神器使いの子鼠
「ここが例の盗賊が現れる場所ね」
賞金稼ぎのレイラは盗賊が出るという場所に来ていた。
「それでこの辺り・・・」
レイラは誰かの視線を感じ取り、武器を取る。
「誰かいるのは分かってるの、こそこそしてないで出てらっしゃい」
レイラは武器を構え周囲を警戒したが、
ガッ
何者かに倒された。
「うぅ・・・・・」
レイラは目を覚まし辺りを見渡す。自身には毛布が掛けられ、空は暗かった。
「頭痛い、誰だろ・・・・・」
レイラは頭を撫でようとすると、
カチャッ
両腕に手枷がかけられていた。
「あのぉ~・・・・・」
レイラが声をかけると人もレイラに気づいたようだ。
「やっと起きたの、そんなに強く殴ったつもりはなかったんだけど」
人影の正体は年端もいかない小さな男の子だった。
「ちょっと、坊や出来たら外してくんない?」
「ダメだよ。僕はお姉さんをギルドの人に紹介してご飯を食べるんだから」
「嘘!」
レイラは心の中で頭を抱えた。
(相手がこんな子供だなんて考えてなかった。もうちょっとふざけた奴らがしてたのかとばっかり。でもこのままじゃいけない。何とかしないと)
「ねえ、僕~、お父さんお母さんはどうしたのかなぁ~」
レイラはさっきまでとは打って変わってお姉さん振る。
「お父さんもお母さんも僕を見捨ててどっか行っちゃった」
男の子にはかなり暗い過去があるようだ。
「じゃあさ、お姉さんが僕と一緒いてあげるよ」
「ほんとに‼お姉さんお仕事何してるの?キャラバン隊とかのメンバーじゃなさそうだけど」
男の子の声のトーンは上がったがまだ少し警戒しているようだ。
「え~っと、賞金稼ぎって仕事なんだけど分かるかな?」
レイラが賞金稼ぎと言った瞬間、男の子は短剣を抜いて剣先をレイラに向ける。
「お前、あいつらの仲間か」
「ちょっ、どうゆうこと⁉」
「とぼけるな!」
男の子は殺気だって叫んだ。
「お前みたいなのが子供を誘拐して金儲けしてんだろ」
「は?」
どうやらこの男の子はギルドの人とやらに嘘を吹き込まれているようだ。
「それは違う。賞金稼ぎは悪者を捕まえる仕事。子供を攫うのは奴隷商人たちよ!」
「じゃあ、何でお前たちは僕を狙うんだ」
「あなたが悪者になってるからよ!」
「嘘だ!」
男の子は自分が悪者になっていることを強く否定する。
「ギルドの人は悪者はキラキラした物を持ってる奴らだって言ってた。僕はそんなの持ってない」
「あなたは嘘を吹き込まれてるのよ。ギルドの人ってどうゆう名前のギルドなの?」
「知らない」
(ギルドの人ってやつは相当悪いやつね。それにこんな子供もを奴隷集めに使うだなんて)
レイラの浅い勘が黒幕にたどり着く。
「ねえ、僕ちゃんそのギルドの人っていつ来るのかな」
「怖くなったの?二日後だよ」
(二日後ね。それまでこの子を説得しないと)
レイラの脳に単身で逃げ出すという考えはなかった。
翌朝
「ちょ、何するのよ」
「お姉さんが逃げ出さないよう首輪を着けるんだよ」
「足枷を着けられちゃ逃げれないわよ」
「動かないで、着けづらくなるから」
男の子はレイラの鎖付首輪を着け終えると鎖の端を杭とハンマーで押さえつけ始めた。
「今度は何してるのよ」
「お姉さんが逃げ出さないよう鎖を固定してるんだよ」
「お姉さんが猛獣に襲われたら助けてくれるのかな」
「うん。怪我されちゃうとご飯がもらえないからね」
「そう、期待してるわね」
少なくとも明日までは命の保証がされることが分かった。
男の子は鎖を杭で押さえ終えると身なりを整える。
「どうするの?」
「朝ごはんを獲って来る」
「行ってらっしゃい」
男の子は見事な鹿を一頭捕らえて帰って来た。
「見事な鹿ね」
「お姉さんがいるからこれにしたんだ」
男の子は嬉しそうに言った。
「お姉さん、はいどうぞ」
料理名はただの鹿の丸焼きで、手枷等で動けないレイラは男の子に食べさせてもらっている。
パクッ
「苦いけど、美味しいわね」
「良かった。じゃあ、ここの部分全部食べてよ」
「うっ、うん・・・・・」
男の子は肉をレイラはモツを食べることになった。
「そういえば、僕の名前ってなんていうの?」
お腹いっぱいで腹の膨れたレイラが言った。
「僕には・・・・・ない。お姉さんのはどんなの?」
「私はレイラ。レイラ・ファントリー。もしよかったらあなたの名前付けてあげようか」
「いいの!やったー」
男の子は嬉しい事があると結構テンションが上がるタイプだという事が分かった。
「リルスト・ファントリー?」
「そう、リルスト。スペルは分かるかしら」
レイラが聞くとリルストは首を横に振った。
「僕、読み書き出来ない」
「そう、じゃあお姉さんが色々教えてあげる」
「色々って何?」
「読み書きとか算数とか」
「ふーん。それってなんか役に立つの?」
リルストは興味がなさそうである。
「役に立つわ、絶対」
「じゃあ、教えて」
リルストは必要なこと以外は興味がないようだ。
国語はレイラが手を自由に動かせないのでまず算数だ。
「これで3。じゃあ、1+3は?」
レイラが問題出すとリルストは指を折って数える。
「4!」
「せーかい」
「もっと出して」
リルストの要望に応え、レイラは少し頭をひねる。
「ちょっと難しいよ。リルストが毎食一匹鹿を狩って来ます。では四日で何匹リルストは鹿を狩ることになるでしょう」
