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擬態  作者: つーたん
7/8

6月4日

 統合失調症という病気がある。一般的にはなんの関係のないものに、関連を付けてしまったり、逆に、関連のあるものの共通項が全く分からなかったりするらしい。論理性に欠く考え方しかできなくなる病気、と考えて差し支えないだろう。

 この病気、一体誰が診断できるのだろうか。

 医者には勿論それなりのガイドブックがあるはずで、ケースに応じた対応がある程度マニュアル化されているに違いない。

 しかし、これは考え方の違いだ、と処理してしまうこともまた容易い。

 例えば、言語の通じない人同士で会話を試みた時に、言語が通じないからコミュニケーションはできないが、相手は何か理由や理屈に基づいて喋っているはずだ、思うだろう。

 なぜなら、理解できないからだ。

 この人にはこの人なりの理屈があるに違いないと思う以外に、どうしようもないからだ。

 知らない人が、訳の分からないことをもっともらしく説明しだして、恰も筋道が通っているかのような雰囲気を醸していて、その上その人の言っていることが本当に、一分も理解できないから全く判断が付かない時、僕らはそれを否定できるだろうか。間違いだと言えるだろうか。

 違う言語で話しかけられている状態と大差ないのに?

 迂闊には言えまい。言える人は頭が悪いか、図々しいか、といったところか。

 …段々自分の言っていることが分からなくなってきた。こういう不明瞭な文章は良くない。良くない良くない。良くなくなくなくなくもない。

 調子が良すぎるか。反省反省。調子に乗ってもろくなことがない。失敗を増やすだけだ。反省反省。


 日記にこんなことを書くのはどうかと思うのだけれど、しかし、誰かに見せる訳ではないし、家にしまってあるから家族がこっそりと見ない限り、まあ見る人はいないだろう。僕の親は見る訳がないからそこらへんは安心できる材料だろう。

 時々、部屋に彼女が上がり込んで来るのが怖いが、何、大したことじゃない。

 今日は気分が良い。だからどうだというのはあるが、何、日記だから関係ない。

 今日起こったこと、基、今日したことをここに書くと、見つかった時に完全に証拠として上がるのだが、如何せん書きたい。

 ハイになっているのだろう。犯罪者心理というのが分かる、というと可笑しいか。犯罪者だし。

 そうだ、自分は犯罪者だ。

 だからといって、何が変わる?

 自分がこの自分であることに一切の迷いはないし、それが危険であることは、重々承知だ。

 僕は学生だ。学生の間は成人後、いや18歳以降か。それまでは、罪が軽いのだ。

 なのに何故、犯罪をしておかないのだろうか。理由が分からない。皆道徳的で、牧歌的過ぎる。

 この中は、治外法権、領事裁判権を持っている。学校という組織はその中で社会の勉強をさせる、という崇高な目的があるから、実際の意味で社会の縮図。基本的には自治権を持っているのだ。

 犯罪は少し事情が変わってくるが。

 それでも、学生の万引きは学校に連絡が行くことも珍しくないし、学生の覗きぐらいなら説教で終わるではないか。

 本当に、壊れている。

 この制度が。

 法律が。

 こんな穴だらけで隙の多いシステムは何の役にも立ちはしない。

いや、あえて言うなら、そうだな。僕のような犯罪者には役に立つ。とっても都合の良いシステムだ。

他人の財布から金を抜くだけの簡単な作業。しかも捕まらない。まさに僕のような犯罪者にはうってつけじゃないか。

 被害額はそろそろ馬鹿になっていないはずだけれど、やはり、学校というところは腰が重すぎる。全く、楽しい限りだ。

 毎日、この為に学校に行っているようなものと言っても過言ではない。

 彼女は何と言うだろうか。お節介が多く、愛が重い、僕の彼女である彼女は果たして何と言うだろうか。

 もっと言うと、彼は何と言うのか、気になったりする。

 不思議なもんだ。


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