休日バッタリ出会した奇跡
お待たせしました。
「ぇ、あぇ?」
公園の森の奥に差し掛かったところで例の彼女に話し掛けられた。
近くにいるとは言ってたけど、まさか昨日の今日で会うとは。
「口調……崩れてます……ね」
「知らない仲ではないでしょ」
「あ、もしかして交尾したくなって探してくれてたの?」
「ごめんね。今は環境整ってなくて」
「はぁ……はぁ……いや、そうじゃないですけど」
彼女からしたら酒の席で一緒になった相手でしかないと思うのだが。
陽キャってこういうものなの、なわけないだろ!
「なんで口調崩さないの?私だけこんな口調で話すのも居心地悪いじゃない」
「え、あぁ……はい」
「ゆっくり慣れていこうね」
距離感が近い。もしかして昨日みたいな距離感がデフォルトの御方?
流石にないか。昨日のあれそんなに仲良くなるイベントだったかぁ?
「それで、結局なにしてるの?」
「強いて言うなら、運動?」
「心配になるほど脂肪も乗ってない……」
「多少増えても交尾に支障はないしさ、やめちゃお?」
「そんな交尾交尾言われると気まずいというか……」
彼女は不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
そんな不思議な事言ったような覚えはないんだけど……。
「どうして?」
「そういうのはこう……」
「一般的には特別な関係を持つ相手にしか言わないというか……」
「ふ〜ん……。例えば?」
「恋人とか」
腕を組み、ゆらゆら悩み始めた。もしかしてそんな概念ない?
好きの概念もありそうなのに?そんな事ある?
「それは追々教えてもらうね」
「今日は文字を教えて欲しいんだ!」
「文字を?」
「こんな文字だらけの世界で調べものをするなら必要でしょ?」
「それはいいんですけど……どこに行けば次会えるんですか?」
言い方間違えたか?いやも最後にまたねって言ってたし、間違えてないはずだ。
気持ち悪いとかそういうことは無いはず。
「ここに来ればいつでも会えるよ。もしかして巣の場所の話?」
「ごめんね、分からなかったら交尾しにこれないもんね」
「いや、交尾はしませんけど」
「またそんなこといって……かわいいね」
彼女が俺の肩に指を這わせ、耳元で囁く。
全身に今まで経験したことの無い快感が走り、余韻が痙攣を引き起こす。
こないだの会話の流れのどこにそんな気に入られる要素があったのか全くわかんない。
それとも彼女からすればこれが普通なのか?
いやでも同種に男くらい……居るのが想像できない。
そもそもここに同種が来るのか分からないしこうなる……わけないって。
いくらなんでも唐突過ぎるって。
やっぱりなにかこう、価値観の違いによる認識の不一致がありそう。
「こっちこっち」
「あぁ、はい」
「まだ出来てないけど、これが私の巣だよ」
「はえー」
ファージの頭部分のような形に繋げられた木の枝が、網のようなものに吊られている。
粘つかない縦糸?を上って部屋に入り、そこで寝るのだろう。シュールな絵面だ……。
「見た目より中は広いんだよ?普段は下で過ごすから……」
「なるほどねぇ」
「場所は覚えてくれたかな?」
「早速恋人がどういう文字なのか教えて欲しいな」
「あ、えーっと──」
彼女の反応が楽しくて平仮名と片仮名全て教えてしまった。
平仮名で自己紹介し始めたの時には飲み込みが速すぎて少し怖かった。
これで調べ物もそこそこ出来るようになることだろう。
簡単な物なら振り仮名でなんとかなるだろう、きっと、多分、おそらく。
「もうお日様が傾いてるね。そろそろ帰ったほうがいいんじゃないかな?」
「もうそんな時間?はぁ……」
家に帰ってメンヘラの質問攻めの回答しなきゃいけないのか。
何故好きでもなんでもないメンヘラの相手をしなくちゃいかんのか。
病みムーブなんて、恋人……超ドタイプの相手であってもギリギリ許されないのに。
「私とは明日も会えるから、ね?」
「そうだね。……じゃ、また明日」
「はい、また明日〜」
彼女が後ろでニコニコしながら手を振っている。
かわいい……このまま時間が止まってくれればいいのに。
はぁ……まぁ、日頃の感謝も込めて母親の相手でもしてやりますかね。
俺が悪いんじゃないのに謝るのめんどくさい。
「……ここにずっと居れればいいのになぁ」
──彼女──
私の母は男に夢中で、姉はいつも男探しで忙しく、ずっと独りだった。
会話らしい会話といえば、里の年長者から男の誘惑や、守り方を教わるくらいだった。
だから、彼との会話はとても楽しかった。
私にきちんとした反応を返してくれる。それだけでとても楽しかった。
こちらの世界でも彼以外の人間は私の言葉を理解出来ない。
私と会話をしてくれたのは彼だけだ。
私の言葉に返答が来る……それがあんなに楽しいものだなんて知らなかった。
知らなかったあの頃にはもう戻れない。
「……ここにずっと居れればいいのになぁ」
その言葉を聞いた時は体が震えた。悦びで体が震えたのは初めての事だった。
私が見てきた男は父も含めて痩せこけていて、虚ろな顔で、姉や母に怯えていた。
昔、練習の為に攫われた男と交尾したが、何も感じなかった。
無理やり勃たせて射精させる……あんなのただの作業だ。
それに、彼のあのかわいらしい態度もとてもいい。
無理やり襲ってぐちゃぐちゃに犯したらどんな顔をしてくれるんだろう?
