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砕牙~白銀の破壊者~  作者: 伊東 無田
空白の物語 上
69/76

66話 合同闘技会のおしらせ

新年初投稿!!

今年もよろしくお願いします!!!

~~~~~~~~~~~

 ケイト・グランベールによる修行は、ゼノのそれまでの常識を根本から覆した。


 安全性皆無。怪我を負うことを前提に行われる訓練内容。勝ち目のない魔物とのデスマッチ。組手という名のDV。etc.


 瀕死にならない日は無かった。何度生死の境をさ迷ったことか分からない。


 身体が壊れたら無理矢理回復、回復したらまた壊す。延々とそれの繰返し。

 意識を失う事すら許されず、全ての苦痛をフルで受け止め続けた。


 そんなある日、ゼノはケイトに呼び出された。


「よく聞けクソ弟子、もといゼノ。

 分かっていたがお前は才能が無い。塵ほども無い」

「……わかってますよ」


 もはやゼノの目は光を宿してはいなかった。

 何度も希望を打ち砕かれた。影で何度も涙を流した。それでも諦められない自分に嫌気がさすことさえあった。


「お前が人並みの戦い方を身につけるのは不可能だ」

「…そんなことわかってますよ」


 ゼノは知っていた。周りの冒険者から噛ませ犬と言われていることを。

 ゼノは知っていた。叔父のジンが心を痛めながらも、才能の無い自分を戦いから遠ざける為に毎日自分を中傷している事を。

 そしてゼノは知らなかった・・・・・・


「だからお前はには出来ない戦い方を身に付けろ!」


 それはケイトだけが知っていたゼノの、ゼノだけの武器。


「もしもお前がこれからの修行をやりきったのなら、お前の牙は--」










「この俺様にすら届きうる」


 ゼノ・アルフレインが牙折りと呼ばれる三ヶ月前の出来事であった。



~~~~~~~~~~~




 翌日の昼休み。アリシアの口から昨日の事がサラ達に伝えられた。

 ちなみにこの場にミリアは居ない。何故なら彼女は中等部だから。ますます影が薄いとか言われそ……ゲフン、ゲフン!!

 とにかくこの場にはアリシア、サラ、ナズナ、マルクの四人が集まっていた。


「ということだから捜査は打ち切りだ」

「助けには行かな「無理だ」…いの?」


 サラの疑問に被せながらアリシアは答えた。


「アタシ達じゃ無理だ。たとえ修行場を突き止めたとしても実力的に近付けない」


 アリシアの顔には今まで見たことない程に諦めの色が浮かんでいた。


「その上あの人の目を盗んでゼノを救出する?それは無謀どころか不可能だ。

 例えるなら、3歳児に紙飛行機を投げてドラゴンを射ち殺せ、と言うような物だ」

「うん、意味解んないけど無理だと言うことは解った」


 ここでナズナはふと疑問に思った。


「そういえば何で急にゼノの師匠が来たんだろ?」

「それはアタシも聞いてない。けど見当は付いてる」


 アリシアは懐からチラシを取り出した。


「何これ? 闘技会のおしらせ?」

「ああ、職員室の壁に貼ってたからパクって来た」

「後で戻しときなよ」


 チラシには『合同闘技会 一次予選のおしらせ』と書いていた。


「そっか、もうそんな時期なんだ」

「ついに私達も参加出来る歳になったんだね。私は参加しないけど」


 ナズナとサラは思い当たるものがあるようだった。

 一方、マルクはチラシを見てもよく分からないようで首を傾げた。


「合同闘技会ていうのは大陸中の魔法学園がそれぞれ代表を出しあって闘うイベントなんだよ」

「それで来月の一次予選は高等部一年生だけで行われるのよ。その優勝者と、予選中に見所ありと判断された選手は二次予選に進めるの。因みに全部で三次予選まであるけど二年生以上は二次予選からの選考になるんだ」

「まあ、闘技会の詳しい説明は今度な」


 それでだ、と一拍置いてアリシアは喋りだした。


「こんなイベントをあの人が見逃すはずがない。このイベントのためにゼノの所に来ににがいない。たぶん優勝は当たり前、その上何らかの縛りを加えてゼノを出場させるつもりだとアタシは考えた」

「縛りって?」

「たとえば"魔闘術"無しで闘えとかだ」


「とにかくゼノの捜索は打ち切りだ。それで、お前らはこれからどうするんだ?」

「どうするって何が?」

「アタシは今日から兄貴達と放課後に集まって修行するつもりだけど。アタシも闘技会に出るつもりだし、何よりこれ以上ゼノに差をつけられるなんてゴメンだね」

「わたしは……出場するつもりは無いけどもっと魔法を磨くわ。もう森の時みたいに足手まといに成りたくないもの!」

「サラちゃん……解った、私も手伝う! それに悔しかったのは私もも一緒だもの。マルクくんはどうする?」

「僕は……」


 マルクはゼノと会ってからの日々に思いを馳せた。


 最初は変な人だと思った。それは今でも少し思ってる。

 でもそれだけじゃ無い。ゼノはマルクが殴られた時に本気で怒ってくれた。密かにマルクとナズナに危害を加えようとした輩を倒してくれた。森で助けを呼ぶしか出来なかったマルク達を命懸けで助けてくれた。


 それなのに自分はまだ何も返せていない。ならどうするべきか?そんなもの決まってる--


「闘技会に出てみるよ。そのために修行もする。

 僕なんかじゃ初戦突破も難しいと思うけど、でもやれるだけやろうと思う!」


 --答えは前進あるのみ! いつか追い付けるように、今度は自分も戦えるように。


 結局のところ四人が四人ともゼノに置いて行かれたく無いのだ。


「解った。それならあんたもアタシ達の修行に混ざるか?」

「……いや、今の僕じゃ着いていけないと思う。だから僕は僕のペースで頑張ってみるよ」



 こうして四人は歩き出した。遥か先にあるゼノの背中を目指して。



~その頃ゼノは~


「おりゃあああ!!」スカッ!

「どりゃああああ!!」スカッ!

「チェストオオオオ!!!!」スカッ!


「あ、当たらねぇ……」


 ゼノの目の前には半透明な白い球体が浮いていた。球体にはハロウィンのカボチャのような顔が付いていた。

 レベル5の魔物ゴースト。その特性は--


「WRRRRYYYYY!!」スカッ!


 ゼノの攻撃は尽くゴーストをすり抜けた。察しの通り特性は"物理攻撃無効"である。例外として魔法による物理攻撃は効くのだがゼノは魔法を使えない。唯一の攻撃魔法の『水素爆弾』も植物の種と金属片が気が付いたら根こそぎ奪われていたため使用出来ない。

 犯人はもちろんケイトである。


 とにかくそんな訳で現状有効な攻撃手段が無いのだ。


「こんな奴どうやって倒せってんだちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」




 そんなこんなで、脱出まであと18階。

つまりゼノは前回の最後に8階分落とされたと言うわけです。


普通死ぬからゼッタイにマネしないように!

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