4 邪神様、遭遇する。
支度金ももらったし、そろそろ街に出ようかな。どんな街なのか、とても楽しみだ。
『ぴきゅ?』
この蛇とは、結局使い魔契約を結んだ。名前はミッド。
「お前は、ここで留守番してて。そのうち喚ぶから」
『きゅう!』
うん、なかなかいい子だ。
***
さて、何を買おうかなー。
意気揚々と街に出たのはいいけど、見られてる。すごく見られてる。
『双黒』だからなんだろうな。まずはフード付の服を買おう。無駄に騒ぎを起こしたりしたくない。
「おい、そこのガキ!」
服屋さんはどこかな?
「聞いてんのか!」
あ、あそこのお店の串焼き美味しそう。後で買う。
「おい!」
せっかく無視してたのに、ガラの悪そうな男に引っ張られた。ちょっと痛かった。
「てめぇ、オレと勝負しやがれ!」
「え?何で?というか誰?」
思わず素で返事してしまった。
「オレはナンガ!冒険者だ!」
答えてくれるんだ…。あと冒険者なんだ…。
「ガキだろうと『双黒に勝った』って言えばそれだけで箔がつくからな!」
なんだろうこの……うーん……。
まあいいか。こういう手合いは1回叩きのめせば絡んでくる確率も減るし。
「いいよ、おじさん。戦ってあげる」
この人がおじさんなら、僕はお爺さんなんだけどそれは置いといて。
「このクソガキ!ぶっ殺してやる!!」
うん、この煽り耐性の無さとか、いかにも『最初に絡んできてあっさり倒される人』だよね。
よし、倒そう。
「〈水〉〈球〉〈極小〉」
30cmくらいの水球が飛んでいって、
「へっ、こんなもん!」
避けられた。
「〈追尾〉」
逃がさないけどね。当たってくれないと困る。他の『ことば』だと死ぬかもしれない。
「うお、なんだこいつ!ただのウォーターボールじゃねえのか!?」
避けきったと油断していた冒険者Aに、水球がぺちっと当たった。
……吹き飛ぶ冒険者。言葉を失う周りの人達。逃げようか考え始める僕。
すごいな…10mは飛んだ気がする。加減を間違えたのかもしれない。
「うおぉぉおお!!」
あ、生きてる。良かった。
「このガキ!ぶち殺す!」
えー…まだやる気ですか。わかった。
「〈水〉〈礫〉」
どーん。ばーん。がしゃーん。
そんな感じ。
「まだやる?」
弱いものいじめみたいで嫌になってきたんだけど。やるならもう手加減しない。
「ちくしょう!覚えてろ!」
忘れる。というか、そもそも覚えてない。
走って逃げていく三下に、笑顔で手を振っているとまた誰かが話しかけてきた。
「そこの貴方!弱いものいじめはいけませんよ!」
いやいや、弱いものいじめしようとしてたのはあっちだから。見てなかったのかな?
説明しようと振り返る。
そこにいたのは、
「……アン…?」
僕の妻だった。
まるでテンプレのような三下との遭遇!!
ロキの『ことば』のルビは、基本的に適当です。どんなものかは漢字から読み取ってください。