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砕牙~白銀の破壊者~  作者: 伊東 無田
空白の物語 上
54/76

51話 追憶の物語 2

お久しぶりです!

最近リアルがヤバすぎる!


そんな中で時間を見つけて少しずつ執筆していたらなんと10月が終ってた!


今後も更新ペースは遅いままですが絶対に完結させますので気長にお付き合いください。

 今のは一体?


『言ったであろう。お主自身の物語だと』


 けど明らかに俺以外の記憶が混ざってた。


『当然だ。今のはお主の記憶ではなく"世界の記憶"を見せたからな』


 世界の記憶?そんなのをどうやって?


『我は"記憶を統べる者"だ。この程度、雑作もない。

 ではそろそろ次の記憶を見るとしよう』




~~~~~~~~~~~



 ゼノ・アルフレインがハング村にやって来てから1年近くの時が流れた。

 彼に対する両親の態度は相変わらずだったが、彼自身の環境は大きく変わっていた。


 相変わらず人見知りで上手く他人と話せないが、親友のサンドラ・ルミールだけは例外だった。

 あれから二人は急速に仲良くなり、一緒にゼノ行着けの喫茶店で食事をしたり、サラの紹介で他の子供達と一緒に遊んだり、村の外れの丘で遅くまでうたた寝をしてサラの母に二人して怒られたりと、とにかく共に過ごす事が多くなった。

 最近ではゼノはよく笑う様になった。


 ゼノにとってこの約1年間の日々はとても輝いて見えた。灰色だった世界に色彩が産まれたのだ。


 

しかし--



~11年前~


 夏のとても暑い日だった。この日は連日続いた雨が止んで久々の晴れた日だった。


 ゼノとサラは春から村の集会所で読み書きと計算を習っていた。二人とも今年で5歳になる。そのため村の、と言うより国の法律に乗っ取り学問を習いはじめたのだ。


「はい、それではゼノくん。答えは?」

「えっと…………………………………(8よゼノ)…8?」

「はい正解。ですがゼノくんはちゃんと復習しておくように。それからサンドラちゃん、仲が良いのは分かったから今度から答えを教えないように」

「「ハーイ」」


「それでは今日はここまでにしておきましょう。質問のある子はあとで聞きに来ても構いませんからね。

 それから明日はいよいよ適正属性の検査を行いますからね、くれぐれも遅刻しないように。」


 明日は今年で5歳になる子供全員がついに自分の適正属性を知ることになるのだ。無論それだけで魔法が使えるようになるわけではないのだが、どの魔法を覚えるかの方向性を決めることができるようになるのだ。

 子供たちは友達同士でどの属性だったらいいとか、きっと自分はこんな属性だといった感じで盛り上がっていた。そしてそれはゼノも例外ではなかった。


「ねえサラ、サラはどの属性だったらいいと思う?」

「う~ん、わたしは雷か火がいいな。暗いところでも本がよめるし。ゼノは?」


「僕は水か地だったらいいな。水なら喉が渇いたらいつでも飲み物が手に入るし、地なら丘の上に秘密基地をつくれるし」

「秘密基地か~それなら樹属性もあればテーブルや椅子が作れるね」


 やはりゼノも男の子特有の秘密基地への憧れが少なからずあった。サラの方はそうでもないのだが純粋に思ったことを言ってみた。


 荷物をまとめて二人は集荷所を出た時には時刻はすでに午後2時を回っていた。せっかくの晴れなのだが生憎と連日の雨の所為で地面は抜かるんでいて、とても外で遊ぶ気にはなれなかった。


「この様子だとみんな遊ばずに帰ったようだね」

「うん。これはまともに走れないわ。……そうだゼノ、今日はわたしの家で遊びましょ!なんならそのまま家で晩御飯を食べていこうよ!」


 ゼノが毎日自分の夕食を外で済ませているのを知っているため、サラは名案と言わんばかりにそう提案した。ゼノはサラの両親に迷惑がかかると思い断ろうとしたが、結局サラの猛烈な勢いに流されて承諾したのだった。




-----------



~ハング村・アルフレイン家~


 ここはゼノの住むアルフレインの家。この家の地下室に家主であるザイ・アルフレインは居た。

 部屋の中には何かの資料や怪しげな魔法陣の描かれた紙が散らばっていた。それらを片付けようともせずにザイは部屋の中央に置かれた机で紙に何かの計算式を書き込んでいた。


 すると突然扉をノックした音が部屋に響いた。しかしそれを無視して作業に没頭するザイ。何時まで経っても反応がなかったため、ノックした人物は勝手に扉を開けて部屋に入ってきた。


「……入室を許可した覚えはないぞイリーザ」

「なんだい、やっぱり居るんじゃないか。居るのなら返事くらいしてほしいもんだねぇ」


 扉の方を見ようともせずにザイは淡々と告げた。しかしイリーザと呼ばれた女性は不機嫌そうな声で反論した。

