夜の街
―生命には、必ず終わりがある。
それを決めたのは古の神だ。運命という名の刃で、生命を絶つ。その一抹を、私は見届ける。今日もいつもと変わらない。そう思っていた。
都会にも光が灯らない場所がある。暗い路地裏で小さな星々を眺めていた。明日の“仕事”はなんだったかな、後で確認しなければ。スマホを取り出そうとしたときだった。
「あれ、ここ、どこ……そんなに遠くには来てないはずなのに」
8歳くらいだろうか。白い肌に細すぎる手足。少し、苦しそうな少女が立っていた。日なんてとっくに沈んでいる、何をしているんだこの子は…
「迷子か?」
「うわっ!?お化けっっ!!!呪われる…まだ死にたくないよぉ…」
「お化け?もしかして私のこと?」
「……おねーさんだ!お化けじゃない」
「あ、えっと、私おねーさんじゃなくておにーさんだからね?」
「えー!きれいなおにーさん!」
自分で言うのもアレだが、かなり見た目に自身はある。中性的な見た目で童顔だし、かわいいから少し女性に見えるのも仕方ない。
「どうしたんだ、こんな時間に…親御さんは?」
「ダメっ!!」
弱々しい少女からは想像できないほど大きな声だった。まさか、家出?
「悪かった。親御さんには言わないから、何があったか教えてくれる?」
「あのね、“なぎ”ね、心臓のビョーキなんだ。それでビョーインってとこに住んでて、こっそり抜け出してきちゃったの…お願い!ナイショにしてて!」
小さな少女に上目遣いでおねだりをされてしまう。これは断れない。頷くと少女は笑った。笑顔が眩しい、どの星よりも輝いている。もっと話していたい。
「良かったらさ、私の家に来ない?こんな所で話すのもあれだし…」
「おにーさんのお家!?行く!行きたいっ!」
かわいいな、ほんと。穢れを知らない純粋な笑み、この世で数少ない、キレイなモノ。
「おいで」
細い腕を優しく掴む。折らないように、壊さないように。正反対な心を持った大人と子供は夜の街に溶けていった。