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アラクネと黒髪ボッチ(改作)  作者: 雷誅 萬刃
10月:終わり、そして
14/15

甘い甘い毒

お待たせしました。


『じゃ~ん!今日は腰の曲がった縁起のいい甲殻類が取れたからそれを焼いてみたんだ』

『お、お〜』


 !?!?

 今の光景は何だっ!?白露は奥で何かガチャガチャやっている。


 じゃあさっきの妙ににリアルな光景は一体なんなんだよ!


 白露がこっちに歩いてきた……!?は、え?さっき見た幻覚と胸の揺れ方が全く同じだ。


「じゃ~ん!今日は腰の曲がった縁起のいい甲殻類が取れたからそれを焼いてみたんだ」

「お、お〜」


 馬鹿なっ!セリフまで同じッ!


 料理の内容も明らかに一致してる。どういう事だ?


 急にこんなのおかしい。俺に異能力とかあるわけないんだから。


 何かトリガーになるような出来事起こ……あの化け物か?


「お〜い。むぅ……ちゅ」

「はっ……!!」

「どうしたの?ボーっとして」

「ちょっと考え事してて」


 白露の顔が眼前に迫っていた。悪戯げな笑顔を浮かべてこちらを見ていた。


 これが、彼女のいる日常……!!ハッピーすぎる!


「彼女を放って考え事〜?」

「ごめんごめん」

「も〜、駄目だよ?」

 

 頬に指を当てられた──宇宙の真理に到達していた気がする。


 なんてかわいい彼女なんだ!白露の顔何回見ても美人すぎる。


 なにその化粧しているようにしか見えない長くて晴れた雪国の景色を思わせる睫毛!


 なにその丘のような整った形の目と金色のダイヤモンドのような虹彩!


 ……こんな鼻整形してもたどり着かないだろ!


 極め付けは瑞々しく程よい厚みの唇……何だこの美少女はよ!


「ご飯食べようね〜。はい、あ〜ん」

「ん……」

「美味しい?」

「……美味しい」

「良かった。また今度取ってくるね」


 これ食べたことあるぞ。


 たぶん白露が妙にニンマリしていた時に食べていたものと同じ素材なんじゃないか?


 じゃあなんであの時は特別なものだって枕詞が付かなかったんだ?


 まさか……いや、そんなわけないよな。いくらなんでもそんな事あるはずない。


 虫と水棲甲殻類が親戚みたいなものだと聞くが、考えては行けない。


「……野性的な味わいだね。慣れない味だからびっくりしたよ」

「そっか……ごめんね?これから慣れていこうね」

「そうだね」

「まだまだあるから安心してね。最近元気なかったでしょ?」

「たくさん食べて精をつけようね」

「う、うん」


 白露があ〜んしてくるものを無心で食べ続ける。


 彼女が俺の体調を思って食べさせてくれてるんだ。幸せじゃないか。


 何が出されてるかなんて関係ない。


 彼女が俺の事を慮ってくれているという事実が何よりも尊い事なんだ!


 いや、考えないなんて無理だ。


 この間のニンマリした顔と特別な日に出すという話、彼女が呟いた魔法という情報。


 これだけのものを出されたら誰だって辿り着いてしまう。出された物の正体に。


 そう、彼女の脚である!


 彼女の脚が今欠けていない理由は一つ。回復魔法か何かでどうにかしたんだろう。


 ニンマリしていた理由は……多分性癖だ!分かったとてどうしようもない。


 世の中には知らない方が幸せな事がある、好奇心でつつくからこうなるんだ。


 なんて人間(おれ)は愚かなんだろうか。


「ごちそうさまでした」

「……あんまり発音とか分からないけど私もやった方がいいよね?」

「いや、人間のエゴとみたいなものだから別に……」

「私がやりたいの……ん゛ん゛っ!ゴチソサマシタッ」


 かわいい。なにこれ!?なんでこんなにかわいいの!?反省してほしい。


 やっぱり恋人がやると何でもかわいく見えるものなのかな。


 にしても、片方が知らない概念は通じないってことは……


 俺達の間で、何かしら翻訳のような事が起きてるって事か。


 麻薬を見つけた麻薬探知犬のような顔をしている白露に比べたらそんなのどうでも


 ──よくないか。会話のネタになるし。


「ふふっ……ここ、空いてるよ」

「……失礼します」

「そんなに改まらないでよ。だって私、君の彼女なんだよ?」

「彼女に彼氏が甘えるのなんて当たり前なんだからさ?」

「じゃあ、行かせてもらうよ」


 鋏角に頭を預ける。やっぱり柔らかくてほのかに温かい。


 この前は分からなかったけどここからだとおっぱいで顔が見えない。


『よしよし』


 きっと聖女っていうのは彼女の事を言うんだろう。


 慈しみが溢れ出るこの笑顔……落ち着く。


 そんな顔を見せられ、撫でられている。落ち着く……


 今この瞬間で時間が止まってくれればいいのに。


「よしよし」

「……?」


 同じ台詞なのは何も違和感ない。甘やかすっていうのはそういうものだ。


 だが、全く同じ角度、同じ表情なのはおかしい。


 いくら甘やかしていると言っても……


 いや甘やかしているからこそ、全く同じ行動をするなんていうのは有り得ない事だ。


 疲れてるのか……?疲れてるんだろうな。極限状態が続いてたからかな。


 ゆっくり休まないと。


「ねぇ」

「?」

「大好き」

「俺もだよ」


 記憶領域にそのまま印刷でもされたように白露の微笑みが頭から離れない。


 帰りたくないなぁ……なんで帰らないといけないんだ。


 もし、白露と出会う形が違えば、もし出会うタイミングが違えば……


 ずっと一緒にいられたんだろうか?そんな無為な思考が浮かんでは消えていく。


「もう一押し、か。硬いなぁ……」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ。もうこんな時間なんだね……送ってくよ」

「ありがと」



次は1週間後です。

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