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Milie's  作者: 電気屋さん
11/11

20年前-4


数日後


セントラル支部 正門





「帰って来たぞ~~~。」


男が門の向こうの先の坂から走りながら叫んでいる。その後から30人から成るセントラルギルドの隊員達がずんずんと坂を上ってくる。


門にはマリアスが立っていた。そしてこうつぶやく。











「無事でよかった・・・・・。本当に。」


声が少し震えている。




















誰が予想しただろう。








この後に訪れる悲劇を。











予想出来たなら防げたのだろうか。

















                  今でも考えさせられる・・・。
































セントラル支部





談話室





談話室の中の隊員達がなにやら騒いでいる。





「今到着したってさ!正門に居るぞ。」





「親友がいるんだ。迎えに行こう!!」





「行きましょう。皆で功労者たちを出迎えなきゃ!」





談話室の中は派遣隊の話題で持ちきりである。そして皆正門へ向かうべく階段を上がっていく。





「聞いたか!?」


カルロスがロドスに言った。





「も、もちろん・・・き、聞いた。」


ロドスは緊張が隠せないようだ。





「なんだ?今更おじけづいたわけじゃないだろうな。」





「そんなことは無い・・・。ただ・・・。」





「ただ??」





「ただ、もしも俺が緊張して言い出せなかった時・・・、カルロス一歩俺を前へ押してくれ。」


ロドスが真剣な顔で言った。





「急になんだよ。大丈夫お前ならやれるさ!」





「・・・・・・そ、そうだな!行こうか。」


ロドスは一歩また一歩と正門への階段へ歩みを進める。














正門前








正門の前は派遣隊を迎える人たちで混み合ってしている。





「諸君!君たちの気持ちも分からんでもないが、派遣隊の者たちは任務で疲れている。あまり、迷惑をかけるな。」


2番隊隊長のオームが言った。





「良いでしょう今日くらいは。無事に帰った者たちもいい表情をしています。」


マリアスは半年ぶりの対面に喜びの表情で会話する者たちを見て言った。





「マリアス本部長!これは、余計なことを申し上げてしまい失礼しました。」





「貴方も遠慮はいりません。いるのでしょう?会いたかった人が。」


表情はうかがえないが、恐らく笑顔だろう表情でオームに言った。





「お、お心遣い感謝します!ではお言葉に甘えて・・・。」


オームは一礼するととても綺麗な女性の下へ早歩きで向かった。








「凄い人だかりだな・・・。」


正門に到着したカルロスが言った。





「そうだな・・・。」


ロドスはあたりを見渡す。そして一人の女性を見つける。人をかき分け女性の下へと向かう。





「どこだろうな、ララは?」


カルロスが先ほどまでロドスが立っていた場所に振り返る。





「って、もういないし・・・。」


カルロスは周辺を見渡したがロドスは既にいなかった。








「ええ、ありがとう。私も会えて嬉しいわ。」


ララが友人の女性に笑顔で答える。





「無事でよかった・・・・。 !? じゃ、また後で。」


ララの友人はある異変に気づき、一方的に話をやめてその場を後にする。





「ちょ、待ってまだ再開したばかり・・・。」


ララが言い終わる前に・・・





「ララ!!」


ロドスがララの背後で呼びかける。





「!?」


ララはびっくりしながら後ろを振り向く。





「ロ、ロドス・・・。」





「やあ、ララ。無事で良かった。」


ロドスはできる限りの笑顔で言った。





「あ、ありがとう!ロドスも元気そうで良かったわ。」


心なしかララの顔が少し赤い。





「ララ君に見せたい物があるんだ!」


ロドスはおもむろにポケットに手を入れ何かを取り出した。





「それって・・・・・、部隊長のバッジじゃない!?」


ララは驚きが隠せなかった。





「君が居なくなってから、その・・・なんだ、あれだよ。」


急にロドスはもじもじし、顔がサルのように真っ赤になって行く。





「き、君に認めて貰う為に・・・じゃなくて、ああもう!!ララ、君が好きだ!」


ロドスは大声で意図せず、告白を再びしてしまった。周りの視線が一気に二人に集まる。


そしてララの顔もロドスに負けず劣らず赤くなる。





「みんなが見てるわ・・・。」


ララが周囲に目を配りながら恥ずかしそうに言った。





「ご、ごめん!?そんなつもりじゃなかったんだ!もう俺って何言ってんだろ・・・。穴があったら入りてぇ。すまなっかた、それじゃまた後で。」


ロドスはその場を立ち去ろうとしたが・・・





「待って!」


ララが呼び止め、ロドスは再びララの方を向く。





「これ・・・、持って行って。」


ララはロドスに一枚の折り畳まれた紙を差し出した。





「これは?」





「良いから持って行って!」


