3話 魔動車にて
ようやく適正属性についての説明が書けました。
~side:ミリア~
あたし達がクローゼ村を出発してから4日目。
いつも日が沈む前に近くの町で宿をとっているから、夕方の僅かな時間だけだけど、あたしは3日間ゼノにぃと一緒に町を探険したり、お店をまわったりして過ごしていた。
その間ゼノにぃと腕を組んで歩きまわった。あたしにとってはちょっとしたデート気分だった。
そういえば、途中ですれ違う人達がたまに、ゼノにぃのことを見て小声で「ロリコン」って言ってたけど、どういう意味なんだろう?聞こえる度にゼノにぃは「兄妹です!!」って叫んでいたけど…。
それから、泊まった宿は三つ共すっっっっっごく大きな宿だった。運転手さんに聞いてみたら「魔法学園に遠くから通いに来る生徒のために、学園側が事前に予約をとっているんですよ。」って言ってた。
そんな感じで王都までの道のりを過ごしていたんだけど…
「なぁ運転手さん。」
「なんでしょうかゼノ君。」
「王都には後どれくらいで着くんだ?」
「またですか…。そうですね、おおよそ3時間ぐらいで着きますよ。」
「うぅ~!退屈過ぎる…。」
今日は朝からゼノにぃはこんな感じで落ち着きがない。最初の頃は魔動車の窓から景色を見てハシャイでいたのに…。どうやら4日目の最終日に飽きたらしい。
「も~、うるさいよゼノにぃ~!」
「ゴメン、でもこうヒマだとどうにも。」
「どうせなら教科書読んで予習してなよ。」
そう言いながら、あたしはカバンから教科書を取り出して、ゼノにぃに差し出した。
「こんな難しいもの読めねぇよ…。」
いやゼノにぃ、いちおうこれ中等部用だよぉ…。
あたしは仕方なく自分で教科書を読む事にした。
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「解説!!はじめての魔法学♪」
魔法とは、体内に眠る魔力を用いて意図的に引き起こすことの出来る奇跡である。
誰にでもそれぞれが得意とする属性が存在する。この属性のことを『適正属性』という。
第一章
第一節 適正属性
適正属性とは、簡単に言うと魔術師個人に最も適した属性のことをいう。ここで忘れてはいけないのは「適正属性以外の属性も、簡単な魔法なら使用することが出来る」ということである。日常生活で使われている魔法の多くは、誰にでも使うことが出来る。
つまり、魔術師は適正属性の魔法しか極めることは出来ないが、ある程度なら他の属性も使うことが出来るのである。
第二節 属性の種類
魔法の属性は大きく分けると5種類ある。
「火属性」
主に火を扱う属性であり、細かく分けると、熱と炎などが分類される。
「水属性」主に水を扱う属性であり、氷や霧、そして怪我を治す治癒魔法などが分類される。
「樹属性」
主に自然に関係する属性であり、風や樹、そして毒魔法やそれを治す医療魔法などが分類される。
「雷属性」
主に電気を扱う属性であり、雷や磁力などが分類される。
「地属性」
主に物質に関係属性であり、地や鉄、そして錬金術などが分類される。
以上の5種類が五大属性と呼ばれる、魔法の基本である。
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そこまで読んであたしは本を閉じた。
「う~ん、やっぱり魔動車の中じゃあ集中して読めないや。…あれ?ゼノにぃ?」
「………………………………………Zzz!」
………いつの間に寝てる。
「ふぁ~ぁ、あたしも眠くなってきちゃった。」
今内にゼノにぃの膝枕で寝よっと♪
~side out~
ゼノ達の4日間の旅もついに終わりが見えてきた。
「ほら、二人とも起きてください。」
「ンァ…?あれ、どうしたの運転手さん?」
ゼノは眼を擦りながら眠そうに運転手に聞き返した
「ほら見てください。あれが王都の名物のひとつ大城壁ですよ。」
「??……!!!お、おいミリア起きろ、見てみろよ!」
「もう、なんなのゼノにぃ…?!」
二人の目の前には高さ20メートルにも及ぶ、巨大な城壁がそびえ立っていた。
「スゴい!!横幅もものすごい長い!!」
「キャ~!スゴい!スゴい!スゴい!」
「王都全体を囲んでいますからね。ちなみにゼノ君が住んでいたクローゼ村が軽く100個は入りますよ。」
「えぇぇぇ!!そんなに広いんですか?!」
