7話 擦れ違い
~side:ゼノ~
さて、今日の予定はと…
「とりあえず西地区は学園が始まってから行けばいいか。」
よし!今日は王都の冒険者ギルドに行こう!
~side:サンドラ~
今日はちゃんと午前中に起きれた。
そういえば、休暇中にギルドに登録するように言われてたっけ。
よし!今日はギルドに行こう!
「ねぇ、ナズナちゃんはもうギルドに登録した?」
「え、そういえば忘れてた。」
「じゃあこれから一緒に行く?」
~side out~
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第一魔法学園の学生寮は十階建ての建物であり、入って右側が男子で左側が女子に別れている。
また、2~4階が中等部、5~10階が高等部となっている。
ちなみに学生寮は全部で5つあり、それぞれ五大属性の名前を一つずつとって呼ばれている。
~30分後・『火の学生寮』一階ロビー~
「ミリアのやつ遅いな…」
すると、女子部屋の方から
「あら?えっとおはようございます。」
ナズナが降りてきて、ロビーにいたゼノに挨拶した。
「あ、どうもおはようございます。」
「あの、新しい管理人の方ですか?」
と、ナズナはゼノに質問した。
「え?いや、一応生徒ですけど…。」
「そうなんですか?すいません、制服を着ていなかったからつい…。」
現在のゼノの服装は、ごく一般の冒険者が着る魔物の皮製の茶色いズボンと布の赤いシャツの上に黒いレザージャケットを羽織ったものである。
対して、ナズナは学園の制服である。
「やっぱり制服を着ていないと不味いですか?」
「いえ、そういうわけではないですよ。」
と、そこへ
「ごめーん!まった?ゼ…お兄ちゃん!」
ミリアが降りてきた。もちろん制服姿で。
「お兄ちゃん、どう?あたしの制服」
「ん?ああ、よく似合ってるぞ。」
「えへへ♪ ところで、お兄ちゃんは制服着ないの?」
「そうだな…ちょっくら着替えてくるわ。 えっと、それじゃあ失礼します。」
そう言うとゼノは階段を上っていった。
「あの、おはようございます。」
ミリアはナズナに挨拶をした。
「おはようございます。貴女は?」
「はい!はじめまして、今年から中等部の一年になるミリア・アルフレインといいます。」
「そっか入学組なんだ。はじめまして、私は高等部の一年でナズナ・イスルギっていうの、よろしくねミリアちゃん。」
「こちらこそ宜しくお願いしますナズナ先輩。」
(あれ?イスルギってどこかで聞いたような?)
もちろんヤツのことである。
「ところで、入学組って何ですか?」
「入学組っていうのはミリアちゃんみたいに、中等部の一年から学園に通っている人のことよ。ちなみにそれ以降に学園に通っている人は編入組と呼ばれているわ。高等部から通う人もそうね。」
「ナズナ先輩はどっち何ですか?」
「私は中等部の二年からだから編入組よ。」
と二人が話し合っている内に
「ごめーんナズナちゃん!お待たせ!」
サンドラが階段を降りてきた。
「もう、遅いよサラちゃん。」
「ごめんね。靴下が見当たらなくて……あら?その子は?」
「この子は新入生のミリアちゃんよ。」
「へぇ~新入生なんだ。わたしはサンドラ・ルミール、ナズナちゃんのルームメイトよ。気軽にサラって呼んでね。よろしくミリアちゃん!」
「こちらこそよろしくお願いしますサラ先輩。」
「ねぇ、もしよかったら一緒に来る?王都を案内してあげようか?」
とサラは提案したが
「すいません、実は今日は寄るとこがありまして…それに兄もいますし。」
「そっかぁ残念。それじゃまたねミリアちゃん」
そう言うと二人は寮を出ていった。
タッタッタッ……
「お待たせ!ごめんごめん、ベルトが見つからなくって!」
「遅いよゼノにぃ、早く行こう!」
遅れること5分、ようやく二人も寮を出た。
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「ナズナちゃん!あと1分しかない、急いで!」
「もう、サラちゃんが遅れるから!」
二人がゲートに着くと同時に
「それでは、ゲート起動!」
魔法陣が淡く光だして転移魔法が起動した。
一方、
「ゼノにぃ、あと1分しかないよ。」
「仕方無い、次の起動時間までその辺の食堂で朝飯食べてようか。」
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所変わって、冒険者ギルド
冒険者ギルドとは、大国アトモス、東国、そして西にある聖皇公国の三ヶ国に支部が点在する「国境の無い冒険者組織」のことである。
閑話休題
「着いた!」
「いつ見ても大きな建物だよね。入るのはじめてだけど。」
サラとナズナの目の前には、石造りの建物があった。
高いは4階程度だが一階辺りの面積は、他の建物の2.5倍ほどある。
入口にある「剣と長杖を交差した標識」が冒険者ギルドの紋章である。
二人が入ると、中は騒音が響いていて女性職員が慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたの君達?まだ学生でしょ?」
「? 今年から高等部になるので登録しに来たんですくど。」
すると職員は困ったように--
「じゃあ、とりあえずこっちに来て。」
二人を階段の方へ促した。
階段を上る前にサラがチラリと1階を見てみると、1階は酒場になっていた
一行は2階の受注所にやって来た。ちなみに3階は資料部屋、4階は関係者以外立ち入り禁止となっている。
そのまま奥にあるテーブル席に着くと、先ほどの職員が口を開いた。
「ごめんね、今下の酒場でパーティー間で言い争いになっているところなのよ。」
「なるほど…」
「じゃあ、担当者を呼んでくるからちょっとまっててね。」
そう告げると職員は受付けの奥に歩いて行った。
サラが周りを見渡してみると、近くのテーブルで学園の制服を着た男の子が別の職員に何かが書かれた紙を手渡しているのが目に入った。
そのうち、メガネをかけた男性職員がやって来た。
「お待たせしました。それではこちらの紙に必要事項をお書きください。」
そう言って二人に一枚ずつ紙を手渡した。
紙には名前、適正属性、《杖》の種類などの項目が書かれていた。
「あ、あの質問しても良いですか?」
記入しながらナズナが控えめにきいた
「名前はわかるんですけど、なぜ適正属性や《杖》の種類を書く必要があるんですか?」
「ああ、それは冒険者どうしがパーティーを組むときの目安になるし、何より成り済まし防止の意味があるんですよ。」
「成り済まし…ですか?」
「ええ、極希にそういったことをする迷惑な冒険者がいるんですよ。」
と職員は答えた。
それから暫くして
「よし、書けた!ナズナちゃんは?」
「うん、私も今書けた所。」
「それではお預かり致します。ギルドカードの作製には少し時間がかかりますのでご了承ください。」
「わかりました。」
「それじゃ、上の資料室で時間を潰してようか。」
そう言って二人は階段を登って行った。
その頃一階では、
「このクソガキ!覚悟はできてんだろうな!!」
灰色の髪の毛の少年が酔っ払いに絡まれていた。
「どうしてこうなった……。」
少年は何の面白味もないテンプレなセリフを呟いた。
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