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騎士団ではウィンダの噂で持ちきりになっていた。
式典でしか着用しない正装を着てきたと思ったら、その手元には大きな花束。
気安い仲間から
「隊長、どうしたんですか?プロポーズでもするような格好しちゃって!」
なんて言われ
「プロポーズしてくるんだよ!」
と意気揚々と出ていったのは、つい先ほど。
周りはポカンとして見送ったのも束の間、30分もしないで、今度はまるでお通夜帰りのような表情で戻ってきたのだ。
疾風のように去っていってなんとも暗い表情と共にあっという間に戻ってきた様子から、うまくいかなかったという事実だけはわかった。しかし誰もが気を遣って声をかけられずにいた。
そこに夜勤上がりのランスが戻ってきた。
ランスはウィンダの隊の入隊2年目の隊員だった。
「お疲れ様です〜、すっごいもの見ちゃって!」
興奮冷めやらぬ様子で目の前の隊員に話しかけた。
「さっき、夜勤報告を事務所にしたらさ、なんと隊長がさ…………」
ツンツン……
「…………ランス」
指を指した先には明らかに心ここにあらずのウィンダ…
「あ……隊長…………」
***
「ちょっと着替えてくるから……」
普段の騎士の服に着替えるため、ロッカーに立ち上がった。
隊長がその場を離れた途端、ランスの周りに人だかりができた。
「ランス、何見たのか教えろよっ」
「隊長が誰に会っていたのか分かる?」
ランスも興奮冷めやらぬと言ったら様子だ。
「いや、それがなんと、あの堅物女文官にプロポーズしてるとこ見ちゃってさ!」
「………………えぇぇ!」
「マジ!?」
その後あっさりと断られて今に至るようだ。
「あ。隊長戻ってきた……」
一見いつもと変わらない様子でランスに声をかける。
「ランス夜勤お疲れ様、きょうはもう特段急ぎの任務はないから、早く帰って休めよ。お疲れ。」
「はいっ」
その後ウィンダはいつも通り、副隊長を連れて、通常任務についたのだった。
その後の、隊長のいなくなった控え室ではランスからの持って帰ってきた情報を元に、あれやこれやの審議が繰り広げられていたのだ。
***
ウィンダと副隊長のキースとは長い付き合いだ。
ウィンダが最近そわそわしていた事をなんとなくキースは気がついていた。
「ウィンダ、副隊長としてじゃなくて、友人として聞いておきたいんだが」
「……何を言いたいかは分かる。」
「…………まぁ、なんだ。…………あれだけ格好つけていったんだから、全くの行き当たりばったりってわけでもなかったんだろ?」
全くその通りだ。
予定ではフィーアは顔を赤らめながら、はい、と花束を受け取ってくれる予定だった。
だって昨夜、彼女は自分の事が好きだと、言って体をつなげたではないか。自ら処女を捧げ、あんなにも情熱的な夜を過ごしたではないか。




