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幕間
「――聞いた?」
事務室の隅で、ひそひそと声が重なった。
「例の、化粧をしていない子。
あんな顔だったなんてね」
「しかも仕事もできるらしいわよ。
騎士団長付きの隊から、直接頼まれてるって。王宮勤めの推薦も出るんじゃないかって言われてるわよ。」
「騎士団の連絡係はランスくんでしょ?
最近、よく一緒にいるって」
名前が出た瞬間、会話は途切れた。
視線が、フィーアに集まる。
すぐに逸らされるが、遅かった。
書類を整えながら、フィーアは何も言わない。
否定するほどのことではない。
説明する義務もない。
それでも。
空気が、確かに変わっていた。
それが誰に届くのかを、
彼女はまだ知らない。




