24話 仕事最終日
~side:ゼノ~
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「ハハハ…スゴい!コレ、俺がやったのか!?」
---やめろ!
「ほらほらどうした!?子供相手にその程度か?」
--やめろ!!
「その魔法はもう見飽きたよ… 他にもっと無いの?」
ーやめろ!!!
「あんたの"牙"も折らせてもらうよ。」
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「ヤメろーーーー!!」
……夢か
ここは寮の部屋?
今のはやっぱり夢か…昔の夢…
「ちっ…最悪な気分だ」
嫌な夢を見た…昔の無邪気で残酷で、能力を得て振り回して…周りの人達をメチャクチャにしてしまった…俺自身の夢を
「そういや今何時だ…?」
部屋を見回してもマルクの姿は見当たらない。代わりに机の上に書き置きがあった
『ゼノへ
起こしてもまったく起きる気配が無かったから先に行くよ。ちなみに僕は遅刻ギリギリまで粘ったからね。
マルクより』
………OK!状況を整理してみようか。
マルクは遅刻ギリギリに寮を出発、俺が起きたら既に部屋には誰も居ないと。
俺は嫌な汗を体中に感じながら時計を見た…
9:07
…寮から学園まで約40分、授業開始は9時
「遅刻だーーーー!!」
俺は急いで支度を始めた。
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現在位置 東地区のゲート
ちょうどゲートが起動しやがった…あと30分足止め決定
「何か学園に行くのダルくなってきたな…」
どうしようかな~、一応生徒会の仕事を手伝っている立場だしな~
「よし、サボろう!!」
一日ぐらい大丈夫だろ!
「そうと決まればさっそく何処に行くか考えるか。」
どうしようかな?ギルドに行って久しぶりにまともなクエストでも受けるかな。
「うん、そうしよう。」
まあ、どちらにせよここで30分足止めなんだけどな…
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な、なぜだ!
どうしてこうなった!
「何故だーーー!?」
「五月蝿いわよ!」
隣にいるマオ先生に拳骨をくらった
とりあえず状況を整理すると、
「あの後ゲート起動の直前に同じく寝坊したマオ先生がやって来てその場で鉢合わせ」
「そしてワタシが無理矢理学園まで引っ張ってきたら遅刻ということで二人して指導室に連行されたってわけ」
「おいコラ、なにコラボレーション決めこんでんだ。」
俺達のありがたい説明を聞かせてやったのに目の前の規則馬鹿は、喉元に槍を突きつけてきた
「てか生徒会の手伝い期間中にサボりとはいい度胸だ。」
「いや違うんすよシグマさん。俺のはただの寝坊なんすよ。」
実際にサボったわけではない!
未遂だからセーフのはずだ!
「あとそこの教師、貴様の遅刻理由は何だ?」
相変わらず敬語を使わないシグマの問いかけに対して先生は
「違うのよ!ただワタシは昨日の仕事の疲れが溜まってただけなのよ!」
「ちなみに先程あんたの同僚からきいたが昨日は定時で帰ったらしいな」
「………………」
先生は顔を背けて黙る
「まあ、貴様等へのペナルティーは後日通達する。だからもう教室に行け」
「「分かりやした!!」」
俺達は直ぐに指導室の外に出た
ガラガラ…バタン--
「ったく!陰険クソ眼鏡め!」
「もう、本当に腹が立つわ!」
「どうしやすかアネゴ?一杯ひっかけに行きやすか?」
「よしさっそく行くわよ!」
ガラガラ…
「さっさと行けグズ共!」
「「ハイッ!!」」
今度こそ俺達は教室に向かった
~~side out~
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~数時間後・昼休み~
いつもどおり四人で集まってご飯を食べているゼノ達。ちなみにサラとナズナは一緒に弁当を作ってるから同じ中身のためマルクと三人で弁当のオカズをよく交換したり、いつもおにぎりしか持って来ないゼノに分けたりしている。
(おかしい…)
「ねえ、ゼノ?」
「ん?」
「何かわたし達に隠してる事ない?」
サラが突然切り出した。
「何でそう思う?」
「何ていうか… そうね、違和感がある…かな?」
「ハハハ… 考え過ぎだよ。
そんじゃ俺はちょっとトイレに行ってくる。」
そういってゼノは教室から出ていった。
「一体どうしたのサラちゃん?」
「だって明らかに変よ!」
「そうかな?昨日寮に帰ってきた時は確かに変だったけど…」
ゼノの様子がおかしいと言うサラと違って、いまいちピンとこない二人
「いつもと違って無理矢理笑顔を作ってる感じがするのよ。」
(小さい頃にも見たことがある… 何かを堪えてる時の不自然な笑顔…)
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~そして放課後~
「さて、今日も集まってもらったわけだが…」
いつもどおり生徒会室に集まった四人にシグマは告げた
「今日の仕事は二手に別れて行う。
まず、俺とゼノが外回りだ。そんで残り三人はここに残って副会長の手伝いだ。」
「ちょっと待ってください。なせ二手に別れる必要があるんですか?」
すかさず疑問を口にするサラ
「質問は一切受けつけん。以上だ、行くぞ。」
「へいへい…」
