型弁当の中身はぐちゃぐちゃに倒壊していた。
「そんなお弁当を持って走るからよ」
ふふと勝ち誇ったように笑う美優。
「うっさいわね! アンタ、これが目的で攻撃を仕掛けてきたわね!?」
涙目で叫ぶ優美。
通子は苦笑いしながらぐちゃぐちゃのお弁当へ箸を入れた。
「うん。まあ味に支障はないから良いよ」
へらっと笑う通子を見て美優が鼻血を吹き出した。
「う……やっぱり天使だわ……!」
「アンタが鼻血出さないでよ!? 私に向けた笑顔よ! その記憶消し飛ばしてやる――!」
「……って、美味しい……」
卵焼きを食べた通子がふと感想を漏らした。
「お、美味しい!? そう? だったら毎日卵焼きを作ってあげるわよ?」
「毎日卵焼きはちょっと」
「そうよ。やっぱり毎日と言ったらお味噌汁よね。お味噌汁を毎日作らせて」
「プロポーズは男からしか受けないって決めてるから私」
美優の遠回りのプロポーズを即座に切って捨てる通子。
「はう……っ! その釣れない感じが更に燃えるのよね!」
「うんうん。初めて会った時からそうだったもんね。私達が女の子に囲まれて困ってる時に助けてくれて」
「それで「世界二大美女って大変だね。それじゃ」とか言ってすぐさま帰ろうとするんだもの! あの時からよねー。私の人生が輝き始めたのは」
「あー、分かるわー。私もあの頃は人生どうでも良かったもの。通子が私の人生を救ってくれたようなもんよ」
「じゃ、ごちそうさま。私帰るね」
「ちょっと待って!? 私達めちゃくちゃ良いこと言ってたじゃない! 普通帰る!?」
「二人って実は本当に仲良いよねー。それじゃあ」
そのまま本当に帰ってしまった通子。
二人は世界の終わりが確定したかのような表情を浮かべた。
「ね、ねえ……。私達、嫌われてるってこと……ないわよね?」
嫌われるという経験が一度もない優美はその仮定に今まで至る事がなかったが、今ここに至ってようやくその最悪な仮定を思い浮かべた。多分、嫌われたら死ぬ。比喩抜きで死ぬ。一〇〇の自殺方法が頭の中を駆け巡り、身体が完璧に消却される業炎の中での自殺が良いだろうと決め打ちした。
美優がふらっと立ち上がり、拳を握り締めて叫ぶ。
「そうよ。私達は今まで他人なんてカス以下の存在だと思っていたから感情の機微なんて考えたこともなかった。そう……人に好かれる為には本来、相手の立場に立って物を考えることが必要なのよ!」
ガーンと頭の中を思い切り叩かれたような衝撃を受ける優美。
「確かにそうだよね……。私達みたいな世界最高レベルの女に言い寄られて嫌な思いをする人なんて居ないわ。……私達と同レベルやそれ以上の人間を除いて、だけど……」
「そうよ……通子なんて世界ナンバーワンの魅力を持つ女の子からすれば私達なんてゴミ虫も同然なのよ……死にたい……」
「ああああああああああああああ! 死にたい! 私達が通子の重荷になってたなんて!」
「しかし、まだゴミ虫だと言われた訳じゃないわ。だから私は通子がどんな風に私達を思っているのか知るために私達が知らない通子を見るためにこの子達を使うことにしたわ。来なさい! くノ一!」
美優が手を掲げ、呼び出した瞬間、黒の装束に身を包んだ少女が屋上に降り立った。
「ハイ、お呼びでしょうか美優様!」
「ええ。貴方を育てた本来の目的を今、通達するわ」
「はっ。命に変えても目的を果たしてみせます」
くノ一が緊張したように言う。瞳には美優への忠義心と燃えるような恋心が同居していた。
「風見通子の監視よ!」
「それは一国を揺るがす大犯罪者などでしょうか?」
「……風見通子を知らないとかこのくノ一ダメじゃない?」
優美がふっと見下すように笑った。
「私が育てたくノ一よ? 知識面は確かに今ので酷いということが分かったけど、能力は本物よ! 何せこの任務の試金石として一国の秘密を暴いて壊滅させたのだから」
「ふん。ま、少しはやるようね。けど、アンタ、一つ忘れてるわよ」
優美が指先を立てて言った。その指先をくノ一に向ける。
「このくノ一、美優程度の女に魅了されるような人でしょ? 通子にかかったら一発よ!」
