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アラクネと黒髪ボッチ(改作)  作者: 雷誅 萬刃
9月 降って湧いた必然
4/9

ふと会いに行ってしまう。そんな休日

お待たせしました。

 ──奏──


 窓を軽く叩く音が聞こえる。


 風か何かか?……まただ同じようなリズムで3回、窓が叩かれる音が鳴った。


「……」


 ギョッとしてベットから飛びおりた瞬間、また同じように3回、窓が叩かれた。


 偶然じゃない。意図を持って音を鳴らしている。


 怖いので中学生の時に使っていた竹刀を手に恐る恐るカーテンを開けた。


「遅いよ〜、でも会えて嬉しい」

「……」


 夢か。一番会いたかった存在が、会いたい時に来てくれる……


 そんな都合のいい事が起こるのは夢の中だけだ。


「もしも〜し、大丈夫?」


 おかしいな、目が覚めない。もしかしてこれ……現実か?


 現実!!窓の外でニコニコしてる彼女が存在してる?早くしないと!居なくなってしまう!


「ぁあ……うん。上がって」

「あぁ、今日は遊びに来たんじゃないんだ」

「じゃあ、何を?」

「夜の散歩に誘おうと思って」


 夜の散歩か……いいな。寝るよりもずっと気分が晴れそうだ。


 それに彼女と一緒に居るのを断る理由もない。


「準備してきます」

「ゆっくりでいいからね」


 トイレに行き、部屋の電気を消し、布団を盛り上げてから窓の前に戻る。


 完璧〜。これで部屋に来られても安心だ。


「終わったみたいだね。行こっか」

「うん」


 彼女に連れられて夜の田舎道へ繰り出す。


 いつもの景色も夜だと雰囲気が違う。一人だったらこんな事思わなかっただろうな。


「どこか目的地あるの?」

「ひ・み・つ。その方が楽しいでしょ?」

「楽しみにしてますね」


 この道は駅の方かな?この道から行くのが距離的には一番近いはずだし。


 あれ?曲がらないな。じゃあ、どこに行くんだろう。


「夜道すら、世界の違いを実感するよ」

「そうなんですね〜」

「こんな灯りなんてなかったから、歩けたものじゃないのよね」

「確かに、よく考えたら田舎でもこれだけ灯りがあるっていうのは凄いよね」


 つい100年前までは電気を消した家と同じレベルの暗さが普通だったんだよな……。


 人類文明の進歩って本当に凄いんだな。


「あれ?ここは……」

「そう……私の巣だよ」

「わざわざどうして?」

「こうするんだよ♡」


 あ、あれ?押し倒されてる?いつの間にか部屋らしきものに連れ込まれているし……


 この短時間で何が起こった?


 もしかして、はじめから襲うつもりだったのか?心の準備くらいしておきたかった。


「私に任せてればいいからね♡」

「5分もった男は居ないから」

「すぐ気持ちよくしてあげるね♡」

「え、あ……そう……」


 ダメだ。心の準備が全然出来てないから小さい事が引っかかる。


 準備済んでたら興奮できた台詞なのに。


「あれ……?ほ、ほらおっぱいだよ?」


「君が釘付けになってたおっぱいだよ?」


 勃たない。なんで?目の前にこんな極上の胸が晒されてるのに……!!


 なのにどうして勃たないんだ。


「初めてだもんね」

「緊張して中々出来ないって事はよくあるからさ、気にしないで」

「ゆっくり慣れていけばいいから」

「な、なんで……どうして……」

「そんなに気を落とさないで」

「ほら、おっぱいだよ〜♡」


 彼女に抱き締められる。全身が沈んでいくかのような……


 今おっぱいを感じてるのは体じゃない。脳味噌だ。脳がおっぱいに包まれてる。


 香水のような人工的に作られたいい匂いとは違う甘ったるい雌の匂いがする。


 朝よりも匂いが濃い。空気も思考も全部桃色に染まる。なのに……立たない。


「このまま泊まってってよ、6時には届けるから。ね?いいでしょ?」

「……甘えようかな」

「ここが寝床だよ。ゆっくりしていってね」

「うん」


 彼女が部屋を見せるために胸から俺を剥がしたおかげで部屋の様子が見えた。


 外観で想像したよりは広いが、それでも狭い。


 ただ、二人でバタバタするだけのスペースはある。


 完全にそういうこと・・(・・・・)のためのスペースが確保されてる。


 ただ、彼女が寝るのスp……ハンモックがある。


「寝心地悪くない?大丈夫?」

「普段そんな格好で寝ないからよく分からなくて……」

「悪くない……というかいいよ」

「良かった〜」


 あぁ゛〜……布団が重い。重い布団は好きだ。


 密着感が違う。この密着感が眠気を誘ってくるんだ。


 ん……?圧迫感が変わったぞ。何か落ちてきたのか。


 なんだなんだ?なーにが……目を開けるんじゃなかった。こんなのじゃ寝れない。


「んふ……♡」

「ち、近くない?」

「私の事は気にしないで寝ていいからね」

「う、うん」


 眠いし寝るしかないか……。それに明日は8時起きだから夜更かしはしてられない。


 いや、6時に起きることになるのか?というか、どういう姿勢してるんだ?