恐怖に歪んでしまうんだろうか?
それとも快楽でめちゃくちゃになって顔から汁という汁全て垂れ流すのか?
彼は交尾自体は嫌ではなさそうだけれど、今日もしてくれなかった。
なにやらもう一つやらなければいけないことがあるらしい。“こいびと”とやらだ。
今無理やり犯してもきっと凄く気持ちいいだろう。
でも、こんな極上のオスをそんな適当に犯すなんてもったいない……。
「……?」
このかわいらしい小物を纏った女の描かれた平たいものは?
よく見たら文字らしきものがある。
彼と仲良くなる口実に文字を習ったけれどこんなに早く役に立つなんて。
さて、読んみましょうかね〜。
「縺ュ縺?シ√←縺楢。後▲縺ヲ縺溘??」
「いや……公園」
「縺ェ繧薙〒縺薙s縺ェ縺ォ驕?>縺ョ?!」
「運動してたんだって!」
見知った彼の話し声が窓越しに聞こえてくる。
もう片方の音は母親だろうか。私には何を言っているかさっぱり分からない。
ただ、音の大きさや、彼が帰るのを渋っていた事を考えれば怒ってるんだろう。
怒るとこんな声になるんだ……へぇ〜。
「ごめんって」
「……」
「ごめんってば!」
「……」
何度も同じ事を言わされている。かわいそうだ……
言葉は通じるのに会話が通じないなんて。なんてかわいそうなんだろう。
彼も私と同じように会話が通じず辛い思いをしているのに……どうして……どうして?
どうして私はこんなに喜んでいるの?
「……読めない」
……この本の事を考えよう。振り仮名が振られていないせいで読むめない。
明るいうちに読めない物を選んでおかなくちゃ。
「……ふんっ!ぬぅ!」
彼が母親に指圧をしている。どういう流れかは知らないが慈しみは一切感じられない。
義務感でやってるんだ。今までもこういう事があったのかな。
あ、面倒くさくなってやめてる。
……もう少しこっちに寄ってもらわないと見えないな。
そろそろ狩りに出ないと獲物にありつけなくなってしまう。
名残惜しいけれど、一旦戻るか。
「お……」
小型の四足歩行の獣が掛かっている。
大型であれば、中身を啜るけれど、このサイズなら普通に食べれそう。
啜ると獣臭さと酸性の匂いが混ざって美味しくない。これくらいの大きさで良かった。
「んしょ……」
「ギゅうぅぅぅう──」
「んぐ、ひぇふぉのふゅひゃい」
ちょっと獣臭いけど、食べないと雄を誘う上半身と雄を捕らえる足が維持できない。
前は消化管と偽骨と肉しかないこんな上半身、なくても困らなかった。
今は違う。きっと下半身だけでは彼は交尾してくれない。
すぐにでも彼と話がしたい。彼と話してから一人の時間がより寂しくなった。
こんな獣食べる事ひとつとってもそうだ。
どういう食べ方をするのか、とか彼が普段何を食べているのかとか、
そういう話をするだけで、作業すらきっと楽しくなる。
「ん?んん……?んんん〜……?」
彼が薄い板のようなものをひとしきり眺めて……
もしかして……はぁぁ♡おちんぽだぁ♡自分で慰めてるのかな♡
ちゃんと気持ちよくしてあげられるだけの大きさはありそう♡
そうだよねぇ♡私の胸結構見てたもんね♡溜まってるよね♡
────
窓の向こうにいる彼と同じように後処理を済ませる。
どうして私はこんな所に居るんだろう。
にしても、さっきから弄っている薄い板は何だろう?
気になる。あ、部屋に入った。今なら会える!
エロ一丁!