「え~っと、僕が毎食鹿を狩るんだから・・・・・あれれ、指が足りないよ」
「指で数えないで頭で考えなさい。この先指より大きな数がいっぱい出てくんだから」
「分かった。やってみる」
リルストはレイラに言われて頭で考えてみる。
(こうしてみると、リルストって本当の弟みたい)
レイラはリルストを見て心を和ませていた。盗賊と捕虜の関係であることを忘れさせてくれるかのように。
「11かな」
「残念、答えは12。惜しかったね」
その日の夜
リルストはいつも使っている短剣をレイラの横で見せて来た。
「お姉ちゃん、この短剣はね、魔法の短剣なんだ」
「そうなんだ。良く見せて」
リルストは短剣の刀身をきれいにして見せてくれた。
「うわぁ~、綺麗な短剣ね」
リルストの短剣は柄は濃い緑の布で巻かれ、刃は透き通った水色をしている。
「ねえ、この短剣。どこで手に入れたのかしら」
レイラの知る限り見た事のない物なので思わず聞く。
「この短剣はね、ギルドの人に会う前に拾ったんだ」
「そう、それでどこが魔法なのかしら」
レイラはがそう聞くと、リルストは待ってましたと言わんばかりに自慢げに話した。
「この短剣を持ってるとね。自分が速くなったり、傷の治りが速くなるんだ。それにこの短剣は何でも切れるんだ」
聞くばかり凄い短剣である。
「へぇ~、ほんと、魔法の短剣ね」
「うん。ギルドの人には秘密にしてるんだ」
リルストは頷いた後、少し甘えた声で言う。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なーに?」
「お姉ちゃんと一緒に寝て良いかな。そしたら暖かそうだし・・・・・」
リルストは自分で言ってみたものの恥ずかしさらしき感情はあるようだ。
「いいわよ。二人で寝た方が暖かいしね」
「うん」
この日の夜は二人とも暖かった。
約束の朝
レイラは何やら違和感を感じて起きた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「何?・・・・・!」
違和感の原因はリルストがレイラの胸に手を当てているからであった。
「このぷにぷにしたの何?」
リルストが聞くと同時に揉む。
「っ!・・・離れなさいよ、エロガキィイイイイイイ」
レイラは思いっきり両腕を振り上げ、リルストに思いっきりぶつける。
「ガッ」
思いっきりぶつけられたリルストはそのまま倒れた後、頭を抱えて起き上がる。
「いってーーーー」
起き上がったリルストの顔は涙目になっていて、ぶつけた場所は大きなたんこぶになっている。
「酷いよ、お姉ちゃん。思いっきりぶつなんて」
「あんたもあんたよ。乙女の胸を揉むなんて、次やったらもっと強くぶつわよ」
「ご、ごめんなさい」
リルストのたんこぶが小さくなった後、リルストは狩りに出かけた。
「そういえば今日が私の引き渡しの日ね。上手くあの子を説得出来たかな」
レイラは不安になりながらもリルストの帰りを待った。
朝食を食べ終えて、しばらくすると例のギルドの人とやらが来た。
「よう、それが新しい品か」
「ううん、これは売らせないし渡さない」
「それは出来ない相談だな」
ギルドの人は指笛を吹くと周りの草陰から武装した男たちが出て来た。
(やっぱり、リルストは利用されてたんだ)
レイラは確信し、出来る限り辺りを見渡す。
(確認できるだけでも盗賊が二十人、子供一人にこれって)
数が多すぎる。いくらリルストが魔法の短剣を持ってても勝てるだろうか。
「ひひひ、いくらお前でも無理だな。やっちまいな」
ギルドの人の号令で盗賊がリルストとレイラに襲い掛かる。
「ねえ、お兄さんたちって悪者なの?」
リルストは盗賊たちが自分に辿り着く前にギルドの人に聞いた。
「おうよ、俺たちが俗に言う悪者だ。あの世で後悔しな」
「分かった。『解放』」
リルストが掛け声を言いながら短剣を抜く。抜ききったときには正面にいた五人は倒れていた。
「何!」
盗賊の一人が驚き、命令を下す。
「何が起きた!おい、早くガキを始末してお前は品を回収しろ」
「へい!」
盗賊十人まとめてリルストに斬りかかる。
「逃げてリルスト!」
「大丈夫だよ。お姉ちゃん」
レイラの声は空しく響き、リルストは殺されたかと思いきや。
「遅いよ」
リルストに斬りかかった盗賊十人まとめて倒された。
「何だこのガキ、せめてこれだけでも」
レイラ回収を任されていた盗賊がレイラに襲い掛かる。
「姉ちゃんに触れるなーーー」
リルストが空を切って放たれた刃が盗賊に当たる。
刃を当てられた盗賊は時が止まったように微動だにしなくなった。
「死んだのかな・・・・・」
リルストはどうやらさっきの技を今まで使った事がないようで、罪悪感で怖気づいている。
「多分、短剣の魔法で動けないだけよ。さっさと逃げましょ」
「う、うん」
リルストはレイラの手枷足枷首輪を外し壊しをした後、レイラとともに逃げ出した。
「これから、どうすればいいかな」
逃げている途中、リルストがレイラに聞いた。tう
「街に行ってお仕事探しましょ。そうすればいいのよ」
「賞金稼ぎってやつ?」
「そうよ、頑張って強くなってあいつらを壊滅させてやりましょうよ」
「うん」
初めまして、基本思い付きで書いてる悪筆作家です。