40話 暗黒の森の化物
大分間があいて申し訳ありません。
しかも短くてごめんなさいm(__)m
リアルが忙しすぎて嫌になってる今日この頃…
アリシア・ラゲイルは『属性付加』を施した双剣を振り回して敵を焼き付くしていた。
周りには消し炭になった魔物の躯が無造作に転がっていた。
「邪魔だっつの!」
目の前の魔物に向かって炎を飛ばす。勢い余って周りの木々に着火してもアリシアは気にしない。
「グゲゲ…」「ゲヒャァァァァ!」「ギシャシャシャ…」
「鬱陶しいんだよ!」
襲いかかってくるゴブリン達を一振りで焼き払う、ついでに木々も焼き払う、それでもアリシアは気にしない、全くもって気にしない。
漸くゴブリンを全て追い払ったため、アリシアは一息つくことにした。腰に下げた袋から小瓶を取り出して中の薬品をがぶ飲みした。
「ぅ~~…相変わらず不味い、でも飲まないと魔力がもたないし…」
アリシアが飲んだのは市販されている『魔力回復薬』である。この薬は今回合宿を行うと発表されたその日に3時間並んで手に入れた貴重な代物だ。因みに値段は10個セットで3000Gと高めだがこれでも回復薬の中では一番安い。
魔力は回復するが味が最悪と評判(?)の品物だ。もっとも更に高価な回復薬なら美味な物もあるが、彼女は師匠から『冒険者がいちいち味に金をかけるな』と教えられているため回復薬はいつもこれである。
「だあ~~もう!明らかに異常過ぎるだろ!」
アリシアは悪態をつきながら後ろを振り返った。
焼け野原が広がっていた。正確には火は既に消えているため焼け跡だが。とにかく昨日より明らかに大きくなったそれを見て、アリシアは異常を確信していた。
「回数もだけど一回辺りの個体数も増えてるよな、これ」
これまでのゴブリンの数は既に50体を越えていた。襲撃される度に大技を繰り出しているせいで、手持ちの魔力回復薬は残り3本となっていた。
アリシアは双剣を納めて『熱感知』を発動して周りを探った。マルクのそれと比べて範囲、精度ともに大きく劣っているが、それでも見えない場所にいる敵を探すことができるため、ちょくちょく使ってるのだ。
「大丈夫そうか。それにしても随分遠く迄来たな……たぶんとっくに隣のエリアに入ってるし」
最初は課題の水晶玉を探していたのだが、度重なる魔物の襲撃のせいで何時の間にか進路が逸れていたのだ。
今更後戻りするのもスッキリしないため、アリシアはそのまま進み続けていたのだ。だがあまりの進みにくさに流石にうんざりしていた
「やっぱり戻ったほうがよさそうだ」
そして一歩踏み出したその時だった。突然バン、という破裂音が鳴り響いた。
その音に聞き覚えがあったアリシアは音がした方向を凝視した。
「今のはマグリットの銃か?」
確信は無いがアリシアは走った。
既にアリシアの中ではマルクも友人にカウントできる程度に関わっていた。
そして走ること数分、正面から誰かが走ってきた。それは黒い髪で制服を着た少女--ナズナ・イスルギだった。
先程の破裂音から、アリシアはマルクがいると思っていたのだが、目の前から別の友人がやって来たため思わず足を止めて凝視した。
そのため次の光景がはっきりと眼に写った。
ナズナの後方から再び破裂音が鳴り響き、それとほぼ同時に大地が揺れた
そして直後に砂煙とともに木々の間から飛んできた傷だらけのマルクとそれを見て悲鳴をあげるナズナ
「は?」
訳がわからずアリシアの口からはそんな間の抜けた声が零れでた。
ナズナに支えられてマルクは左腕を押さえながらヨロヨロと立ち上がり、たった今自分が飛んできた方を睨みつけた。
どうやら二人ともアリシアの存在に気づいてない様だった。
「ナズナ!マルク!何があったんだ!」
「アリシアちゃん!」
アリシアの声に反応してナズナが振り返った。
そしてアリシアが二人に駆け寄ろうとした次の瞬間--
『ブオオオオォォォォ…………!』
--大気を震わせる程大きな重低音が森の奥から聞こえてきた。
「はぁ…はぁ……ごめん…ナズナさん……"アイツ"を振りきれなかった…」
傷の痛みに顔をしかめながらマルクは手に持った自身の《杖》である拳銃を声がした方にかまえた。しかし、銃身が震えていてとても狙いがつけられるような状態ではなさそうだった。
ナズナは目に涙を溜めながらマルクを支えている。
「おい!何だ今の音!?」
「アリシアさん……ナズナさんをお願い……早くしないと"アイツ"が来る…!」
「とりあえず逃げたほうがよさそうなのは分かった。ただし、お前は他人の心配より自分の心配をしろ!」
アリシアはナズナと反対側からマルクの肩をかついで、三人は即刻その場から離れた。
木々の間を縫うように駆け抜けて背後から追ってくるナニカから逃げるのだった。