6 邪神様、見つめ直す。
多少欝っぽいです。
苦手な方は注意してください。
「はあ…」
大きく息を吐きだし、足を止める。
辺りには家々があるところから見て、ここは住宅地のようだ。
少し、休みたい。落ち着いてゆっくり考えたい。
喫茶店か何かがあるといいんだけど。
あ、でもその前に何か髪を隠せるものがいる。
取り留めもなく思考をさ迷わせながら、てくてくと歩く。
10分ほど道なりに進むと、大通りのような太い道に出た。人間がたくさんいる。
さっきみたいに絡んでくるのはいない。ただ、視線は多い。
僕が人混みに紛れようとすると、モーセのように道が空いた。そんなに避けなくても、何もしないのに。
目に付いた店に入る。雑貨屋みたいだ。店の女の子が僕を見ている。
店を出た。
木でできたマネキンが、店頭に出してある店を見つけた。安いフード付ローブを買った。黒髪を隠すために買ったのに、黒い。銅貨五枚だったから金貨を出したら嫌そうな顔をされた。
細い路地に入ってローブを着た。
さっきの雑貨屋で硬いパンを買った。銅貨三枚。店を出てからかじる。不味い。
酒場に入った。もう座れるなら何処でもいい。出された飲み物を一気に呷る。果実酒だった。
『――――――』 近くの客が話しかけてくる。うるさい。でも、ことばを使う気にもなれない。
「……アン」
彼女は確かに、アンだった。アンナと言っていたけど。
息子たちもいた。元気そうだった。
それに、ヘル。
綺麗な顔立ちをしていた。きっと、僕の娘と同じ顔をしているんだろう。それがどうしようもなく辛かった。
僕は、ここに来て、やっと、初めて、娘の顔を正面から見た。
ずっと目を逸らしていた。
罪悪感なのか、それとも別の何かなのか。わからない。
「駄目な父親だなあ……」
自嘲の笑みが浮かぶ。
店員らしき男が、マグカップに入った温かいスープを出してくれた。一口すすると、温かさが体の中を落ちていくのがわかる。
美味しい。
アンナに、謝りにいかないといけないな。
あんなことを言ったあと、逃げてしまった。もしかすると、気にしているかもしれない。
それから、魔王を退治しに行こう。
早く帰って、ヘルとゆっくり話をしたい。
ヘルだけじゃない。フェンリルも、ヨルムンガンドも、アンも、…みんなで旅行に行こうか。
オーディンやトールとの旅も悪くないけれど。
僕は立ち上がった。
問題解決への第一歩は、問題をしっかり見つめ直すことだと思います。こと、自分の想いに関わることなら。
寝起きに文章を書くと自然と欝っぽくなることを発見しました。