くノ一と美優が同時に驚愕に満ちた表情を浮かべた。
一人は世界二大美女以上に魅力的な女性が居るのかという衝撃で。
一人はそう言えばその通りだわ! という身近な事実を忘れていた衝撃で。
「そ、そんな人物がいらっしゃるのですか!?」
「ええ……。私達がアイドルレベルだとすると通子は天使……いえ、やはり私達がウンコで通子が天使……いえ、私達は物差しとしてすら使えないレベルよ」
悔しそうに、しかし、恍惚としたように通子を褒め称える美優。
「できれば写真か何かを見せて頂けませんでしょうか?」
「良いわよ」
胸元からすっと取り出す写真。
くノ一はそれを見て呆然とした。
「ええっと……何か間違ってませんか?」
美優と優美の二人は写真を見、お互いに顔を見、首を傾げる。
「何がかしら?」
「いえ……そのー、凄い、普通と言いますか……むしろちょっとブス――」
ドゴオン! くノ一が傅いていた地面が凄まじい轟音と共に割れた。
優美が地面を思い切り蹴り砕いたのだ。
くノ一が逃げようとした瞬間、目に見える程の速さで顎を万力のように掴み取った。
「ねえ、目、どうにかなってるんじゃないのコイツ。本当の美が分からない目なんて要らなくない? 道理で美優なんかに魅力を感じてる訳だわ」
「そうね。……けど通子の魅力は私達みたいな上辺だけの――写真で分かるような物だけではないわ。しかしまあそこを考慮しても……本当の美が分からない上に通子のことをブスとか言いやがった罪――償ってもらうわ」
「ひ……ひうっ」
二人の眼光にくノ一がガクガクと震え、泡を吹いて気絶した。
「あ、まだ何もやってないのに気絶した」
「……にしてもどうするべきかしら? 私達の知らない通子のことを知る方法、何かないの?」
優美は気絶したくノ一から手を離し、スマートフォンを取り出す。
「こういうのはやっぱり人間じゃなくてロボットの領分よ」
ホットラインをさっと繋げるとそこにはアメリカ合衆国の長が居る。
「あーもしもし? 私私、優美よ。自立型の敵情視察するロボット作ってくれない?」
「おお、優美様! 本当に懐かしいです。ロボットですか……。それは私にはちょっと難しいです」
なぜアメリカ合衆国の長が日本語を使っているのか?
それはとてもシンプルな答えだ。世界は彼女たちに惚れきっているからである。今、世界では『日本語公用語にしねえ!? 理由? そんなの彼女たちが使ってるってだけで何が不満だ!?』という運動が巻き起こっており、世界中の人々は日本語を猛烈に勉強し始め、日本語の識字率が劇的に高まっているのだ。
まあそんなこんなで日本語を使えるのだった!
俺が英文書くのが面倒だからじゃないよ!
「もしあと三日以内に作れたなら私と美優のツーショット写真を上げるわ」
「分かりました! お受けいたします!」
そんなこんなで二日後。
黒いアメンボを少し大きくしたような機械が届いた。
「じゃあ二人で写真撮るわよ」
「はいはい、分かったわよ。で、どんな風に撮れば良いのかしら?」
「二人で肩を組んでほっぺたくっつけた写真を撮って欲しいとか言ってきてるわね……」
二人して嫌そうな表情を浮かべる。
「まあしょうがないわね。通子のためよ。勢いで撮るわ!」
「お、おう! バッチコーイ! イエス!」
スクラムを組むように肩を組む二人。
そして、ミットにストレートを打つように頬を思い切りくっつける。
スマートフォンを掲げ、二人してニッコリ歪んだ笑みを浮かべた。まあ歪んだ笑みですら世界をぶっちぎってしまうレベルの笑顔なのだが。
カシャっ、という写真音に紛れてドアの開閉音がした。
「あ、やっぱり二人ともここ居たん……だ……?」
通子がビックリしたような表情を浮かべる。
それはそうだろう。いつもは通子のことで争っている二人が仲良く頬をくっつけあい、写真を撮っているのだから。
二人も唐突な通子の登場に固まっている。
やがて時が動き出し――
「じゃ、じゃあ私はお邪魔だったみたいだから……」
通子が校内へと入って行った。
「ご、誤解だわ!」「誤解よおおおおおおおおお!」
二人の絶叫が轟く。
そんなこんなで通子を監視し始めたのだった!
