2話 第二の故郷
学園までまだまだかかりそうです。
ここは「クローゼ村」、周りを樹海に囲まれた「大国アトモス」にある古びた村である。
その村の入口にたくさんの村人が集まっていた。
「それじゃぁゼノ、気をつけて行ってくるんじゃよ。」
「はい、村長!」
「ところで、ミリアは何処にいるのかの?」
この老人はクローゼ村の村長、村人皆に好かれているおじいちゃんである。
「ミリアならそこで友達と話してるよ。」
と、ゼノが指を指した方では、ミリアが同年代の女友達に囲まれ別れの挨拶を交わしていた。
「ゼノ君!王都に行ったら気をつけるんだよ!知らない人について行ってはいけないからね!」
「うん、ありがとうお兄さん」
「オッス!ゼノ、お前がいなくなると狩りが忙しくなっちまいな。」
「うん、ゴメンおっちゃん」
「ハッハッハ!!!そんなん気にすんな!それにしてもたった五年であの『どヘタれゼノ』がこんなに立派になりやがるとはなぁ。」
「こら、あんた邪魔だよ!!さっさとどきな!!!…ゼノ、つらい事があっても挫けるんじゃないよ。それからミリアちゃんのことをしっかり守るんだよ!」
「わかりました、おばさん。…それからもう少しおじさんに優しくしてあげてね。」
(本当にこの村の人達はいい人ばかりだ!
よそ者の自分をあたたかく迎え入れてくれただけじゃなくこんなに別れをの言葉をかけてくれるんだから。)
「そろそろ出発します。準備をしてください。」
と学園行き魔動車の運転手が告げた。
ちなみに「魔動車」とは、百年ほど前に馬車に代わる交通方法として発明された魔力で動く馬要らずの馬車である。利点として、交通速度なら馬車よりも格段に速く、さらに馬の休憩も必要としないすぐれものである。
ただし、重い物を運ぶことはできないため、行商人などはいまだに馬車を使用している。
ここクローゼ村にも魔動車はあるが、学園行きの魔動車は王都で開発された最新型なので、村のそれとは比べ物にならない性能なのである。
ちなみにクローゼ村のような王都から遠くの村や町にいる生徒にはこのように王都から迎えがくるのである。
閑話休題
「それじゃ、ミリア行こう!!」
「うん!」
「ゼノ、ミリア、体に気をつけるのよ?」
「まぁアレだ!二人共楽しんでこい!」
「は~い♪」
「はい。」
ゼノとミリアはミランダとジンにそう返した。
「それじゃ行ってきます!」
こうして二人を乗せた魔動車は王都を目指して出発した。ゼノの第二の故郷をあとにして…
「ところで、わしらは名前すら紹介なしなのかのう…?」
………こうしてゼノは第二の故郷を旅立った。