 足元に散らばる資料等を踏まないようにしながらイリーザはザイの正面の席に座った。


「で?完成の目処くらいはたったのかい?」

「発動だけでもあと数年かかりそうだ。その上どのような結果になるか迄は計算仕切れんな」


「まあ妥当なとこね。そう言えば話は変わるけど明日はアレの属性検査の日だそうよ」


「特に興味は無い」


「何にせよ残りの期間はどっちも(・・・・)あと5年よ。それじゃまた来るわ」








「……そう、興味は無い。結果の知っている検査など」 




-----------


~ハング村・ルミール家~


「ただいまー!」「お邪魔します」

「あらあら、いらっしゃいゼノ君」


 玄関になだれ込むサラとゼノをサラの母であるキャロライ・ルミールが笑顔で迎え入れた。

 

「ママ、今日の晩御飯はゼノの分も作ってね」

「はいはい解ってますよ。ゼノ君も遠慮しないでいいからね」

「えっと、御迷惑をお掛けし「行こうゼノ!」ちょっとサラ引っ張らないでって…!」


 そのままゼノはサラの部屋まで引きずられていった。


 サラの部屋は特別広くはないが子供二人が遊ぶには十分な広さだった。

 部屋で一息つくと二人は明日の属性検査や近い内にある夏祭りのことで盛り上がったり、今日出された宿題をしたりしながら過ごした。ゼノは勉強が苦手なのでサラの半分くらいのペースで宿題を進めていたが間違いが多く、あとでやり直すはめになった。


「な~サラ…遊びにきたはずだったのに勉強会になってるのは何でさ?」

「だってゼノ一人じゃ絶対にサボるじゃない。

 そしたらまたゼノだけ居残りになって遊べなくなるでしょ?

 それが嫌なら我慢しなさい!」


 結局勉強会は晩御飯になるまで行われた。

 リビングからキャロライの二人を呼ぶ声が聞こえたので行ってみると、既に料理が用意されていた。席にはキャロライと何時の間に帰って来ていたのかサラの父であるサンドマン・ルミールが座っていた。


「こんばんわゼノ君、久しぶりだね」

「どうも御邪魔してます」

「相変わらず君は固いね君は」


「さあ二人共早く席に着きなさい。今日はハンバーグよ」

「本当!やった!!」


 ハンバーグと聞いてサラが歓声をあげた。ちなみにこのハンバーグはゼノが初めてルミール家に遊びに来た時にも出されたもので、ゼノもこのハンバーグが大好物なのだ。


「二人とも明日は属性検査でしょ?折角だから万全の状態で受けないとね」

「すいません僕まで頂いて」

「もう、気にする事無いのに…。ところでパパ、属性検査ってどんな感じなの?」


「そうだね、水晶玉に手を乗せるだげだったから案外あっけないものさ」

「手を乗せると水晶玉が光って色が浮かんで点滅するのよ。たとえば火属性なら赤く点滅するし、二つあったら交互に色が変わるのよ。」

「それに水晶玉の光の強さが魔力量の目安になるから明日な適性属性と魔力量の両方がわかるんだ」


 ハング村はどちらかと言えば田舎の村だ。普通に生活していく分には基礎魔法が使えれば問題ないため、普段魔道具の類いを目にする事などないのだ。

 そのため説明を聞いたゼノとサラは明日初めて見る事になる魔道具にとても興味をもった。二人は今からそれを楽しみにするのであった。



-----------



~翌日~


 そして遂にその日は訪れた。

 朝早くから検査対象の子供たちとその親が集会所に集まっていた。


 子供たちは皆緊張した面持ちで、親達はそれを微笑ましく見守りながらその時を待っていた。

 待つこと数分、遂に村長が測定器の水晶玉を持って皆の前に立った。


「オホン……ではこれより属性検査を執り行う。

 呼ばれた子から順番に前に出てきなさい。」


 検査は順調に進んでいった。ほとんどの子は属性は一つだけで、たまに二つある子が出るがその子達は皆魔力が少なかった。


 検査が終わった子は友達同士で、或いは親に自分の結果を話していた。

 そんな中で突然測定を見学していた大人達が思わず感嘆の声をあげた。たった今測定した子の結果が群を抜いていたからだ。


「凄いぞこの子…」「測定器がこれ程強い光を放つとは!」「属性も複数あるし、これは将来有望かもしれませんよ!!」


 と大人達は騒ぎだした。属性を複数持って且つ今日の測定で暫定1位の魔力量が計測されたのだからそれも仕方がないだろう。


「ハッハッハ! どうだ見たかね君達、これが才能の違いなのだよ!!」


 この子供はシムジウ・ハング。ハング村の村長の孫でありとても傲慢な人物だった。そして測定の結果、風と火の2属性に加えて一般平均以上の魔力量を秘めている事が判明したため普段よりさらに傲慢な態度で周りを見下した。


 普通なら嫌われそうなものだが、彼が村長の孫であることと普段の学業成績も良いことから、彼の取り巻きになる子供はそれなりに多かった。


