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砕牙~白銀の破壊者~  作者: 伊東 無田
動乱の物語
38/76

35話 課外授業

5月 第一土曜日(1週間は普通に月火水木金土日で行くんで夜露死苦ぅ!!)


 『暗黒の森』の入口に第一魔法学園の高等部一年生の総勢500人が集まっていた。


 この『暗黒の森』は中心部の木の葉の色が黒くなっているためそう呼ばれている。この森で"発生"する魔物は主にゴブリンなどの下位の亜人種であるため駆け出し冒険者にとってはうってつけの狩場である。もっとも、中心部の黒い森まで行くとそのかぎりでは無いのだが…


「それでは事前に連絡しておいたと思うが一応内容を確認しておくからよーく聴け!」

 一年生の学年主任であるCクラス担任のゴンドーラ・レインズ先生(男、45歳)が徐に口を開いた。


「既に聴いてると思うが今回の課外授業は二泊三日の合宿だ」

「「「「「ちょっと待てえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」」」

 説明を遮るように一年生の中で唯一制服を"着ている"集団から叫び声が上がった


「……そこ静かにしろ、何事だ?」

「待ってください、私達だけ今回の課外授業の詳細が知らされていないんですけど!?」

「合宿だなんて一言も聞かされてません!」

「「「そーだそーだ!!」」」


「…各クラスの担任にはあらかじめレターボックスに説明書きを入れておいたはずだが?」

「え、そうでしたっけ?」


 1-D担任のマオ・フェイが全く心当たりがないという顔をしながら首を傾げた。


(((やっぱりお前かーーー!!)))

