41話 森の主との遭遇
三人はあの後、とある大木の根本にポッカリと開いた洞穴に隠れて謎の追跡者から逃れることに成功した。もっとも、追跡者はまだ諦めてはいないらしく、遠くのほうで再び大きな足音や叫び声が聞こえてくるのだが。
「二人ともとりあえずコレを飲め」
アリシアが差し出したのは『魔力回復薬』だった。
二人は其を受けとると早速口に含んだ。
「「!!ーー(不味っ!)ーー」」
「勿体ないから吐くなよ。我慢して飲み干せ」
あまりの不味さに思わず吹き出しそうになったが、二人は何とか飲み込んだ。
飲み終ると徐々にだが、体の奥から魔力が満たされていくのを確かに感じた。
「それで一体何があったんだ?それからさっきのは何者だ?」
「分かった…」
そう答えると二人は先程のことを語りだした。
それは突然のことだった。突然奥の黒い森から大量の魔物がなだれ込んできた。マルクは得意の熱感知の魔法でその異変を読み取っていた。
魔物の大半は只のゴブリンだったが数が多く、マルクの手には負えない状態であった。また、時を同じくして後方でも魔物が大量に"発生"していたため、必然的にマルクの逃走経路は横方向に搾られていた。
一方ナズナは何故か不自然な程に魔物を見かけなかった。まるでその地点だけ魔物が避けているかのようだった。
魔物を避けて移動していたマルク、そして魔物がいない地点にいたナズナ、隣のエリアということもあり二人は半ば必然的に合流したのだった。
「それで二人で行動することにしたの。私もマルクくんもまだ水晶玉を見つけてなかったから」
「ナズナはともかくマルクも見つけてなかったのか?」
「うん、今日は水晶玉の位置を感知しても毎回近くに魔物がいたんだ。それで魔物が居ない所を探してたらいつの間にか、って感じかな」
しかし、問題はその直後に起こった。
マルクが熱感知を放射状に発動したときだった。円形の感知範囲のギリギリ外側に巨大な熱源を感知したのだ。二人は直ぐに"それ"から距離を取ろうとした。しかし--
「突然"そいつ"が真っ直ぐ僕達に向かってきたんだ。それも駆け足で」
そして二人は森の中を走った経験など皆無だったため、直ぐに追い付かれてしまった。そして、ナズナを逃がす為にマルクが足止めで迎撃に向かって先程の場面に繋がる。
「今思えば、"アイツ"が居たから他の魔物が彼処に居なかったんだと思う。もしかしたら森の奥から来た魔物はアイツから逃げて来たのかも……っ!!」
「!?--マルクくん!」
話の途中で突然マルクが脇腹を押さえてうずくまった為、ナズナが心配そうに呼び掛けた。
「取り合えずマグリット、お前は少し休め。たぶんさっきまで痛覚がマヒしてたんだろうが、その様子だと痛みだしたようだな」
「ぐっ…で、でも!」
「どのみち今は下手に動けない」
アリシアの説得の末、渋々ながらマルクは従うことにした。
「取り合えず『熱感知』はアタシがやってお--っ伏せろ!!」
その瞬間、三人の頭上の大木が轟音とともに薙ぎ倒された。そして、大木を薙ぎ倒した犯人が顔を覗かせた。
「!!--あいつだ」
それは全長4メートル程の巨体で裸は暗い緑色をしていた。体格はでっぷりとしているが腕はとても太く筋肉質で、その手には木の幹そのままの太さの棍棒が握られていた。
「マジかよ……コイツは!」
それは本来なら暗黒の森の奥にある黒い森、その最深部に生息している筈の魔物だった。『暗黒の森の主』と呼ばる討伐難易度レベル4の魔物
「トロル……!」
『ブオオオオォォォォ……!』
アリシアの驚愕の声に被さるようにトロルの雄叫びが森の中に鳴り響いた。
「ナズナ!マグリットは今下手に動かせない、だから地面ごと安全な場所に移動しろ!」
「でもアリシアちゃんは!?」
「アタシはこれでも冒険者だ!余計な心配は無用だ!」
「分かった、気をつけて……『サンドカーペット』」
ナズナはマルクに衝撃を与えないように砂で運んだ。
それを見届けてアリシアは双剣をかまえてトロルを見据えた。しかし、先程の言葉とは裏腹に冷や汗を流していた。なぜなら--
(トロルか…アタシまだレベル3だから単体で戦ったこと無いんだよな)
~side:???~
まったく、初日トップだったわりには大したことなかったな。せっかく近くにいたトロルをけしかけてやったのに…
「しかしまぁ、今度の奴はなかなか期待できそうだ」
あれならトロルが本気を出しても簡単には死なないだろうな。いいデータがとれそうだ。
「そういやアレは何処にいったんだ?確かエリア1だった筈だが」
アレには更に面白いもんを用意してるってのに、コレじゃあ無駄骨だったか。
「まぁいい、今はトロルのデータを優先だ…精々足掻いてくれよ、お嬢ちゃん」