「さてさて、まだ測定が終ってないのはたったの4人か。この分だと僕が一番なのは決定かな」


 しかしこの彼の自信は直後に打ち砕かれることになった。


「それでは次、サンドラ・ルミール。手を」

「はい」


 サラが水晶玉に手を乗せた途端に水晶玉が強く光り直後に黄、青、緑の順番に点滅しだした。


「なんとっ!! 3つも適性属性を持っているとは!!」「信じられん!」「3つなんて初めて見ました!」「魔力量もなかなか多いじゃないか!」


 先程以上の結果に大人達は騒ぎだした。適性属性の数は生まれもった才能であり努力でどうにか出来る物ではないのだ。それが3つも有るのだから騒ぐのも無理は無いだろう。

 当然のごとく他の子供達も驚きを隠せなかった。


 しかしその結果に納得がいかない人物が一人、当然シムジウである。

 彼は常々自分の事を特別な存在と考えており、その特別な自分よりも上の結果など彼のプライドが許さなかった。

 だが同時にその測定結果に間違いが無いことも彼の頭は理解していた。測定器の魔具は普段村長が保管しているため、彼は以前にもこっそりと自分で測定した事があったのだ。その時の結果は勿論今日のそれと同じものだったのだ。

 その事実が余計に彼のプライドを傷付けた。


 サラの測定結果はハング村で過去最高の物だった。周りからの惜しみない賞賛の言葉が送られた。そして誰よりもその結果を喜んだのはゼノだった。


「やった!すごいなサラ!!」

「うん、わたしもビックリしちゃった。

 ゼノも頑張って」

「もちろん! まぁ頑張ってどうにかなる物じゃないけどね…」


 そしてその後他の二人が無事に測定を終えて最後のゼノに順番が回ってきた。ゼノはハング村の産まれではないため順番が最後にまわったのだ。


「それでは最後に、ゼノ・アルフレイン」

「はい」


 そしてゼノの手が水晶玉に乗せられた。



「……………………」

「……………………」

「………これは、どういうことじゃ?」


 村長が戸惑いながら呟いた。周りも皆声を失った。何故なら--


「水晶に色が浮かばない……?」


 適性属性に対応した色が点滅するはずなのだが水晶玉の色は全く変わらなかった。測定器が壊れたのでは?と誰かが言ったが水晶玉が僅かではあるが光を宿していたため正常に作動していることがうかがえた。


「え~測定結果は……属性無しじゃ。魔力量は…まぁ一般的に見れば低いが村の中では平均くらいじゃな」

「あの、属性無しなんて有り得るんですか?」

「ワシも聴いたことがないのう…」


 測定を三度やり直したが結果が変わらなかったため、結局ゼノの適性属性は無しと判断された。



-----------

~side:サラ~



 ゼノの測定が終わった後、わたし達はすぐに集会所から出た。その時に大人達は未だにゼノの結果について意見を交わし合っていた。

 でも何よりも印象的だったのはシムジウがゼノの事をまるで新しいオモチャを見つけたような眼で見てたことかな。


「ん~困ったな…これじゃ秘密基地どころじゃないな」

「ゼノ……その、落ち込んじゃダメだよ」

「大丈夫だよ。それよりもサラ、あらためてオメデトウ!本当にすごいよサラは」


 ゼノは自分の結果が良くなかったのにも関わらずわたしに屈託の無い笑顔を向けてくれた。……よかった。わたしに対して全く変わらないで接してくれた。


「サラ一人で水場と家具と明かりが準備できるね」

「いや秘密基地はもういいから」


 ゼノ本人は結果を気にしてないみたいだから良かった。もちろんわたしだって気にしない。これからもゼノと変わらずに親友のままでいられる。

 それを考えただけだ思わず頬が緩んだ。


「ねぇゼノ、時間もあるし丘に行かない?」

「うん!」








 でもこの時わたしはもっと警戒しておくべきだったのかもしれない。

 傲慢な人間がプライドを傷つけられた時、そのストレスが誰に向けられるのかを……



~side out~







~~~~~~~~~~~



 この日の事は今でも覚えてる。自分に才能が無いと初めて思い知った日だ。


『だがこの時お主はあの少女に対して嫉妬の念を抱かなかったのはなぜだ?』


 そりゃあ羨ましいとは思ったよ。でもそれ以上に嬉しかったんだ。

 だってそうだろ?親友が誰よりも凄い結果だったんだ、嬉しいに決まってる。


『だがそのせいでお主はこの後苦しむことになったではないか?』


 うん。でもそれはサラには関係ないだろ。だからサラを憎いと思ったことは無いよ。


『そうか……。

 それでは次の記憶へ移ろうか。恐らくお主が初めて怒りと憎しみ……そして悲しみを感じた記憶へ』



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