71話 因縁
お久しぶり!!
だけど短いです、すいません!
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~side:ベル~
ボクには兄上がいる。頭が良く、腕っぷしの強い、優しい兄上が。
兄上はボクの誇りだった。両親はいつも兄上ばかり褒める。それでもボクは兄上を妬んだりしなかった。何故なら兄上が常に誰よりも努力家だとボクは知っていたからだ。
兄上は卒業後、王都で騎士になった。その最初の任務はよくある護衛任務だった。冒険者ごっこをしたがる馬鹿な貴族の息子を護衛する事だった。
あの日ボクは兄上が働いているところが見たくてこっそり馬車に忍び込んだ。途中でバレてこっぴどく叱られたけれど着いていく事を許可してもらった。
そしてたどり着いた北の地でそれは起こった。
『クソッタレが……最初からこうしてれば良かったんだ……』
ボクの目の前で兄上が負けた。目の前の光景が信じられなかった。誰よりも努力家で優秀な兄上が、ボクとほとんど年の変わらない冒険者なんかに……
~side out~
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買い物を終えて寮の階段を登っている最中、マルクの耳に聞き覚えのある怒声が届いた。
ボケーーー……ボケーー……ボケェー……
「今のはゼノの声だよね。ということはまさか!?」
慌てて階段を駆け上がり部屋を目指す。そして目にしたのは予想通りの光景だった。
「う…あ……?」
「ったく! いきなり何しやがる!」
何故か目隠しをしているゼノと、その咆哮を受けて立ちくらみを起こしているベルが対峙していた。
「何してるの二人共!!」
「お! この声はマルクだな! ただいま!」
慌てていてもマルクの頭は冷静に状況を判断していた。
ベルが牙折りを探していると聞いた時からいずれこうなると予測はしていた。そしてそれが今日だっただけの話だ。
買ってきた食材をその場に置き去りにして、膝から崩れ落ちるベルに駆け寄った。
「ベル君! 大丈夫!? 意識はある!?」
「うぅ……マルクくん? ボクは一体--」
マルクの呼び掛けで意識を取り戻したベルは何が起きたかよく分からない様子で周囲を見渡した。
先ほどのゼノの咆哮で部屋の窓ガラスはひび割れて、廊下には運悪く巻き込まれた生徒が数人倒れていた。
「ゼノ! 一体何したの!?」
「何って、ただ叫んだだけなんだけど……。というかむしろ被害者なんだが」
「っ!! マルクくん、下がってくれ!! そいつが”牙折り”だ!!」
ゼノの声を聞いた瞬間にベルは跳ね起きて剣を構えた。その様子を気配で察知したゼノも臨戦態勢をとる。
「”牙折り”ね……その名前はとっくに捨てたつもりなんだがね」
「よくもぬけぬけとそんな事が言えるな!!」
「一応聞いておくけど理由は何だ? まあ何となく想像はつくけどさ」
ゼノを、”牙折り”を敵視する理由。貴族が相手なら名誉を傷つけられたはらいせに、東の人間ならリベンジやただの興味本位で、西の人間なら異端者として。今までの経験からそんなところだろうとゼノは予想した。
そしてベルの答えは予想通りのものだった。
「4年前、ボクの兄上が貴様に敗れたことでセルクス家の名は地に落ちた。その誇りを取り戻すためだ!!」
「…はぁ、くだらない回答をどうも。正直俺にとってどうでもいいし興味も湧かないね」
ゼノにとっての貴族とは、やたらと誇り誇りと連呼する生き物で、そのくせ実際に誇り高い貴族など雀の涙程も居ない、という認識なのだ。
そのため当然ベルの言い分にまともに取り合う気など皆無である。
だがベルの方はここまでコケにされては黙っていられない。騎士剣に魔力を込めて今まさに斬りかからんばかりに殺気立った。
その空気を察知してマルクが慌てて間に立った。
「やめてよ二人とも! お願いだから落ち着いて!!」
「……って事だけどどうする? 俺としてはこの場は治めた法がいいと思うけど」
「………不本意ではあるが友人にここまでされては、な」
しぶしぶといった感じだが取り合えず両者とも臨戦体制をといた。
「まあ、あれだ。明後日の闘技会にあんたも出るのか? 出るならそこで決着をつけよう。
そこでなら戦っても問題ないだろマルク?」
「うん。どうしても戦うんならせめてそこまでまってほしい。」
「了解だ。貴様が逃げないならボクはそれでもかまわない」
こうしてこの場での衝突は一応の終りを迎えた。
(それにしてもセルクスか……)
「いや、まさかな……」
今日はもう一話あります。
そっちも短いですけどね!!