13話 決闘
戦闘シーンが下手くそだと痛感した今日この頃……
ゼノとシムジウは闘技場の真ん中で向かい合っていた。
「ふんっ、 無能の癖にこの僕に楯突くとはね。」
「不愉快だ。 ベラベラ喋るな。」
ゼノは今怒っていた。
自分の為にマルクが殴られたことが我慢出来なかったからだ。
「入学組と編入組の差を見せてやる!」
学園の一部の生徒の間では「入学組が編入組より優れている」という考えが流行っている。
これは受験を勝ち抜いた入学組に対して、編入組は少くとも一回は受験に落ちているからである。
「入学組と編入組の差? 結局たった三年間で縮まるぐらい大したこと無いものだったな。」
--だがゼノはそれを一刀両断した。
「貴様に思い知らせてやろう!この僕の--」
「前置きは要らない。先生の誰かが来る前にさっさと終わらすぞ。」
シムジウは自分の《杖》であるロングソードを構えた。 対してゼノは棒立ちのままだった。
「貴様!《杖》ぐらい構えたらどうなんだ!」
「生憎だが俺は《杖》を持ってないんでな、 そもそも基礎魔法を使うのに《杖》は必要ない。」
「ふん、落ちこぼれが、行くぞ! 『ファイアボール』!」
シムジウのロングソードの切っ先から火球が飛び出した。
ゼノはそれをサイドステップでギリギリ避けた。
火球はそのまま闘技場の壁に当たり、当たった箇所が熱で溶けていた。
「精々逃げ回ることだな! 『エアブレード』!」
今回は、《杖》を横に振るい風の刃を一度に二つ飛ばしてきた。
一つ目はやはりサイドステップでギリギリ避けるゼノ、 しかし避けた先に更に二つ目の刃が飛んできた。
「おっと」
ゼノは身体を仰け反らして何とかこれも避けた。 しかし、シムジウは既に火球を放っていた。
「水よ!」
ゼノは基礎魔法である大気中の水分を集める『水汲み』を使って、火球に水をかけたが、火球は一瞬スピードが遅くなるだけだった。
しかし、おかげでゼノは体制を立て直して火球をかわした。
「はっ! どうだ、これが僕の魔法だ。 どうした!避けるだけで精一杯か?」
シムジウは余裕な態度で魔法を放っていた。
~side:ナズナ~
危ない!
さっきからゼノくんはほとんど魔法を使って無い、使ったとしても何の変哲もない基礎魔法だけで、 しかもほとんど効果が無いみたい。
「サラちゃん!このままじゃゼノくんが!」
ゼノくんは飛んできたエアブレードをまたギリギリでかわした。
あのエアブレードは闘技場の石壁を軽々切り裂くぐらいの切れ味なのに。
「ねぇ、サラちゃん!」
「すごい、まさかこれほど……」
「サラちゃん?」
何だろう?ハングくんの魔法の威力なら中等部にいた同学年の子達なら知ってるはず?
現にこの場でもその威力に驚いているのは今年編入してきた子だけなのに。
「確かにハングくんの魔法はすごい威力だけど、今は感心してる場合じゃ--」
「違うわ!」
違う?
「すごいのはゼノの方よ!」
「どういうこと?」
~side out~
「そろそろ解っただろう無能! これが才能のある者とない者の差だ!」
得意気にシムジウは言い放つ
しかし--
「いや解んねえな。」
ゼノは呆れたような口調でそう言った。
「確かに俺には魔法の才能も剣術の才能も無かったけど、 お前もそんなに才能ないぞ。」
「何だと?」
「攻撃力はそれなりにあるが ……所詮それだけだ。」
「それは負け惜しみのつもりか!」
「宣言してやるよ。」
ゼノは冷めた口調で告げた。
「基礎魔法さえ使えればお前の魔法は誰にでも防げる。」
「ほざくな! 『ファイアボール』!」
「まず一つ目の『火球』だが、 熱量を高めることを意識しすぎたせいで炎が拡散している」
ゼノは右手を前に突き出して、樹の基礎魔法の『そよ風』を発動した。
「だから空気抵抗が強くなりスピードも出なければ、進行方向に対して斜めに風を当てるだけで逸らせる。」
宣言どおり火球は左方向に逸れていった。
「しかもその技、剣の切っ先からしか出ないみたいだから予測もしやすいしね。」
「バカな!?無能ごときが! 食らえ!『エアブレード』!」
「次にその『風刃』だが……」
ゼノはゆっくりと歩み寄りながら続けた。
「切れ味とスピードを特化させたせいで軽すぎる。 これも『そよ風』で簡単に逸らせる。更に--」
今度は地の基礎魔法の『石造り』で足下の土を石にして蹴り上げて風刃を迎撃した。
「刃の横腹はとても脆い」
シムジウは目の前の光景が信じられなかった。
「う、嘘だ!こんな……さっきまでかわすのがやっとだったやつが!」
「ハハハ… あの程度の攻撃をか?
というより気付いてなかったみたいだな。俺が必要最低限の動きしかしてなかったのを」
ゼノは先ほどの攻撃をわざと‘全て紙一重’で回避していた。
「で?その自慢の才能とやらはもう打ち止めかな?」
「黙れ、クソっ!! 『炎よ!集いて我が敵を焼き尽くすせ バーンフレイム』!!」
シムジウは中級魔法の『炎球』を放った。
「それも基礎魔法だけでいけるよ……」
ゼノはポケットから金属片と植物の種を取り出した
「『地よ』そして『水よ』」
『石造り』で空洞の石の玉を作りその中に金属片と水をいれた
「『雷よ』そして『樹よ』」
今度は金属片に『帯電』を使い、中の水を電気分解して、植物の種を『発芽』させて蓋をした。
「最後に『火よ』、食らえ!」
そして植物の芽に『着火』をかけると同時にソレを迫り来る『炎球』にぶん投げた。
「そんな物で僕の『バーンフレイム』を防ぐつもりか!」
「もちろんだ。 こいつは俺が考えた唯一の攻撃魔法だ」
そしてソレは『炎球』に呑み込まれ、そして爆発を起こしてた
「名前は……とりあえず『水素爆弾』とでも言っておくかな。」
そして爆発が起きたことで『炎球』の軌道がずれた。
「そ、そんな! こんなの何かの間違いだ!」
「ちなみに今の魔法は発動に時間がかかり過ぎだ。」
そしてゼノは遂にシムジウに近くにたどり着いた。
「で、これで終りか?」
「あ、あ…… うわああああ!」
シムジウは錯乱しながらロングソードを振り下ろした。
「邪魔だ!」
ゼノはそう言うとロングソードを素手で‘殴り砕いた’
「そのまま寝てろ!!」
そしてそのままシムジウを殴り飛ばして勝負が決まった。