29話 暴虐の火炎
「ひ・さ・し・ぶ・り、バカゼノ♪」
アリシアは満面の笑みをゼノに向けた。無論眼は笑ってないが。
ゼノはというと全身から冷や汗を流しながら見構えている。
「さてさて… 何で今まで連絡をよこさなかったのかな?言い訳があるなら聞いてあげる。もっとも聞くだけだけどね♪」
つまり許しはしないようだ。
「落ち着けアリス、俺も忘れてた訳じゃないんだよ!ただ忙しかったから連絡する暇がなくてだな…」
「へー、ロランの呼び出しには応じたのに?」
「いや、それは…」
「あきらかに今日は暇だった筈だよねー?」
アリシアから放たれるプレッシャーによってうまい言い訳が思い付かないゼノ。
「いやいや、だから本当は今日会いにいこうかと思ってたんだ「あんたさっき逃げようとしてたでしょ?」……てへっ♪」
『アリシアは『炎弾』を放った』
『しかしゼノはヒラリと身をかわした』
「避けるなーーーー!!!!!」
「無茶言うな!!」
ゼノはアリシアの猛攻を避けながら考えた。
(やばい!このままだとコンガリ焼かれる!どうにかして怒りの矛先を変えねば!)
するといつの間にか囲いの中に入っていたロランが笑いを堪えながら見物しているのが視界に入った。
(これだ!俺が生き残るにはこれしかない!!)
ゼノはロランにアイコンタクトを送った。
(…地獄に堕ちろクソ野郎)
(おい…まさか!?やめ--)
「聞くんだアリス!先週連絡しようと思ってたら偶然会ったロランが『べつに連絡なんてしなくていいんじゃないか?』って言ったから(嘘)。」
この時ロランは思った--
(この野郎…やりやがった)
--と
「へ~そうなんだ。それならロランにもお仕置きが必要だよね~」
口調はとても軽いがアリシアからはとてつもない殺気が漏れだしていた。あまりに強烈なため囲いの外にいた生徒達は遠くに避難した。
ロランも勿論逃げ出そうとした。しかし背後からゼノに羽交い締めされて逃げれない。
「落ち着け!!落ち着くんだアリシア!!!俺は関係無い!」
「大丈夫、ちゃんと分かってるから。焼き加減はレアで勘弁してあげるから…二人共ね!」
アリシアは自分の《杖》である双剣を振りかぶった。どうやらゼノの作戦は失敗して的が二つに増えただけだった。
「消えて無くなれーーーー!!!!!」
二人に向かって炎の竜巻が迫ってきた。
((あ、これ多分死ぬな…))
そのまま二人は赤い渦に飲み込まれていった。
「それにしてもせっかくの半年ぶりの再会なんだからもっと他になかったのか?」
ようやく落ち着いたアリシアに問いかける燃えカス--もといゼノ
「あんたが悪いんだろ、まったく…」
「ふてくされんなって…てか普通はここまでやらんだろ、走馬灯が頭ん中を駆け巡ったぞ。それに見ろよロランなんて未だに気絶してるぞ。」
ゼノが指差した方には先程巻き込んだうえに咄嗟に盾に使ったボロ炭が横たわっていた。
「五月蝿い!とにかくアタシはまっっっっったく悪くない!!……まぁあんたが謝るんだったら許してあげてもいいけど」
「わかったわかった、悪かったよアリス。」
そう言ってゼノはアリシアの頭を撫でた。
「………ふん!今回は許してあげる。精々アタシの懐の深さに感謝しなさい」
「へいへい、そんじゃ帰るか。」
「ちょっと、もう帰る気?」
「まあ、朝飯もろくに食ってないしな。」
「だったらアタシも食べてないんだから何か奢りなさい」
そのまま二人は街に帰って行った…転がっているボロ炭は放置しておいた。
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ゼノ達は今、東地区の食堂に向かっている。東地区は住宅が多い、そのため客を確保しやすいため市場や食堂なども多いのだ。目的地は以前ゼノが行ったことがある食堂で、そこにゼノ達は二人で向かっている。
「それにしても二人で食いに出掛けるのも久し振りだな。」
「…え? あ、ああそうだね」
(何故かアリスの態度がぎごちないな…)
「なぁアリス、何か悩みでもあるのか?」
「い、いきなり何なの?」
「いや、さっきからなんか急に上の空になったりどもったりしてるから。
もし何かあったら相談にのるぞ」
「ゼノ……」
少しだけ顔が赤くなるアリシア
「やっぱり気にしてんのか?胸が小さああああアアアアアアアァァァァ!!!!!」
「あんたって何で何時もそうなの!!!台無しだろーが!!!!」
アリシアはゼノを殴り倒してスタンピングの嵐を喰らわせた
「痛い痛いマジで痛い!!ちょっ、シャレになんねえ!」
「五月蝿い!喋るな!!!」
「せめて踏むな重いから!」
「誰が重いだーー!!!!」
(地雷踏んだーー!)
その後五分程その場に断末魔が鳴り響いたという。