31話 竜虎相打つ?
~side:マルク~
いつの間にか食堂に来ていたサンドラさんがゼノの左隣の席に座った(右側はアリシアさんが座ってる)。
本当に何時来たんだろう--いや、そんな事はどうでもいいか…そんな些細な事より…
「もう一度聞くけど、貴女はどこの誰なのかしら?」
「アンタこそ何処の誰だ?」
二人が物凄い火花を散らしてしる。
ハッキリ言って怖い。大猪の突進よりもずっと恐ろしい。
隣のナズナさんもガタガタ震えている。
「やあ、おはようサラ」
--いや、ゼノ…よくそんな何でも無いように挨拶できるね。僕達だったら声が震えて喋れないよ絶対。
「コイツはアリシア。シグマの妹で、俺と同じく編入組だ。」
ああ、やっぱりアリシアさんはシグマ先輩の妹だったんだ……顔立ちもどことなく似てるし、何より名字がラゲイルだし…
「--サラ? あんた今サラって言わなかった?」
「ああ、こっちはサンドラ。俺の幼馴染みだ。」
なんかアリシアさんが『サラ』という単語に反応した。そういえばロラン先輩とシグマ先輩も何か知ってそうだったな。
「ねぇゼノ? そこのアリシアさんとはどんな関係なの?」
サンドラさんが笑顔で聞いた…もちろん目は全く笑ってないけど--ハッキリ言って怖い…物凄い怖い。
「ん?そ~だな~…一緒に修行したりクエスト行ったりしたし…冒険者仲間ってかんじかな?」
「そっか、ただの冒険者仲間なんだ~。」
うわ~…アリシアさんの目が凄いつり上がった。ナズナさんは小さく悲鳴をあげてるし…
……というかサンドラさん、そうな怒らせるようなことを言わないでよ、恐いから。
「ねぇバカゼノ、そこのサンドラとはどんな関係?」
口調は穏やかだけど雰囲気は穏やかじゃない…もうこのテーブルに居るのが嫌になってきたよ…
「どんなって…まぁ普通に幼馴染みだけど。」
「ふ~ん、普通の幼馴染みなんだ~。」
…ああ、もう嫌だ。今度はサンドラさんが手に持っていたスプーンを力ずくでねじ曲げてるし…
もう何時取っ組み合いになってもおかしくない雰囲気だ…何とかしないと
「ちょっとゼノ、こっち来て!」
僕はとりあえずゼノをトイレまで引っ張って行った。…その時ナズナさんが何かを訴えるような視線を向けてきたけど今はしょうがない……しょうがない、よね?
「ゼノ!何であんな両方共怒らせるようなこと言ったんだよ!」
「いきなりどうした!?」
「どうしたじゃないよ!物凄い恐かったぞあの二人!何でゼノは平気そうなんだよ!?というか今一人であそこにいるナズナさんが心配だよ!」
「平気なわけないだろ!ただのポーカーフェイスだよ!…というか何であの二人、険悪な態度なんだろ?ものっそい恐いんだけど。」
……え?まさか原因に気づいてない??
いやいや…流石にあそこまで露骨な反応されてんのに気づいてない事ないよな…
「あのさ、ゼノ?ゼノはアリシアさんの事をどう思ってる?」
「さっきも言ったとおり冒険者仲間だよ…まぁ相棒とも言えるかな。」
「じゃあサンドラさんの事は?」
「だからさっきも言ったとおり普通に仲の良い幼馴染みだけど。」
「……………………(何でそれをさっき言わないんだよ)…………………」
「どうした?いきなり黙りこんで」
「え~っと…それじゃあ二人がゼノの事をどう思っているかは分かるよね?」
「そりゃ勿論同じ気持ちだろ?」
………だめだコイツ、全く気づいてない
「そろそろ戻ろうぜ。」
「ソウダネ…」
~side out~
二人がトイレに行っている間もサラ達は睨みあっていたようだった。
マルクが再び席に着くやいなや、ナズナがマルクの腕にしがみついてきた。
「ぅぅ…こ、恐かった…。」
「ご、ごめんねナズナさん」
マルクは申し訳なさそうに謝った。もし自分が逆の立場だったらと想像したら、やはりこの険悪なムードの中に一人取り残されるのは耐えれないかもしれないからだ。
「そういえば…マルクは今日何か予定あんの?」
「このあとギルドに行こうかと思ってたんだけど…。」
「何だ、クエスト受けんのか?」
「いや、魔力の総量を上げるために新しいトレーニング方法でも探そうかと思ってたんだけど。」
「じゃあ俺が知ってるトレーニング方法教えるから早速行こうか!………ていうか早くここから逃げたい」
最後だけ小声でゼノがそう口にした瞬間にアリシアとサラが目の色をかえて反応した。
「アタシも今日は暇だから行こうかと思う!一応トレーニングにも興味あるし!」
「わたしも今日は何も予定が無いから一緒にいこうかしら!」
「「えっ!?」」
((サラちゃん(サンドラさん)…今日は買い物に行くんじゃぁ…))
「そ、それじゃあ行こうか…?」
「その前にゼノは着替えたほうが良いよ、絶対。」
「そういやそうだな、一度寮に戻るかな」
現在のゼノの服装は(アリシアのせいで)血塗れのうえに焦げ目だらけなのである。
「そういえばアンタ、どの学生寮に住んでんの?」
「ああ、それは--「ゼノが住んでいるのは水の学生寮よ」
「んなわけないだろうが!!アタシは水の学生寮に住んでっけど見たことねぇぞ!」
サラが割り込んで嘘を言ったがすぐにアリシアにばれた。
場の空気は更に悪くなり、残りの三人はそれを見て項垂れるのであった。