2 邪神様、お話をする。
ひとまず、情報収集をしよう。
聞きたいのは、3つ。
1、ここは何処なのか。
2、どうして僕をここに連れてきたのか。
3、この世界では、一個人が『ことば』―――魔法を使えるのか。
もしこの世界の人間の魔法が、大人数で発現するものだけなら、僕のアドバンテージは計り知れない。抵抗されることもないから、いろいろ使えるし。
とりあえず、一番偉そうなのに…と思ったけど、みんな壁を向いてるからどれが偉いのかわからない。一番近いのでいいか。
「こっちを向いて、僕の質問に答えて」
「―――」
真っ白い服を着て、優しそうな顔立ちをしたお爺さんだ。神官、みたいな人間だろうか?髪は真っ白で、瞳もとても薄い灰色をしている。
というか、言葉がわからない…。
「〈言〉〈解〉…僕の言葉、わかる?」
「はい」
さっき用意した質問をぶつけると、お爺さんはすらすらと答えてくれた。
話によると、ここは『ラグナリア』という国らしい。ラグナロクかと思ってびっくりした。
ちなみにラグナロクっていうのは、僕の世界の予言で…オーディンと僕が兄弟喧嘩をして、世界が大変な事になるとかならないとかいう話だった。結局フェンリルが興奮してオーディンの足を噛み、僕はヘイムダルに罵られて二人とも正気に戻った。全然関係ないところで終わったから予言者の三姉妹が頭を抱えていたのはいい思い出だ。
閑話休題。
この世界は、四つの大陸とたくさんの島国で出来ている。『ラグナリア』は、2番目に小さい大陸の中くらいの規模の国らしい。いまいち想像できない。
「で、どうして僕をここに?」
適当に出した椅子に座って、くつろぎながら話を続ける。今日も紅茶が美味しい。
「あなたは勇者として召喚されました」
「勇者…」
勇者って、なんか伝説の剣とか持ったり魔王を倒したりするアレですか。
「魔王を倒すために」
アレだった。
嫌だなあ…。聖剣なんとかを振り回したり王女様といい感じになったりするんでしょ?面倒くさい。そういう役割はトールがやってくれるよ。
それに、僕多分あなたより年上だよ?この歳で勇者なんて恥ずかしいよ?
「しかし…」
「ん?」
お爺さんは言いづらそうに口篭って、僕から目をそらした。まだ何かあるの?もう帰っていい?帰り方わからないけど。
「こんな、年端もいかない子どものうえ、双黒……さらには、隷属の魔法さえ破られてしまったことで王は処分してしまおうかと検討されております」
なるほど。確かに、今の僕は何も出来なさそうな子どもの姿だ。大人の姿だと、松明に火を点けようとしたら大火事とか、ちょっと水を飲もうと思ったら洪水とか、いろいろあったからね。
大は小を兼ねない。
体の中の力が少ない方が操りやすい。
「双黒、っていうのは?」
「髪の色と瞳の色が、どちらも黒ということです」
「…それが?」
「使える魔法は、髪の色によって決まります。勇者が闇魔法を使えるなど、ありえないことなので」
じゃあなんで僕を召喚したんだろう。馬鹿なのかな。
さくさく書けるという状況に驚いています。
これが私の実力か…!
ラグナロクの説明については、まったくもって正確ではありません。話に合うように変えました。
このお話の神界はとても平和なようです。