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アラクネと黒髪ボッチ(改作)  作者: 雷誅 萬刃
10月:終わり、そして
9/15

怨念

お待たせ致しました。


 ────


「ぎゃははははは!死ねっ!死ねぇっ!!」

「女神様の為にィ!死ねェ!!」

「うぐっ……やめ、やめて……いぎっ」


 甲虫のような肌の質感。触覚や外骨格のような腕をもった親子


 ……それが、痩せ細った男に虐待されている。


「娘だけは助けてくださいっ!」

「お願いしますっ!お願いしますっ!!」

「なんでもしますからっ!どうか……」

「お慈悲をくださいっ!!」

「ふふ……なら、こいつを殺せ」


 そう言って母親に差し出しされたのは娘に若干パーツが似ている男性だった。


 まさか、父親……?


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさいっ……!うわぁぁあぁぁぁあぁぁあ!!」


 母親が泣き叫びながら父親の首を腕に付いた大きな鎌で刈り取った。


 これが知的生命体のやることか?


 いくら他人とはいえこんなものを見せられたら気分が悪くなる。今は特に。


 夢、か?夢だ。こんな胸糞悪い夢を見るなんて……。


「はははははは!!おら!」

「お前等は俺達よりも立場が下っ!!」

「ごみ処理にありつくもんだぜ!!」

「くふふふふふふ!!」

「お願いします……娘を、助けてください」

「くくくくくくく、足りないなぁ……」

「こいつの体がちょうどいい」

「そ、そんなっ……!!」

「私なら何でもしますっ!それだけは!!」


 頭を地面に打ち付けるように懇願する母親の脚は……粉砕されていた。


 男の目は血走っていてとても正気には見えない。


「てめぇみたいなババァいらねぇよ!!」

「やめてっ、やめてぇぇえぇぇぇぇえ!!」

「女神様に仇なすお前らが悪いんだ!!」

「いやっ!お母さんっ!助けっ……んー!」

「んー!!んーっ!!」


 ────


「へははははっ!!そう、その顔だっ!」

「!ここでは俺が支配者なんだよぉぉ!!」

「女神様を信じてねぇヤツは死ぬだけだ!!」

「ぎゃはははははは!!」

「……」

「うそっ!ねぇ!返事して!!返事してっ!!」

「お願いっ、返事して!!」


 死んだ。失血死だろう。必死に這いずる母を鎖がはばむ。


「おい、遅いぞ……貴様っ!!何をしている」

「私はごみ処理をしろと命じたんだ」

「性欲を処理しろといった覚えはない!!」

「がはぁっ!!ぁ、が……ぐぼっ!!」

「奴隷の分際で私の手を煩わせるな!」

「貴様の代わりなどいくらでも居る」

「死ね!!」

「ひ、ひぎ──」


 地獄。ここは地獄だ。じゃなかったらこんな光景、あるはずない。


 こんな事が起こっているなんて信じたくない。


『ユルサナイ……ユルサナイ……ミライサエワカレバ……』

『コンナコトニハナラナカッタ……』

『コンナトコロニトドマラナカッタ……』

『コンナメニハアワナカッタノニ……ニクイ……ニクイッ……!!』


「ぁ、あぁぁあぁあぁぁぁあぁぁ!!」


 ────


「がぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!あっ」

ぐぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!あぐっ!」

「ぐぅっ!あぁぁあぁぁ!!」


 目がっ!目が焼けるっ!目の奥が熱い!熱いっ、熱いぃイィイィ!!


 目が、目が内側から焼けるっ!痛い痛い痛い痛い痛い!!


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!!」


 収まった……?目もなんともない。今まで通り問題なく見えている。


 何だったんだ。いや、なんでもいいか。とにかく彼女に会いたい。


「……今日は遅かったね」

「これを用意してたんだ」

「開けていいの?」

「もちろん」


 袋を引き裂いて彼女が中から出てきたシュークリームを不思議そうに眺めている。


 この顔が見れて良かった。


 この顔を見れただけであんな思いしてまでお土産を買ってきた苦労は吹き飛んだ。


 その顔を肴におにぎりとサンドイッチを食す。


 どちらも肉をメインにした物だ。久々に満腹……お腹一杯食べられるって幸せだ。


「これは……観賞用?すごく個性的な見」

「あー、食べるんだよ。それ」

「なるほど……食べ、食べるの!?」


 そんなにびっくりする……?観賞用にはとても見えない。


 確かにキャベツか何かに見えるのがシュークリームの由来だけど。


 森に住んでいるなら野菜という概念はなさそうだし……


 観賞用に見えないこともないかもしれない。


「……んむ」

「美味しい?」

「!?んんん〜っ!?」


 一瞬でシュークリームが彼女の口の中に消えていった。


 美味しかったみたいだ。あんな思いをしてまで行って良かった。


 ん……?まだシュークリームが残っている?どうして?


 さっき彼女はシュークリームの美味しさに驚いて全部口n──


「!?んんん〜っ!?なんですかこの味!?」

「本能に訴えかけてくる味がする!」

「美味しいみたいで何よりだよ」

「ありがとう!すごく嬉しい!」


 うーん、かわいい。予想していた反応とは違う。


 それでも、彼女が喜んでくれているから何も問題ない。


 彼女と話していて嬉しいはずなのに、充分沢山貰っているのに……満足出来ない。


 我ながら欲張りが過ぎる。


「はい、ど〜ぞ」

「え、あ」

「食べないの?」

「あ、うん」


 差し出されたシュークリームを頂く。


 あ〜んじゃねぇか!世のカップルはこんな気恥ずかしい事やってるのか。


 凄い。


 恋人同士はイチャイチャするのが仕事みたいなものだし、これくらいやるか。


「美味しい?」

「うん、美味しい」

「買ってきた本人が知らないはずないか」

「まぁ、ね……」


 そういえば、彼女はどうやって“お茶”の概念を知ったんだろう。


 彼女が以前住んでいた場所に茶葉なんてあったとは思えない。


 どこで知ったんだろう?


「紅茶はいつから飲んでるの?」

「……10年前くらい?」

「どこで茶葉なんて手に入れたの?」

「んふふふ」


 無言の笑顔が怖い。世の中には知らない方が幸せなことが沢山ある。


 これもその一つだろう。深入りしてはいけない。


「ん……?」

「気付いた?リフォームしたんだ」

「そうなんだ」


 地面から何かがせり出していた。よく見ないとただの小さな茂みにしか見えない。


 新しい空間を作ったんだろう。


 新しい空間の中は遊牧民の家と竪穴式住居を足して割ったみたいな構造してる。


 そして上のよくわからない寝室はそのままだった。


「寝るのはそのままなんだね」

「上は切り取ったよ」

「ワイバーンも居ないから」

「付ける理由がないしね」

「あ、ワイバーンが天敵なんだ」

「……そうといえばそうかも?」


 中々考え込んだあたり、彼女本人はワイバーンに困っていなさそうだ。


 本当に天敵なのか?


「入る?」

次は1週間後です。

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