不合理
「ね〜、新しいおもちゃちょうだい〜♡」
「ちょうど、いいのを見つけたんだ」
「こないだ爆睡してた奴いたろ?あいつだ」
「つまんない人生送ってそうな奴ね」
「おもちゃにしてあげるなんて優し〜」
「上に立つ人間として当然の使命だとも」
こいつか。確か財界や政界にもくい込み始めたベンチャー社長の息子だったはず。
即帰ってばかりしていたから関わりはなかったけど、
目を付けられた人間が何人も壊されたという噂は聞いた事がある。
その方法も陰湿でじわじわ真綿を締めるようなやり方らしい。
奴の気に入られれば人生の成功が約束されているという噂もある。
可愛い女子ランキング上位常連は既にこいつの肉便器になったって噂は本当だったか。
今話していた女が確かそうだったはずだ。
正直そんな性根の腐ったカス居るわけないと思っていた。
どうやら、この世には神も仏も救いもなかったらしいな。
こんな性根の腐ったカスがのさばっているんだから。
「……」
……財布の中身がない。まさか……財布の中身も取ったのか?
やってくれるじゃないか。あのカス共が!!
この後は寝て空腹を誤魔化そう。帰るまでならなんとかなるはずだ。
あんな性根の腐ったカスにいいようにされてたまるか……!!
「気を付け、礼」
「「さようなら〜」」
何か、何か食べる物がほしい。ケーキ屋だ!食べれるっ!食べれるぞっ!!
財布がないんだっ……あるぞ。
小銭は取られてなかったようだ。チッ!小銭なんて金のうちに入らないってか?
下品な金持ちがよ!
次は隠して登校しよう。これで明日は昼にもありつけるはずだ。
性根の腐ったカスが財布を必死に探すなんてありえないからな。
「すいません、これください」
「200円になります」
「お願いします」
「ありがとうございました〜」
シュークリームに1個に200円か……高い。
が、ケーキ屋としては標準価格だ。とても美味しい。
『ドアが閉──』
「ふぅ……」
中途半端に何か入れたせいで余計に空腹感が強くなった。
食べるんじゃなかった。とにかく寝て体力を温存しないと。
「ただいま……」
「……」
メンヘラにかまってる余裕なんてない。弁当箱を洗って制服を片付けベッドに潜る。
眠れない。
空腹が本格的にまずいことになってきた。
空腹過ぎて何も食べたくない境地にまで辿──り着──
「ふぁ〜……」
ベッドから飛び起き、飯の香りを追いかけてテーブルに盛られた食材を貪り食い、
風呂に入る。これなら明日までは保ちそうだ。
「ふぅ……」
今日も無事終わった。それと、アイツらについて何となく分かってきた。
あの性根の腐ったカス共はどうやら一ヶ月単位でターゲットを変えているらしい。
つまり、ひと月持ったやつは居なかったってことだ。目にもの見せてやる……!
何もかも上手くいくなんて思うなよ……カスが!!
「……」
ベッドに倒れ込み、布団を被る。だが、寝れない。
今日は睡眠しかしてないのに眠いわけがない。ASMRでも聞くか。
こんなんで眠れるのか?あ~……結構いいなこれ……。こ──れな──ら眠──れ──
「ふぁ……」
おはよう世界。今日も終わってんねぇ。
小銭を常に持ってるパスケースに隠し、制服に着換え朝食を貪り食って学校に向かう。
『ドアが──』
And the bery last dey in the 2020 in the midest──やっぱり格好いいなぁ。メシエ強襲。
クリアは出来ないけどこれを聞くためだけにプレイしてしまう……
攻撃範囲が広すぎてどう倒せばいいのか分からない。皆どう倒してんだ?
『次は──』
「もう駅か……」
降りたくないけど降りて学校に向かう。今日が終われば休日が挟まれる……
もうすぐ彼女に会える。それだけで今日生きていける。
そういえば異世界はどうなったんだ……?ふむ、言語の翻訳中。
何度か交戦はあったらしいが決定的な衝突は無さそうだ。
世の中捨てたものじゃないな。予鈴だ。
「気を付け、礼!」
「「「おはようございます」」」
「はい、今日はd──」
あ〜、お腹空いてきた。今日を乗り越えれば休日だ。
彼女に会える。彼女と話せる。早く今日終われ。終わってくれ、速やかに。
「気を付け、礼」
「ありがとうございました」
授業が終わった瞬間、一目散に食堂へと駆けていく。
これならば誰にも邪魔されない。よし!着いた!!
「来た来た……!!」
夢にまで見た昼飯……!!席にも座れた。順調だ。
どうだ!……このタイミングで尿意だとぉぉぉぉお!!
く……くそっ!後は食べるだけなんだぞ!
箸を動かせば昼飯は食え……無理だっ!漏れる!!我慢なんかできない!
「ふぅ〜……」
皿がないっっっっ!俺の昼飯!!どこに行ったんだ!
どうしてっ!どうしてトイレなんかに行ってしまったんだ!!
「どっかで魔物の死体がお金になるって!」
「情報が遅い。もう俺は十匹は倒した」
「やっぱり生まれ持った人は違うんだね!!」
「すご~い!私も行きたいな」
「ずる〜い、私も〜」
換金出来るだけで猟銃の免許が緩和されている訳ではないのに。
こんな奴が魔物を殺せるわけがない。
ほぼ丸腰で野生動物を殺せるのかという話だ。
おそらく、アレは彼女のような知性の高い個体に不意打ちをかましたんだろう。
まぁ、俺が魔物愛護精神溢れる人間だと思っての発言だろうが……
あいにく俺は彼女以外に特段思い入れがある訳じゃない。
「二人とも連れて行ってやるさ」
「上流階級ってものを教えてやる」
「うれし〜!」
「楽しみ〜。さすが器が大きい〜」
飯を抜いた後での精神攻撃……噂通りのネチネチした手口だ。
このカスに彼女が殺されるという事は万に一つもないだろうが、伝えない理由がない。
こんなカスがあそこに辿り着くとは思えないが、気を付けすぎることはない。ん?
「……!!」
あれは……俺の唐揚げ丼!しかも食べかけ!!こんな堂々と見せつけやがって……!
許さない!許されてたまるか!!警察が見逃しても俺は見逃さなかった!!
「……えせ」
「なんだ?聞こえないな」
「返せ……!!」