 なるほど、下から滑り込むように近くに寄ってる。 


「ん……ふぁ」

「おやすみなさい♡」


 ────


「ん……ん〜」


 太陽が眩しい。布団も薄い……家に帰ってきたらしい。


 彼女の言葉の通り6時には家に届けられたんだろう。


 運ばれてる途中に目が覚めなかったのか。凄いな……


 どんな手さばきで運べば起こさずに運べるんだ。


「はぁ……」


 朝食を済ませてXを眺める。なんだこのポスト。


 結構しっかりした出処なのに魔物やら異世界やら……。


 一体いつからオカルトに転身したんだ。墜ちたものだ。


 いいものが見れそうだ。どれ、どこまで墜ちたか見させてもらおうか。


「……」


 まともだ……未知の生物のDNA、研究途中の事故とその被害者(生前)の写真、


 更には、未知の人々の言語体系……その他様々な学術的な見解が綴られている。


 魔物の被害がトレンド入りしている。中には人に近い姿の魔物も居るらしい。


 不用意に近付いたら無理やり腕を掴まれたりしたとかしてないとか。馬鹿だねぇ……。


 人型の魔物は写真もあるが、大分近付いてるのに殺意は感じられない。


 彼女のように並外れて知能が高いのだろうか?


 それとも人間に無闇に手を出してはいけないということを学習しているのか。


 なんにせよ写真を撮れるなら、肉の味を覚えたクマよりは扱いが易しい気がする。


「……」


 取り敢えずそういう事をポストしておきますかね。うーん、我ながら馬鹿。


 ま、別にそんな動かしてないし?これで炎上しても困らないし。


「ふぅ……」


 何も困らないといってみたけど、なんかそわそわする。


 こういう時は疲労で思考を吹っ飛ばすのが効果的、なので……走るか。


「はぁ……はぁ……」


 酸素っ!酸素っ!酸素が欲しいっ!昔はこんなことなかったっ!


 剣道辞めて一年しか経ってないのにこんなに体力が落ちるなんて。


「あ。こっちこっち」

「ん、あぁ……」


 あれ?こっち走る予定だった?なんでもいいか……


とにかく走れればいいんだ。どこ走ってもなんも変わらん。


「はい、到着〜」

「はぁ……はぁ……」

「お疲れ様〜。お水用意するね〜」


 ここはどこだ?知ら……いや知ってる。彼女の巣だ?


 いつの間にこんな所に。メンタル弱り過ぎだろ。


 彼女はどこだ?疲れて、ほぼ倒れたみたいな状況のはずなのに痛くないのも気になる。


 まさか……いや、この感触はどう考えても草だ。フサフサしてないのは土だ。多分。


 踏み固められてないからか、起き上がるのが大変だ。


「昨日ぶりだね。はい水」

「え、あぁ……ありがとう」

「早速教えてほしい文字があるんだ」

「これなんだけど……」

「あ、うん。あ〜……」


 蜘蛛の腹部分に乗せていた事含めた一連の事態を華麗にスルーした。


 そのまま押し切ったぞ。突っ込む間もなく漢字の読み方を教えさせられてる……!!


 女子女子した意味の字がやけに多かった気がする。


 不法投棄雑誌でも拾ったのだろうか?しかし、もう昼前か。


「あっという間に時間が過ぎていくなぁ」

「あなたもそう思う?」

「あっ、うん」

「大丈夫だよ。また会えるから」


 これは最近気付いた事だけど、彼女は会話の最中体がよく動く。


 本当の意味での肉体言語というやつだ。


 それはすなわち、とんでもない美少女がかわいい動きをしているという事だ。


 以前の俺なら気付いた時点で尊死(とうとし)していただろう。


 はぁ……もっと彼女と話したい。帰り道を把握しておけば、また会いに来れる。


 でも、出来れば四六時中はなしたい。直接でなくてもいい。


 とにかく、あの母親が待つ家に帰りたくない。


「またね」

「また明日」


 はぁ……帰りたくない。


 なんで母親のご機嫌取りをわざわざリラックス空間たる家でしなきゃいけないんだ。


 はぁ……それが子供って事なのかねぇ。


 それなら早く働きてぇよ……一刻も早く落ち着ける空間が欲しい。


もうしばらく馴れ初めが続くんじゃ。

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