「待ってゼノ!」
「心配すんな。直ぐに終るさ。」
サラに呼びかけられたがゼノは軽く流して出ていってしまった。
生徒会室を出た二人は軽く辺りを見回した後、校門に向かって歩いてそのまま学外へ出ていった。
「おい、シグ」
「何だ?」
「今日中に終わらせるぞ…」
《杖》を構えながらシグマは答えた--
「当然だ」
そしてそれを合図に二人は後方に駆け出した。
「!!っーー」
「なに!?」
そこには二人を尾行していた生徒がいた
「『エレキボウ』」
「がっ!!」
不意を突かれたため追跡者はシグマが放った雷の矢に反応が出来ずに貫かれた。
くらった相手はそのまま気絶した。
「よくも!『我を守れ大地の加護よ! ロックアーマー』」
相棒がやられたことでもう一人は冷静さを取り戻した。
「潰れてしまえ!!」
追跡者は身体中に強固な岩を纏って巨大になった拳をシグマに向かって振り下ろした。
そこへ--
「隙だらけだよ」
ゼノが追跡者の脇腹に飛び蹴りをかました
飛び蹴りをくらった追跡者は体制を少しだけ崩して、拳の軌道がシグマから逸れた
「こざかしいな、編入組の一年! しかしその程度の攻撃などこの岩の鎧の前では無力だ!」
今度はゼノに向かって岩の拳が飛んできた
ゼノは最小限の動きでそれをかわして懐に潜り込んだ
「だったら見せてやるよ…俺の切り札をね」
ゼノの右手がぼんやりと発光した。
「『魔闘術』発動…」
ゼノはそのまま岩の上から相手の胸に向かって掌底をくりだした
「くらえ… 鬼人流武闘術・波の型『衝波』」
ゼノの掌がクリーンヒットした
相手は地面に膝をつきながら吐いた
「ゲホッ!! な…何故あの程…度の…掌底で…ゲホッ」
「悪いが企業秘密だ…」
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この光景を物影に隠れて窺ってい者が一人いた
「何者なんだあの一年!?ただの編入組じゃないのか!?」
そこに背後から誰かが忍びよって、首筋に剣をあてた
「全然ちげえよ。」
「っ!?」
「おっと、動くなよ。」
そこにいたのはロランだった
「おーい、シグ~!こっちにも居たぞ!」
「でかした純粋馬鹿、これで全員だ。」
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~side:サンドラ~
え~と、とりあえず状況が把握できないから整理してみようかしら…
「質問なんだけど…何でその人達を拘束してるのかしら?」
わたし達が生徒会室で書類整理を手伝っていたら先程出ていったゼノ達が戻ってきた………お土産付きで…
わたしの隣にいる二人も訳が分からないようで、終始頭に疑問符を浮かべている。わたしの隣にいる二人も訳が分からないようで、終始頭に疑問符を浮かべている。
「あの、確認したいんですけど… その人達って生徒会の方達ですよね?」
その通り、だからこそわたし達はよけいに意味がわからない
「残念ですね… まさか本当だったなんて…」
副会長のトレアさんが肩を落とした
どうやらこの人は事情を知っているようだ。
「副会長、いったいどういうことなんでしょうか?」
「それは自分が説明しよう。」
シグマさんが口を開いた。
わたし達はみな顔を向けた。
「オマエ等も既に知っていると思うが昨日こいつ(ゼノ)が襲われた件が関係している。」
「ハイ、ストーップ!一旦止めて!!」
今とんでもない事いわなかった!?
「ば、お前それは言うなっていったろ…」
ゼノの反応を見る限りどうやら本当の事らしい。
ついでにわざと隠してたらしい。
「ちょっとゼノ!どういうことなのよ!!」
「わざわざ話す必要無いと思ったんだよ…」
「そこ、後にしろ。
それでその時の襲撃者を捕らえて事情聴取したところ--」
シグマさんは拘束されている三人を指差した
「コイツらにそそのかされたらしい。」
「「「なっ!?」」」
何よそれ…
「それで先程わざと襲われやすい場所を歩いていたら三人そろって尾行してきたから拘束した、というわけだ。」
わたし達は三人に目を向けた。向こうは苦い顔をしながら顔をそむけた
「そんじゃあそろそろ動機を話してもらおうか。といってもだいたい想像はつくけどな。」
ロランさんが三人を問い詰める……というかあなたは生徒会の人じゃないでしょう…
「最初に言っておくが…今更無実を主張しても遅いからな。仮に俺達が学外に行ったのを不信に思ったのだとしても本来なら尾行なんてせずにその場で問い詰めるのがマニュアルだからな。」
シグマさんは証言の前に三人の逃げ道を潰したようだ
それから三人が事情を話したけどその理由が--
「要するにあんた等は俺が編入組のくせに調子こいてるのが気にくわなかったから襲わせたっつーことか?」
そんな下らない理由だった。
それを聞いた副会長は残念そうに彼等に告げた。
「今まで口酸っぱく言ってきたつもりでしたが…
生徒達を先導する立場である以上、入学組と編入組に分け隔てなく接しろ、と
残念ながらあなた方には伝わらなかったようですね。」
「「「………」」」
三人は黙りこんだ
「あなた方にはペナルティーを与えます。また、今後同じ事をした場合は生徒会を除籍していただきます。」
三人はしぶしぶ頷いた
「それでは今度はあなた達四人についてですが……本日の仕事は終了とします。この件は他言無用です。いいですね?」
そういわれたのでわたし達は生徒会室を出ていった。