違和感
セントラルギルド本部 局長室
トントンとドアをノックする音がする。
「第7分隊 隊長 ロドスであります。」
ロドスの声だ。
「入りなさい。」
局長の椅子には、鎧が座っている。全身鎧姿で顔も兜をかぶっていてその姿を見ることは出来ない。そんな様子とは裏腹に透き通った女性の綺麗な声がその兜の向こうから聞こえる。
「失礼いたします、マリアス局長。」
ロドスは一歩部屋へ入り一礼し、局長をマリアスと呼んだ。
「ロドス、何か問題でも?」
マリアスが言った。
「今回のクエストである西の港への貨物船護衛なのですが、依頼主からの情報によると{モンスターが出現する。}となっておりますが、我が第7分隊の隊員の中に西の港出身の者がおりまして、その者によると未だかつてその航路にはモンスターが出現したことがないと報告されております。そこで、我々のクエストの真意を確認したく参上いたしました。」
ロドスはものすごく緊張しているようだ。
「ロドス、良いですか。」
マリアスが言った。
「はっ、はい!!」
ロドスは返事した。
「今回のあなた方に与えられたクエストは実はランク ヘビーなのです。十分な説明はクエストに支障が出るため出来ませんが、実際に現場にてその真意を確認して頂きたい。今回のクエストは生きて情報を持ち帰ることがすべてです。どうかよろしくお願いします。」
マリアスは椅子から立ち上がり頭を下げた。ロドスは頭の中で何が起こっているのか処理できず、おどおどしている。
「きょ、局長頭を上げてください。」
ロドスは初めてギルドの長である局長が自分に頭を下げていることに気づき頭を上げてるよう求めた。
「ロドス、私にできるのはここまで・・・。どうか部下と共にクエストを全うしてください。」
マリアスは言った。
「はい!!必ず達成して見せます。失礼いたしました。」
(どういう事だ・・・?ならばなぜ、最初からランクヘビーと表記しなかったんだ・・・。しかし、これ以上聞いてはいけない風だ・・・。)
心の中に一物の疑念を抱えつつもロドスはそう言うと振り返り局長室を後にした。
「ダルク・・・、私はこう頭を下げて仲間を送り出す事しか出来ない。貴方を死地へと送り出したように。」
鎧姿のマリアスは両手を突き表情は見えないが、悲しい表情をしているようだ。
ギルド 正門 現時刻午前22:00
既にロドス、ソフィ共に準備を整えエルが到着するのを待っているようだ。
すると・・・
「すいませーん!!」
走ってエルが叫びながらこちらへ向かってくる。
「エル遅いぞ!!何事も10分前行動だ!!」
ロドスが言った。
「・・・・・・・。」
ソフィは沈黙している。
「はぁはぁはぁ、すみませんこいつを取りに行ってたらつい。」
エルはロドスにお守りを見せた。
「馬鹿もん!!」
エルは一発げんこつを食らった。
「痛いです。隊長・・・。」
エルは頭を押さえお守りを内ポケットへとおさめながら言った。
「そう言う物は、あらかじめ準備しておくものよ。自業自得ね。」
ソフィは冷たく言い放った。
「時間が迫っている。そろそろ出発するぞ。」
ロドスが言った。
「はい。」
「ええ。」
エルとソフィは同時に答えた。
三人は夜のセントラルの町の中へと消え、西の港へと出発した。
何か正門の茂みのあたりがごそごそっと動く。
「出たか・・・。」
暗くてよく見えない。
「ああ、連絡を入れよう。」
良くは見えないが男が二人会話しているようだ。
「ギル、例の作戦開始だ。」
何やら発信機のような物に向かって、しゃべりかけているようだ。
「俺たちも急ごう。時が迫ってる。」
男たちは茂みの奥へと消えっていった。
それぞれの鍵が集まり物語の扉は次々と開かれていく。世界の歯車は徐々に徐々にと狂いはじめ、人々はその微妙な変化に気づけない。
今、バラバラになったピースたちは、その原型を取り戻すべく引き寄せられる。
世界は再び混沌への時代へと進み始める・・・・。