切り出されるもの
お待たせしました。
「おはよう、目が覚めた?」
「ん、んん……」
「髪型はきちんと整えておいたよ。朝ごはんも出来てるよ」
「……ありがとう」
髪まで整えてもらった上に朝ごはんまで?何から何まで申し訳なさすぎる。
……どうしてこんなに良くしてくれるんだろう。
「昨日の反省を活かしてみたんだ」
「焼かれてる……!!」
「どう、美味しい?」
「美味しい……美味しいっ!!」
「良かった」
今までの肉を過去に置き去りにする程美味しい。
しかしなんの肉だろう。魚介のような旨味としっかりした食感……ま、いっか。
彼女がやけにニンマリしている。
露出狂が露出した時の顔がわかった。今の彼女の顔がそれだ。
「ふぃ〜……ごちそうさま」
「それもイタダキマスみたいなものなの?」
「ま、そんな感じ」
「なるほど」
彼女がさっきからずっとニンマリしているのが凄い気になる。
まさか……何か憑いてるのか?
流石にないか。何も無いのになんでこんなにニンマリしてるんだろう。
まぁいいか。機嫌がいいのはいい事だ。
「ちょっとこっち来て」
「ここでいい?」
「バッチリ……ふむふむ」
「何してるの?」
腕を伸ばされたかと思えば、今度は体をベタベタ触られる。
そんな奇行とは裏腹に本人の表情は真剣そのものだ。
いや、違う。探るようにベタベタ触っている。
腰……胸……腕……この位置、もしかして採寸してるのか?
「よし……もう動いていいよ」
「何してたの?」
「ひ・み・つ」
「ならしょうがないね」
口に人差し指を当てて区切りながらそのセリフを吐く……使い古されてるのにッ!
悔しい……!
美少女がやれば擦られまくった動作ですら色気を纏った美しい動作になってしまう。
悔しい……!
「よちよち〜」
「……今なんの時間?」
いきなり彼女の胸に抱き寄せられて頭を撫でられている。
本当にいい匂いだ。原理がは知ってるけどそんなの持ち出すのは無粋というもの。
「いい子にしてたご褒美。こういうの好きでしょ?」
「好きだけどさ」
「ならそのままでいいでしょ?」
「うん」
胸を押し付けられたり、ぱふぱふされたりしている。
なんかおかしい……繊維の感触がない。まさか生乳なのか?
「ぎゅううううう」
「んにィっ!」
「ここにいる間は外の事なんて全部全部忘れて楽しい事だけしてようね」
「楽しい事たくさん用意してあるんだ」
鋏角と脚2本でガッチリと彼女に抱き締められている。
今、この瞬間だけは学校の事も母親の事も忘れられる。永遠に今が続いて欲しい。
「例えば?」
「どれから見せよっかな〜。あぁ、あれがあった。ちょっと待っててね」
そう言って彼女は何か粉を捏ね、おもむろに炉にぶち込み鼻唄を奏でる。いい曲〜。
「はいこれ、咥えて」
「え、まさか……これどこまで食べ進められるかっていうチキンレース的なあれ?」
「ちきんれーすとかは知らないけど多分合ってるよ」
「あっ……むぐっ」
彼女に出来上がった棒状の焼き菓子のような物を突っ込まれた。
虚無だ……虚無の味がする。彼女がもう片方を咥え始めた。ち、近い。
いやこれくらい近かったことはあるけどこれまでとは次元が違う。
このままキスするという流れに繋がりかねないというかそういう流れだからだ。
「ほ〜ら、きふぃのふぁんふぁよ」
「ぐぬぬ……」
彼女から自分の手番が渡されたが、一噛みする程度しか残ってない。
悪戯っぽい顔でこちらを見ている。く、くそぉ……。
こんな長さでは折れないっ!先手でこんなに食べ進めるゲームじゃないだろこれ!!
「ちゅ」
「え?え……?まだ俺のっ」
「んちゅううう」
まだ噛んでないのに彼女にキスされた。そっと寄り添うように手を添わされている。
昨日の発言はまだ彼女の生態に結び付いた本能的なあれかと思えた。でも、これは違う。
最近はずっとおかしいと思ってた。そう、考えないようにしていた。
今の関係すら失われるかと思うと怖くて仕方なかったから。
だが今は、縋らずにはいられない。あんな仕打ちにはもう耐えられない。
「今、恋人いるの?」
「いない」
次は1週間後です




