3 邪神様、覚悟を決める。
さっきのお爺さんの言い方によると、この世界に『一個人が使える、小規模な魔法』はあるのだろう。髪の色で属性が決まることと、僕の魔法が闇魔法ということを考え合わせると、このお爺さんは光魔法かな?うん、神官っぽい。僕の周りにいる人間たちは、ほとんどが光魔法を使うみたいだ。
ただ一人、例外なのが最初にうるさかった人間。頭に火をつけたような…そんな、不思議な色の髪をしている。
「あの人間は?」
「あれが王です。王は『炎龍』という火魔法の使い手なのですよ」
そこまでは聞いてない。自慢したかったのかな?
……それにしても、『炎龍』か……いや、別に格好いいとか思ったわけじゃなくて、ほら、この世界で僕の『ことば』がどれくらい通じるのかっていう実験だから。やってみないとわからないこともあるよね!
「〈炎〉〈龍〉」
ぽふん、と音を立てて炎の蛇が現れた。
10cmくらいで、かわいい。
「………」
「………」
『ぴきゅー!』
魔法の属性は、『木』『火』『土』『金』『水』の基本の5属性と、『光』『闇』の2属性、合わせて7属性あるらしい。
練習や、生まれ持っての才能で2つ以上の属性を使える人間もいるらしいけど、数は少ない。王様はその一人だとか。
ちなみに僕は光以外の全属性が使える。でも、特に適性があるのは『闇魔法』の『変化』だ。
『ぴきゅー!』
例えば、この蛇をヨルムンガンドみたいに大きくすることもできる。やらないけど。
「…そろそろ消えてくれない?」
『ぴきゅ?』
………帰りたい…。
このお爺さんに帰る方法を聞いたら、まず間違いなく『あのこと』を頼まれると思う。
そして、僕はそれを受け入れないといけない。そういうものだと、昔、日本のテルという神が言っていた。
それは、正直、かなり嫌だ。
でも、空間転移なんてそれこそ大規模魔法―――しかも、この世界で言うところの光魔法―――を使わないと、不可能だ。
『精神操作』で操ればいいと思うかもしれないけど、魔法や『ことば』の扱いにはかなりの集中力がいる。精神操作で思考力の落ちている人間には到底できない。
よし、すぐに行ってすぐに倒して帰ろう。
「元の世界に帰りたいから、魔王を倒してくるね。転移の大規模魔法の準備、よろしく」
「わかりました」
お爺さんと王様以外の精神操作は解いておこうかな。他の国に攻められて、魔王を倒すころには滅んでたとかだったら嫌だから。この王様はほとんど権力もないみたいだし、かけっぱなしでも問題ない!はず!
お爺さんは個人的な好み、というかさっきまで話してた人間が急に敵対してきたら嫌だからね。
「王様、支度金とかくれるの?」
お願いしたら、金貨がたくさん入った袋と、聖剣?をくれた。柄に龍の姿が彫り込まれていて格好いい。
『ぴきゅっ!』
その模様に、蛇が嬉しそうに鳴く。違うから。お前は蛇だから。
はあ…一体いつ消えるのかな…。
二話目にしてブクマされててちょっとびびってます。
そう言えばまだ主人公の名前が…出てない……。