20年前-3
―半年後―
「約束じゃ確かに隊長になったら気持ちにこたえるって言ってたよな。」
カルロスが未だに自分が隊長になったことが夢見心地のロドスに言ってみた。するとロドスの顔がさらに赤面になる。
「ララが北部支部に行って半年か・・・・・後半年もあるんだよな、ララが帰ってくるまで。長いけど、これで堂々と答えが聞ける!!」
「正直な話、ララももしかしたらお前のこと好きかも。」
「へ、変なこと言うな!?わ、悪い気はしないが・・・。」
ロドスの顔はテレ顔だ。
「まっ、後半年頑張れよ。俺も応援する。」
カルロスが笑顔で言った。
「おう!ありがとな。」
それにロドスも笑顔で答える。
大会議室
「今回の北部支部、メビウス残党討伐作戦に応援に出した隊員たちをセントラルに戻そうと思うのじゃが、みなどう思うかね?」
長細い机の先に座るとても威厳がありそうな老人が言った。ダルダロス(現在のギルド学校校長)である。
「ええ、私は賛成ですダルダロス局長。それなりの成果も出ておりますし、あとは北部支部だけで対処できるかと・・・。」
ダルダロスの一つ隣の席に座るマリアスが言った。会議中も鎧姿である。
「他の者はどう思うかね?」
皆何も言わない。
「でわ、来週にも派遣隊を引き上げるとする。今日の議題は以上じゃ。解散。」
ダルダロスは席を立ち皆に解散を促した。マリアスも後に続き退出しようとするがダルダロスに呼び止められる。
「マリアス、少し話がある。」
豊かに蓄えた髭をさすりながら、手招きをする。
「はい局長。」
マリアスは振り返りダルダロスの横へと進む。
「良いか、よく聞くのじゃ・・・。」
ダルダロスは急に真剣な顔をしてマリアスに耳を口元へと近づけるよう促す。
「今回の北部支部の件は、例の男が絡んでおる。分かるな!?私情に囚われるな。ワシは、信用しとる。焦らずともその時は必ず訪れる。だが今では無いのじゃ。良いな、冷静な判断を期待しておるぞ!」
ダルダロスはそういうと何事もなかったかのように会議室を後にした。
「・・・・・。」
マリアスは何も言えなかった。そして、拳を握りしめ目の前机を殴った。
2日後
ギルド北部支部 作戦本部 医務室
「苦しい・・・、殺してくれ・・・。」
ベットの上でもだえ苦しむ包帯姿の男がララに向かって言った。周りをみると同じように負傷した隊員達が悲痛な叫びを上げている。
「気をしっかり持って、まだあなたの傷は浅い方よ!」
ララは手をかざし、回復のスキルを使って徐々に傷を癒していく。
「ララ、班長が呼んでるわ。ここは私に任せて!」
後ろから救護班のティアラがララに声をかける。
「班長が?分かった。じゃあ後よろしくお願いね。」
ララは引き継ぎをするとその場を後にした。
作戦本部 ミーティングルーム
ララがミーティングルームに足を踏み入れるとそこにはセントラルより集められた派遣部隊が集められていた。
「全員そろったか?」
班長が言った。
「はい。29名全員揃いました。」
「そうか・・・。みんなよく聞け。昨日夕刻、セントラル支部より電報が届いた。内容はこうだ。{当初の目的を達成したため、派遣隊に帰還を命じる}みんなここまでよく頑張った。あとの作戦は北部支部で対処するそうだ。今日中に私物をまとめること。セントラル出発は明日の早朝。以上が連絡事項だ。解散。」
班長は1分もしないうちに話を終えた。隊員たちは一瞬あっけにとられ沈黙したが、一気に喜びが爆発したかのように騒ぎ始めた。ララはそんな中、一人ミーティングルームを後にする。
医務室
「ララどうしたの?」
先ほどの患者の処置を終えたティアラがララの複雑な表情を見て言った。
「ティアラ、わたし・・・わたしね!明日セントラルに戻ることになったの。」
ララは告げた。