「もちろん!王都内には学園以外に、もたくさんの施設や住民の居住区、そして宮殿がありますからね。」
「そうか、そういえば王都なんだから宮殿があって当たり前か…。いや、でもさすがに100個って……。」
「まぁ、クローゼ村はあまり大きな村では無いですからね。」
とてもあたたかみのある優しい村ですが……。
と、運転手は続けた
ゼノは少し照れながら笑った。
「スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!スゴい!」
「おーい!ミリア~!そろそろ落ち着こうな…。」
しっかりしてるようでもミリアはまだ12歳の少女なので、始めての王都にハシャイでいた。…………………まだ外壁なのに。
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そうこうしているうちに、魔動車は城壁にあるひとつの巨大な門の前にたどり着いた。
「はい、じゃあ次の方どうぞ~。」
鎧に身を包んでぶしょうヒゲを生やした門番が気だるそうに告げた。
「やぁビス!調子はどうだい?」
運転手が親しげに門番に問いかけた。
「よぉ、誰かと思ったらマルコじゃねえか!ってことは乗っているのは学生さんかい?」
門番のビスはやはり親しげに運転手のマルコに返した。
……………ちなみに、ここまで頑なに「運転手さん」で通してきたが、そろそろ扱いずらくなってきたため諦めて名前を付けた。
閑話休題
「ああ、だから手続きのほうを頼むよ。」
「任せとけ!…よし、そんじゃボウズそれから嬢ちゃん、入学証明を見せてくれねえか?」
門番のビスはゼノとミリアに問いかけた。
「ハイ。えっと……あった!これでいいですか?」
「おうバッチリだ!そんじゃ…ほら、こいつが許可証だ!」
そう言って、ビスはミリアに腕輪を差し出した。
「次からこいつを見せてるだけで門を自由にくぐれるからな。くれぐれも無くすなよ。」
「ハイ!……ところでゼノにぃ何してるの?」
ミリアが問いかけると……
「……ヤバイ、入学証明忘れて来た……。」
と真っ青な顔でゼノが答えた。
「ちょっ!どうするのゼノにぃ!入学式明後日だからもう間に合わないよ!」
「ヤバイ!マジでどうしよう!このままじゃ父さんにシバき倒される!…いや待てよ、今回ばかりは母さんまで参戦してくるかも!」
「いやいや、心配する所が違うんじゃないかな?」
マルコが苦笑しながらつっこんだ。
「落ち着けボウズ。アレだ、身分を証明出来るもんがありゃあなんとかなる。」
「本当ですか!!ってかホントに!!」
「あぁ、毎年オメエみたいな奴が必ずいるからな。此方も救済措置ぐらい用意してる。」
ゼノは急いでカバンを漁ると中から一枚の金属製のカードを取り出した。
「じゃあこれで!!」
「だから落ち着けって…。おぉ、『ギルドカード』じゃねえか。」
ギルドカードとは、冒険者がギルドに所属していることを証明するカードで、個人の名前やレベルが記載されている。
ギルドやレベルについての説明はまたいずれ。
閑話休題
「ボウズ冒険者だったのか?どれどれ………!!!」
「…あ、あの~何か問題でもありましたか?」
ゼノが恐る恐るきいてみると
「---!い、いや大丈夫だ!えっと名前は『ゼノ・アルフレイン』だな、え~と……お!ちゃんと名簿に名前が乗っているな」
「そんじゃぁ…ホレ、ボウズの分だ。ところで……」
ビスは腕輪を渡しながらゼノに問いかけた。
「学園に通っていた訳じゃねぇのに、なんでギルドに冒険者登録してたんだ?」
「べつに大した理由じゃないですよ。故郷がド田舎にあるから、冬の間はそれぐらいしか稼ぐ方法が無いんですよ。あと修行も兼ねて。…ていうか学園とギルドって何か関係あるんですか?」
「ああ!授業の一環としてギルドでクエストを受けてるからな。もっとも、高等部からだが。」
「さてと、ボウズその腕輪絶っっっ対に無くすなよ!」
「うっ、わかりました……」
こうして一行を乗せた魔動車は門をくぐっていき、ようやく王都への旅に終わりを告げた。
走り去っていく魔動車をビスは眺めていた。
「あの灰色の髪の毛にあのギルドカード、……あれが噂の『牙折り』か。」
門番の呟きは風に流されて空に消えていった。
王都到着。………何時になったらヒロイン出てくるんだろう。