ララにそういわれロドスは差し出された紙を受け取った。





するとララはロドスに背を向け周囲の視線の中をセントラル支部建屋内へすたすたと入って行った。そして、視線はララを離れロドスへとその的が替わる。





「・・・・・。」


ロドスはその紙を見つめ、しばらく沈黙したがララと同じように建屋内へと入って行った。周囲の人も突然の出来事にざわざわし始める。





「さあみなさん!!もうすぐ夜です。みなさんも中へ入ってゆっくり友との再会を祝ってください。」


そんな重苦しい空気を破ったのはマリアスであった。皆、そういわれるとさっきの出来事のことをざわざわ言いながらすたすたと建屋内へと入って行った。





「青春・・・・ですね。」


マリアスが言った。























セントラル支部内 男子寮





ロドスは先ほどララから渡された手紙を見た。





「これは・・・・・。」





そこにはこう書かれていた。


{明日、セントラル公園命の樹の下で、5時に待ってます。}





「・・・・・。」


ロドスの顔から緊張の色が見える。そして、ドアをノックする音が聞こえた。





「入るぞ。」


カルロスである。





「!? あっ、ああお前か・・・。」





「そんなに驚いて、何か隠しごとか?正門じゃ途中でいなくなるし、ララとなんかあったのか?」


カルロスが問いかけた。





「これを見てくれ。」


ロドスは先ほどの紙に書かれた文字を見せた。





「う~ん。お前なかなかやるな!恐らくこれはお前に気がある!!」


カルロスはいった。





「そうか!?」





「まあ、確実だとはいえんが、少なくとも気がなければこんなもん書く前に冷たくあしらわれてるだろ?」





「確かに・・・。」


ロドスがうなずいた。





「まあ、明日の夕方になれば分かる。明日はクエストの予定入れるなよ。」





「勿論だ!」


次の日のロドスは、落ち着きが無くそわそわとしていた。夕方に近づくにつれ露骨に行動に動揺が見える。






そして、午後17:00になる。





セントラル公園 命の樹の下





ロドスは命の樹の下へ行くための階段を上る。ロドスの後をストーカーのようにカルロスがコソコソとついてくる。それにロドスは気づいていない。


ロドスは階段を登り切り、命の樹の方を見た。そこにはララが立っている。





「やあ!ララ、少し待ったか?」


ロドスがテレ顔で言った。





「ううん、今来たばかりよ。」


ララは手を後ろでモゾモゾさせ、何か不安そうな顔をしていた。





「え~と・・・、その、なんだ。急かす訳ではないんだけど、昨日の答えを聞かせてくれ!」


ロドスは思いきって言った。





「ロドス・・・、答える前にあなたに見てもらいたいものがあるの・・・。」


ララの不安そうな顔がさらに色を濃くした。





「勿論!」


ロドスは即答した。





「おいで、エイミー。」


ララが命の樹の向かい側に向かって呼びかけた。するとそこから、10歳くらいの可愛らしい女の子が現れた。





「!?」


ロドスは心の底から驚いた。





「私の子です。」


ララが真剣な顔で言った。


ロドスは動揺が隠せなかった。一歩二歩後方へと下がった。





(そんな・・・、どういうことだ!?騙されてたのか?)


「お母さん。」


エイミーがララの方を見て言った。





「聞いて・・・」





「・・・・・・、どういう事だ・・・。からかっていたって言うのか・・・。」





ララが何か言おうとしたが、ロドスの心にそんな余裕はなかった。ララの声を遮り、太い声で言った。





「俺が、君に気があると知っていて、今まで黙って・・・、馬鹿だな俺は・・・。」


ロドスがうつむいた。





「お願い・・・」





「迷惑なら迷惑と最初から言ってくれれば・・・・・こんな気持ち持たなければ良かった!!」


再びララの声を遮り、涙目でそう言うとロドスは振り向きその場を走り去った。





「お願い待って!!」


ララの声は届かない。






草むらからごそごそっと音がした。突然カルロスが飛び出してきた。





「ララ、君がそんな人だとは思わなかった・・・。俺はロドスの後を追う。残念だよ。俺だって知らなかった・・・。」


カルロスはロドスの後を追いかけ階段を駆け下りて行った。





「お母さん。大丈夫?」





「エイミー、ごめんね・・・。やっぱり駄目だったみたい。」


ララの眼から涙が流れている。





「泣かないで、私はお母さんのこと大好きだから。」


エイミーはララの眼の涙を小さな手ですくい取った。





「ありがとう、エイミー。」


ララは思いっきりエイミーを抱き寄せた。


そして、エイミーを離し、ハンカチで涙を拭いた。





「かえろっか?」


涙で腫れた目で、言った。しかし、エイミーの姿は無い。





「エイミー・・・、エイミー!」


突然いなくなった娘にララは呼びかけたが返事が無い。





「何処なの!?」


ララは呼びかけながら、周辺を探し始めた。





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