「良かったじゃない!?派遣隊のみんなには本当に感謝してるわ。お疲れさま!セントラルに戻っても怠けちゃだめよ!!」
ティアラは笑顔で言った。
「ありがとう!でも・・・、ティアラは大丈夫?まだまだ人手不足だし・・・。」
ララが心配そうな顔で言った。
「私は大丈夫よ。それより、セントラルで約束・・・あるんでしょ!そっちを頑張んなさい!!」
ティアラはニコっと笑い、ララの肩をポンポンと叩いた。
「う、うん!!色々とありがとうティアラ・・・。手紙書くわ。」
ララは少し顔を赤らめて言う。
「私も書く。それじゃ私頼まれごとがあるから行くわ。それじゃ、今度はいつ会えるかわからないけど・・・、またねララ!」
そう言うとティアラは笑顔でララに手を振りながらその場を後にした。
「ティアラありがとう!!」
ララは立ち去るティアラに精一杯の気持ちをこめて言った。それに答えてティアラは手を振った。
1日後
セントラル支部 廊下
「なあ聞いたか?派遣隊今日戻ってくるらしいぜ。」
「え!?あれって確か一年計画じゃなかったか?」
「お偉いさんの会議で決まったんだと。」
三人の男が歩きながら、なにやら話している。それを通りかかったカルロスがそのうちの一人にすごい勢いで確認する。
「おい!!それ、本当か!?派遣隊今日戻ってくるのか?」
カルロスがそういうと三人は突然の出来事にびっくりした。
「あ、ああ間違いない。俺は情報部にいるからその辺は・・・・、てかお前恋人でもいんの?そんなすごい剣幕で聞いてくるなんて。」
三人のうちの一人が言った。
「そうか・・・、すまねぇな呼び止めて!!」
カルロスはそういうとダッシュで地下へと駆け下りていく。
「何だったんだ?」
「さあ。」
「さあ。」
男たちは首をかしげた。
セントラル支部
談話室
ロドスは席にすわりクエスト先である風の森の地図とにらっめっこしていた。どのルートを通れば最善か考えているうちに一つのルートを見つけマーカーペンでしるしをつける。遠くの方から聞いたことのある声が聞こえてくる。
「ロド~ス!!」
カルロスの声である。
「ロ~ド~ス~!」
声がだんだん近くなり、しょうがなくロドスは席を立ち後ろを振り向いた。
「何事だ!?そんな大声で、周りにめ・・・・。」
言い終わる前にカルロスが飛びついてきた。
「とびっきりの情報仕入れてきたぜ!!」
カルロスのらりあっとがロドスを襲う。カルロスはウキウキした表情だ。
「て~な・・・。なんなんだ急に・・・・・。」
バランスを崩し地面に倒れたロドスは、険しい顔で腰をさすりながら言った。
「驚くことなかれ・・・。いや無理か。」
「良いから早く言えよ。俺は次のクエストの作戦練ってんだからな!」
ロドスは憤慨する。
「実は・・・・・。」
「実は?」
「今日派遣隊が帰還する。」
カルロスは笑顔で言った。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
ロドスはその場で硬直した。言葉が出てこない。突然の特報に気持ちのやり場を探した。その硬直を解いたのはカルロスだった。
「ロドス、良いか。今日は勝負服だ!最高の恰好で迎えるんだぞ!羨ましいたらないね~。」
「ちゃ、茶化すなよ。まだ良い答えが聞けるとは限らないんだ。」
ロドスの顔は今までに見たことのないほど赤い。
「楽しみだな。フラれるにしても、そうでないにしても、なかなか見れるもんじゃない。ムフフ。」
カルロスは嫌らしい笑いをした。
「何時だ!いつ到着するんだよ、派遣隊は!?」
ロドスが何か思いたったかのようにカルロスに聞いた。
「あ・・・・、時間、聞くの忘れてた・・・・。」
「・・・・・・とりあえず部屋帰って準備する・・・。」
ロドスは少しがっかりしたようだったが、半年先だと考えていたララとの再会が迫り考え事をしながら談話室を後にする。