5話 学園まで
ようやく学園に着きます
~side:ゼノ~
食堂を出てから俺達は、北地区の『ゲート』に向かっていた。
そもそもクローゼ村の100倍以上の広さの王都を、歩いてまわるのは無理があるそうだ。……冷静に考えればたしかにそうだ。
そこで都市を行き来するために用いられるのが、「魔術式転移門」通称『ゲート』だそうだ。
「ゲートは大昔に存在したと言われている『時空間魔法』の研究中に偶然実用化に成功したという、王都が誇る大規模魔法陣なのよ!!」
と、さっきスズカさんに質問してもいないのに説明された。
しかもドヤ顔で……けっこうイラっときた。
「ゲートはそれぞれの地区に3つあって、それを使って都市内それぞれの地区に行くことが出来るのよ!!」
と、ドヤ顔のまま続けてきた。
どうでもいいけど毎回あんな大声をだして疲れないんだろうか?
そして現在--
「ほら!あそこの店が雑貨屋でそっちの店が防具店よ!! あ、心配しなくても西地区に行けばもっと可愛いお店もあるからね!!今度いっしょに行こうねミリアちゃん!!」
「あの…その…あうぅ…」
--妹が、ものっそい勢いで絡まれてます。
どうしてこうなったんだっけ……?
~回想中~
「それじゃ!まずは自己紹介から!私はスズカ!スズカ・イスルギよ!出身は東国の大和!《杖》はこの扇子!それから--」
と、やはりこっちが何か喋る前に、一方的に情報をぶちこんできた。
「--で!趣味は--!あと--は--で!そういえば最近--」「もう大丈夫です!!」
「そう? まあ私だけが話しててもしょうがないもんね!」
すでに十分過ぎるぐらいにしゃべくり倒してんだろうが!!!
と内心思っていたけど
「ええ、そうですね。」
この時まったく態度に出さなかった自分を誉めてあげたい。
「ゼノ・アルフレインといいます。 明後日から高等部の1年になります。」
「じゃあ私の方がお姉さんなんだ! 『スズカお姉さん』って呼んでね!!」
「いえ、さすがにあれなので遠慮させていただきます。」
「そ、そう……。」
あれ?ちょっとへこんでる?
「まあ、そこはこれから話し合っていけばいいか…。」
そこは諦めてくれ!
「えっと、じゃあスズカ先輩で。」
「先輩? そっか先輩か…それもいいわね!!これからは私のことをスズカ先輩と呼んでいいからね!」
復活しやがった…。まあいいけど…。
「それじゃ早く続きを聞かせて!」
止めたのはあなたです。
「そうですね……出身はアトモスのずっと北の方にあるクローゼ村です。えっと……以上です。」
「え~それだけ!?もっと趣味とか教えて!ね♪」
ね♪と言われても…
「--ちょっとあなた、いい加減にしてください!! さっきからゼノにぃにつきまとって!何なんですか!?」
「こらミリア、そんなに怒らなくてもいいだろう…。」
妹よ、よく言った!
「うっ、 うん…ごめんなさい…」
ミリアはしょんぼりして謝った。
「!!---か、かかかか…」
あれ?どうし「カワイイ~~!! なにこの娘!スッゴくカワイイ!!」
「「え?」」
「お名前は!?」
「ミ、ミリア・アルフレインです--」
「今何歳!?」
「えっと、12歳で--」
「じゃあ中等部の1年生になるんだ!!」
「あの、はい…。」
「私のことは『スズカねぇ』または『ねぇね』って呼んで!!」
「それはちょっと……」
「好きな食べ物は!?それから--」
~回想終了~
~side out~
何故かミリアのしょんぼりした姿と、その前のゼノ「にぃ」という言い方がツボだったらしい。
「いいこと思いついた! 今度私の部屋に遊びにおいでよ!!ミリアちゃんに似合いそうなカワイイ服がいっぱいあるから!!」
「そういえば先輩、ゲートって始めてなんですけど、どんな感じですか?」
さすがにミリアが心配になり助け船をだすゼノ
「え! そうね…それは見てのお楽しみかな!もうすぐ着くから楽しみにしててね♪さあ行きましょう!」
なんとか救出に成功したようだ。
「……ミリア、今度から人前では兄さんと呼ぼうな?」
「わかったゼノに…お兄ちゃん。」
兄妹は約束を交わした。
―――――――――――
そんなこんなでゲートに着いた三人
そこには地面に巨大な魔方陣が3つ描かれていた
「ほら!あの魔方陣がゲートよ! ゲートは30分に一回のペースで起動するようになってるのよ!」
「へ-、それにしてもすごい人の数ですね。」
「もうすぐ午後5:30だから東地区の居住区に行く人がほとんどだけどね!」
「あれ?でも真ん中の魔方陣だけ人が少ないね。」
「んふふふ♪ よく気付いたね!二人共気をつけてね--」
スズカは珍しく少し引き締まった表情で説明した。
「--南地区は貴族街だから貴族や一部の商人以外立ち入り禁止なのよ…」
「へえー、なんで南地区に貴族が集まっているんですか?」
「それはね!--えっと、あれ!?ねえ、なんだったっけ!?」
ゼノの質問に、スズカは何故かミリアに答えを求めた。
「えっ! いや、あたしに聞かれても…。」
「ということだからゼノ君! ごめん♪わからないや♪」
この時ゼノはいまさらだがふと思った…。
(この人メンドクセー)
無駄話をしているうちにいよいよゲートの起動時間になった。
ゼノ達がいる西地区行きのゲートはそれほど人がいなかったが、2つ隣の東地区行きのゲートはとても混雑していた。
「もう少し詰めてください!」「いでっ!てめぇ何ひとの足踏んでんだ!」「ちょっと!あんた今私のお尻触ったでしょ!!」「えっ!?違う!僕じゃない!本当だ信じてくれ!!」「--!!ゼ「いでっ!てめぇ!!今度はスネを蹴りやがったな!!」「それでは…ゲート起動!!」
次の瞬間、広場は静寂に包まれていた。
いや、広場自体が変わっていた。
「到着~~!さぁ学園を目指しましょう! 学園までは真っ直ぐだがら迷う心配は無いけどね!」
「いやいや!ちょっと待ってください!今なにが起きたんですか!」
「一瞬であの人達居なくなっちゃった…。」
狼狽える二人に対して、スズカは--
「あぁ、大丈夫だよ!西地区のゲートに移動しただけだから!」
と告げた。
「あんな一瞬で?」
「これが王都か…。」
と、よくわからない結論をだす二人だった。
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「さぁ、着いたよ!ここが第一魔法学園よ!」
目の前には石造りの巨大な建物が建っていた。
「--すげぇ…。」
「--王都に着いてまだ数時間しか経ってないのに……一生分驚いたきがする。」
田舎育ちの二人にとって、学園はものすごい迫力があったようだ。
「後はそこの受付のおばさんに聞いたら学園と学生寮までの地図をもらえるからね!!」
「あっ!はい、わかりました!」
「どうもありがとうございました。」
「どういたしまして! 何かあったら何時でも頼ってね!それじゃ!またね~!」
そう言うとスズカは去っていった。
「悪い人では無いんだよね……」
「疲れるげどな……」
二人はそう呟いて、その背中を見送った。