一六インチのテレビのような画面に食い入る二人。美少女でなければ到底見れない顔をしていた。
「ハアハアハア……、いつでも通子の顔が見れる幸せ!」
「ちょっと横顔も映しなさいよ!」
美少女が変態に成り下がっていたその頃、通子は学園から家に帰る途中だった。
「ふふふふふーん」
今流行の歌を口ずさみながら歩いて行く。
私が居るせいで二人の仲が悪くなってるだけで本来の二人は仲が良いのかもしれないな、と割れた窓ガラスから冷たい風が吹いているような微妙な寂しさが心の中でふっと生まれる。
「待ちなさい! 貴方、優美様と美優様と親しげに電話していたヤツですわね!?」
ふふふ、と笑う彼女の目はイっていた。
彼女たちの動画を手に入れる為にヤクザが壊滅したなんて言う話もあるくらい、彼女たちには魅力があるのだ。
そら彼女たちの電話番号が載っているケータイなんて命に変えても欲しい物だろう。
ギラリと光るナイフを懐から取り出すお嬢様。
「さあ、そのケータイを渡しなさい。それとも殺されてから差し出す方が良いかしら?」
通子は自分の不幸っぷりに思わず笑ってしまう。
「あっはっはー! ケータイ差し出すだけで命を守れるならすっごい渡したいんだけど……」
言いながらポケットにゆるゆると手を入れる。
「なら渡しなさい!」
「いや、でもこれ持ってると貴方みたいな人たちに命を狙われるよ? もう命が危ない感じになったことなんて回数覚えてないし。あははー」
あの二人に好かれてからというもの、世界からは嫌われていった。
今のように命を狙われるなんてことも一度や二度ではない。
「あの二人の声を聴けるなら……私の命の一つや二つ、要りませんわ!」
イッた目で叫ぶお嬢様に通子は引いてしまう。この世界は狂っている。
「けどまあ、ほら。私ってばスマートフォンじゃなくてケータイってくらいお金ないから……絶対に渡さない!」
素早くポケットから手を抜き出し、遠投する。
ポケットの中身は石。
お嬢様のナイフを持つ手に石がクリーンヒット。お嬢様は悲鳴を上げ、ナイフを落とした。
瞬間、空から何かが降ってきた。
「あん?」
「きゃあああああああああ!」
二人の驚愕の声に応答するように空から降ってきた何者かが冷たく重い声を発した。
「アンタが何者か知らないけど……通子にナイフを突きつけた罪――拷問だけで済むとは思わないことね」
「ええ、そうね。殺すだけじゃ飽き足らないわ。想像を絶するような絶望という絶望を与えて自分が生きているのか死んでいるのかすら分からないような状態にしてあげるわ」
極寒を超える、聞いただけで身が凍え切れるような声を発する二人の頭上に通子は拳を振り下ろした。
『あいたっ!?』
「そこまでしなくても良いから! とにかく学校や警察に連絡をして帰るわよ」
それから二人は美貌という最高の権力を振りかざし、お嬢様を海外へと引っ越しさせたのだった。
通子が二人に呼ばれて屋上に上がる。
二人は陰鬱な表情をしながら通子に言った。
「私達……もう通子に関わるのは止めた方が良いのかもしれないわ」
身が引き裂かれるような声を発する美優。
優美も小さく頷いた。
「何で?」
通子の問に美優が答える。
「だって私達が居るせいで通子の命が危なかったなんて聞いたら、もう……」
涙ながらに言う美優に通子はカラッとしたように言った。
「別に良いわよ。二人みたいな女の子に好かれてるんだもん。世界にくらい憎まれないと釣り合わないでしょ」
二人は驚きに満ちた顔をした。
通子は自分で似合わないことを言ってるなと思いながらも二人のために恥ずかしい気持ちを殺して言う。
「そもそも私達は友達でしょ。世界くらい敵に回したって問題ないわよ。だから……その、だからまあ……友達ってことで」
言い終わった瞬間、二人が音速で通子に抱きついた。
「やっぱり天使! 通子マジ天使!」
「大好き! 愛してる!」
「分かったから……。優美、鼻水ついてるから、うざい。離れろ」
本当にうざそうに言う通子と色んな体液を垂れ流しながら抱き着く優美に涙を流しながら相好を崩しながら抱き着く美優。
もうめちゃくちゃだった中、優美が思い出したように言った。
「写真、撮らない? ほら三人で!」
「良いわね! データは勿論、貰うわよ」
ビクリと通子の身体が震えた。
「いや……その……私はこれで……」
「はい、撮りましょう」
美優がガッシリと腰に手を回す。
優美がスマートフォンを掲げる。
通子がいやいやと首を振った。
「この二人と撮るなんて拷問だよ! 引き立て役にすらならないって! 人間の中に一人ゾンビが映ることになるから! もしくは豚! 止めてえええええええええええええええ!」
カシャッと仲良さげな三人の写真がスマートフォンへと保存された。
闇を抱えている超絶美少女に好かれた少女のお話。
某ペンギン3との「百合系の話書いてみない?」とかいう会話から産まれました。
色々と考えたけどどれも初期の設定説明や人間関係説明にリソース割きたくないなー。頭空っぽにして楽しんでもらいたいなーと思い、方向性をギャグにシフト。
人間関係をシンプルにし、昔の話も超最小限(時系列的すら書いていない)に。
最後のオチで『私達三人……ズッ友だょ……♡』みたいな文章入れようかと思ったけど三人ともそういうキャラじゃないので止めました。
……すげー入れたかったけど。