 それは1-Dの生徒全員と事情を理解した教師陣の心の声だったという…


「静粛に…それではあらためて説明に入らせてもらう」


 今回の課題内容を説明すると以下のようになる

1,森の中にばらまかれている水晶玉を探すこと


2,水晶玉を見つけた生徒はプレハブ小屋で寝る事ができ、見つけられなかった生徒は外で寝ること


3,時間は夕暮れまで、ただし三日目は正午まで。また、水晶玉を見つけたら魔動車に乗って王都まで帰れる


4,水晶玉の数は1日200個、つまり毎日最低300人は野宿することになる


「という内容に成っている。なお、不正を行った生徒は相応の罰を与えるから覚悟しておけ」





ーーーーーーーーーーー




「どういうことですかフェイ先生!!」

「私達何にも知らされてませんよ!!」

「しかも他のクラスの奴等は誰も制服なんて着てないじゃないか!!」


-現在の状況-


Dクラス:全員制服及び野宿の準備無し


それ以外のクラス:各々が装備を揃えて準備万端


「ぶっちゃけ大ピンチじゃないすか!」

「彼処の奴等なんてみんな革鎧着てるぞ!」


 大騒ぎするDクラス一堂、しかし肝心の担任はしきりに首を傾げていた。


「それがおかしいのよね。 先生のレターボックスにはそんな物なかったんだけど…」


 珍しく真剣な表情のマオ、 もっとも普段が普段のためにまったく信じてもらえて無いのだが。


「まぁこの件は保留にしときましょ。「「「いやアンタが言うな!」」」 それよりも此れからみんなにはそれぞれにスタート地点に移動してもらいます。」


 スタート地点は五ヶ所、一ヶ所辺り各クラスから二十人が集められて一斉に開始となる。






~第一スタート地点~


 このスタート地点には運良くマルクとナズナの二人がそろって派遣されていた。この二

人はこの1ヶ月間のクエストで殆ど行動を共にしていたため、互いに居ると心強い存在になっていた。


「今回もよろしくねマルクくん」

「うん。一緒に頑張ろう」


 しかしそんな二人を見る周りの生徒達の反応は様々だった。




「見ろよ彼処の制服の奴等、あれって例の"寄生虫"だろ?」

「あの何時も『紅嵐』に纏わりついてる奴等か?」

「『紅嵐』って誰?」


「あの子って『ハイテンション』先輩の妹さんじゃない?」

「あっ本当だ。隣の男子は何?もしかして彼氏?」


「あいつは確か……『ツッコミ』のマグリットか!?」

「例の合コン先生に正面からツッコミをかますあの伝説の!?」

「隣の黒髪は誰だ?」


「クソっ!リア充爆発しろ!!」


「あの二人ってお似合いだよね」

「分かる~」

「でも付き合ってないらしいよ」

「え、うそ!?」




 当人達の預かり知らぬ所でそこそこ大事になっていた…






~第四スタート地点~


 この地点にはサンドラ・ルミールが派遣されていた。

 現在サラは一人で開始を待っており周りの生徒(主に男子)達がチラチラと彼女の様子を窺っていた。


「おい見てみろよ。『紅嵐』のサンドラ様だぜ」

「なんだその『紅嵐』って?」

「ああ実は去年--」


「今日は"寄生虫"も"危険物"もいないみたいだぞ」

「オレ告白ってこようかな?」

「やめとけお前じゃ無理だ!」


 といった会話が僅かながら聞こえてくる。

 そんな中、一人の生徒がサラに近づいてきた。もしそれが男子なら周りからは勇者又は裏切り者と呼ばれるだろう。しかし件の生徒は男子では無かった。


「あらま、アンタもこのスタート地点だったんだ」

「貴女は確か…タイ「違う! 一文字目から既に違う!!」…アリシアだっけ?」


 近づいてきたのはレザーアーマーに身を包んだアリシア・ラゲイルだった。彼女はEクラスだった為、しっかりと準備をして今回の合宿に参加していた。


「ったく! 人の名前を間違えるなよ…まあこの間合ったばっかだからしょうがないけど」

「安心して、わざとだから「わざとかよ! 何も安心できないぞ!!」 それで何か用?」


「いや別に特に無いけど。ただアンタのクラスだけアレじゃ不公平だと思ってね」

「それで?」

「一応顔見知りなわけだから気になっただけ」

「からの~?「ねぇよ! なにコイツ、怖!何故このタイミングで無茶振り!?」」







「あっ!彼処に居るのってサンドラさんとアリシアさんじゃない?」

「本当だ。いいな~私もあの二人ぐらい美人だったら人生違うのにな~」


「おいおい、誰だよあの貧にゅ「『爆ぜろ』!」ブベッ!」

「大丈夫か!?しっかりしろ!」

「やべえよあの女!」


「カッコイイ!憧れちゃう!」

「私はああは成りたくない…」






~第五スタート地点~


 ここまでの流れで読者諸君もわかってると思うが(え? 上から目線がウザい?サーセン)最後はゼノの様子である。

 現在ゼノは木に背を預けて仮眠を取っていた。やることが全く無いから暇なのである。


「Zzz…Zzz…フゴッ……Zzz…」


 ぶっちゃけゼノは一部の生徒からかなり嫌われている。一番の理由は学年で実は人気があったサラと仲が良いからである。


「うわ…"危険物"がいる」

「本当だ、ついてねえぜ」


「あれが色々噂のアルフレインだ」

「ああ、しょっちゅう喧嘩してるやつだよな?」


「あの人ってあの噂の人よね?」

「ルミールさんにいつも付き纏ってる人」

「違うわよ、あれはカモフラで本命は金髪の男子生徒って噂よ…」

「…それって誰情報よ?」


「あっ!この間血塗れで街を歩いてた人だ!」

「えっ?黒焦げじゃなかったか?」


 一部事実から大きく外れているがこのように良くない噂が流れているため本来何のかかわりも無い生徒からも敬遠されがちなのである。





 その頃、『暗黒の森』の奥深くでフードを被った男が一人佇んでいた。

 男は手に持った資料を再び眺めていた。


「ククク……それにしてもどんな偶然だこりゃ?」


 男が眺めているのは名簿だった。

 名簿には今回の合宿に参加する生徒及び教師の名前と所属クラスが書かれていた。


「わざわざ学園に忍び込んだ甲斐があったってもんだ」


 男は数日前に学園に忍び込んで今回の合宿の詳細が書かれた教師用の書類を盗んでいた。今回行う"実験"に利用出来る物をしに来ていた時に見つけたのだ。


「実験にちょうど良いイベントが見つかった上、面白いものを見つけたもんな~」


 ふと目にした資料にその名前が載っていた。


 -それはずっと昔に見た名前だった

 -それは男の記憶の片隅に僅かに残っていた名前だった

 -それはきっと名簿を見なければ思い出さすことのない名前だった


「ま、何にせよ明日の2日目が楽しみだ……ククク…ヒャハハハハハハハ!」


 男の不気味な高笑いは誰の耳にも届く事無く鳴り響いた。


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